R指定 v.s. 晋平太
UMB2010 BEST32 東京代表 晋平太 v.s. 大阪代表 R指定 延長
今回はUMB2010からこちらの一戦。激戦となったこの二人のマッチアップ。前回の記事から続く延長戦の模様をお伝えしていきます。
[晋平太]
シーッ 静かに
それだけで客の心鷲掴み
鳥で言うならば俺は荒鷲
今に食らわすぜ古い習わし
from 狭山市 大阪の小僧
大阪代表はオマエじゃないぜ
好感はいいけど効果が無いような
内容の無ぇようなrapは say no
[R指定]
大阪代表が俺じゃないなら
なんで俺ここに立ってるの?
オメー目悪ぃんじゃねぇか?
遠近法 でも使ってろよ hey B-boy
オマエはマジでザコ過ぎ
もっと踏んでくるヤツだと思ったぜ
マジで オマエは骨折り損
ステージの上から飛び降りろ
[晋平太]
こっから飛び降りろ?
つーか 俺は乗りこなすON & ON & ON
オマエよりも オマエよりも
いっぱいいるぜ ほら ERONE
もしくは大阪 韻踏だ
なんなら呼びなよ キングHIDA
オマエは負けて いい気味だ
オマエの方こそ踏んでないし進んでないぞ
[R指定]
前回のHIDAのチャンピオン
HIDAさんの口癖なら「よりももちろん」
ここで負けて来年も 良いお年を
オマエの終わりってことなんだぜ
前回のチャンプ on & on & on
ステージの上から飛び降りろ
持っていくぜ オマエをゴミ処理場
優勝して一躍時の人
[晋平太]
ハイハイ わかったぜ
つーか新年あけましておめでとう
俺は信念曲げないぜ これでどう?
やっぱ勝つのは今年は俺でしょ
つーか オマエがここをゴミ処理場にしてぇ
でも俺なら懲り懲りよ
わかってるか ゴリゴリと 脳みそ掃除を
しとけよ 脳のミソが足りねぇ
[R指定]
ゴリゴリ yo 論より証拠
俺の勝ちでしょ? yo 見たらわかるだろ
少量しか踏んでないライム
オマエじゃ眠れる森の美女は
起きさせられねぇぜ
俺のビジョン は変えてねぇ
まるで俺が見せるドミノ理論
しっかり教えてやるから
もう一回出直しな motherfucker
[晋平太]
Yeah はいよ新成人さん
なんで選ばねぇDJ JINは
オマエはKing of Stageじゃない
俺の方がマジbabyは性に合わないぜ
お子様 ならば言葉が 出るぜ
このバカ この場で留まるか?
まるでヨットハーバー
まるでゴッドファーザー
オマエも踏めてないここは断るわ
[R指定]
オマエがゴッドファーザー?
ないぜ音沙汰
ことさら韻も踏めてねぇなオマエ
さながら King of Stage
オマエは香らなくなったキンモクセイ
ホントにこの沈黙破るなら
早くとっとと死んどくれ
マジでオマエとやるのがしんどい
B-BOY 晋平太 ここでラスト
概要
8小節4本
勝者: なし(再延長へ)
解説
UMB2010 BEST32 東京代表 晋平太 v.s. 大阪代表 R指定 延長
今回はUMB2010からこちらの一戦をお届けします。バチバチの激闘となった前回から続く延長戦になりますね。
当時絶頂期でもはや無敵感のあった晋平太に対して、まだルーキーのR-指定も必死に食い下がり勝負は延長にもつれ込みます。
それでは内容の方を見ていきましょう。
まず先攻は晋平太。ビートの雰囲気に合わせてゆっくりと入っていきますが、それでもライミングはハードに保っています。
特に「大阪代表はオマエじゃない」と言ってから2バース目で大阪代表の歴代mcの名前を列挙していくあたりなど、disの鋭さと文脈を高度に保った上でのライミングになっていて、並みの相手ならこれだけで勝ててしまうくらいの高いスキルを随所に見せていきます。
対する後攻R-指定。こちらも延長にも初戦の延長にも関わらず晋平太と遜色ないクオリティで押韻を交えたバースを構築していきます。
ストックの豊富さに加えて文脈を読み取る力や語気の強め方など、展開に応じてrapの内容を自在にコントロールしているのがわかります。
当時の晋平太は未だ無冠の帝王といった印象でしたが、それでももう既にさらに下の世代にこれほどのスキルを持ったMCが台頭してきたわけで、その場にいた全員がその後のバトルシーンの隆盛の萌芽をこの対決に見ていたのではないかと思います。
当時のR-指定は未だ高校生時代のスタイル延長にあり、自身のボキャブラリーをいかに今の文脈とビートの上にキレイに落としていくか、という点を重視する戦い方をしていたように思います。
また、一方の晋平太もそれにやや近く、キレイなrapよりも「勝負に勝つこと」を重視する態度を取っている一方で、自身のライミングスキルに引っ張られる形で出てくる言葉が規定されていたように感じます。
つまりそのように見ていくと、同じようなスタイルを持つ似た者同士の新旧世代対決という構図が浮かび上がってきます。
その後は晋平太が自身のスタイルにさらに磨きをかけていき、R-指定の方は2011年の敗戦を契機に新しいスタイルを模索し、長く続いた絶対的チャンピオンとして君臨していくことになるのですが、その入り口にこの一戦があったわけですね。
双方ともに、4バースすべてで大したミスもなく徐々に熱を込めていきましたが、決定打という決定打は出せずにバトルが終了します。
結果はまたも判定が割れて勝負は再延長へ当時すでに相当なプロップスのあった晋平太でしたが、大阪の(当時は)まだ無名のMCい思わぬ苦戦を強いられる格好となりました。
一回戦でこれほどの死闘が展開されるとは誰も思わなかったのではないでしょうか。
つづく再延長のバトルも引き続きどうぞご覧ください。
R指定 v.s. 晋平太 再延長
※ ERONE
大阪を中心に活動するMCで、近年ではTV番組「フリースタイルダンジョン」で審査員も務める。ちなみに前回大会(UMB2009)の大阪代表は彼である。
※ 韻踏
大阪で活動するHipHopクルー。ERONEやHIDADDYらが所属。
※ キングHIDA
大阪を中心に活動するMC。UMB本戦へは2005から4年にわたり出場した。
※ ドミノ理論
ある事件が起こると同様の事件が連鎖して続々と発生することを説明した理論。
※ DJ JIN
本バトルのビート候補を提供したDJ。Rhymester所属。
※ King of Stage
HipHopグループ、Rhymesterの別名。
※ ゴッドファーザー
マフィアを描いたアメリカのヒット映画。