[UMB2018 CIY] 裂固 v.s. 智大

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裂固 v.s. 智大

UMB2018 CHOICE IS YOURS 1回戦 裂固 v.s. 智大

今回はUMB2018 THE CHOICE IS YOURSからこちらの一戦。

[裂固]

Yeah 相手は智大 yo 俺 意気揚々

常に魑魅魍魎 だけど位置情報も常に吟味情報

してくだけだぜ変えねぇこんな即興

智大さんかっこいい だけど作り出せないハーモニー

狂う段取り 俺は三段跳びしていくぜ

常にかっこいいrapしていくぜ

Yo どう返すかな?


[智大]

それでかっこいいつもり? ライムファクトリー

工場長プラス空気嬢

換気扇をつけた方がいい お前の脳内

モヤモヤってやつが伝わってこない

地獄を見てな HipHopは

お前が魑魅魍魎 言ってるのは甘く見えるよ

ぬるいHipHopじゃ目ぇ覚めない

てぇかテメー HipHopに冴えてない


[裂固]

冴えてる直感 第六感

Yo みんなは俺に押すぜ太鼓判

Yo わかるだろ? まるでこの五感

常に使い続けながら進んでいくだけだぜ

いい年こいて やっぱ嫉妬心見え過ぎたヒストリー

まるでインファイト

Yo まるであんたはなってる心配性

アミーゴ yo 駆けつけに一杯どう?


[智大]

なんも心配してねー

ヘボいラッパーはboy

楽しくない おととい来い

ペラペラし あったまっても全然月見えて来ない

裏側までいってみよう

それで心と心 心の奥の底

どん底ってやつ見なきゃ HipHopは始まんねぇんだ

概要

8小節2本
勝者: 智大

解説

UMB2018 CHOICE IS YOURS 1回戦 裂固 v.s. 智大

今回はUMB2018 THE CHOICE IS YOURSからこちらの一戦をとりあげます。

裂固と智大というこのマッチアップ。これもありそうでなかった組み合わせと言っていいでしょう。

その広範なライミングの手数で攻め立てる裂固に対して、強い言葉とバイブスで押しに押していく智大、という構図になるのですが、どうなっていくのか。

さて試合です。先攻は裂固で、やはりと言うべきか、最初からライミング畳み掛けていく立ち上がりで、特に「智大さんかっこいい」の辺りから「三段跳び」までは怒涛の攻勢で、これにお客さんもかなり反応してます。

対して後攻の智大。「それでかっこいいつもり?」とこちらも予想通り冒頭からスタイルに切り込んだdisを仕掛けていきます。

換気扇をつけた方がいい お前の脳内
モヤモヤってやつが伝わってこない
– 智大

その流れの中でこのラインなのですが、これは「ライムファクトリー」というメタファーからの展開になるのですが、rapの表層(ライミング)に拘泥するスタイルに対して「もっと内面を発散しろ」というメッセージングはもちろんですが、他にも「凝り固まった、くすんだ空気を入れ替えろ」というより直接的な解釈もできそうですね。

なんにせよこの辺りのやり取りからは、ライミングで仕掛ける裂固に対して、より抽象度の高いリリックで切り返していく智大の戦術が見えてきます。

その後に「ぬるいHipHopじゃ目ぇ覚めない」としている通りなのですが、自らの表現を「rap」と称する裂固とは対照的に、あくまでも自身のスタンスや思想を突き詰めた表現を提示していく智大。この短い8小節で「HipHop」という単語が3回も出てくることからもそのことが伺えますね。

冴えてる直感 第六感
Yo みんなは俺に押すぜ太鼓判
– 裂固

それに対する後攻の裂固もあくまでスタイルウォーズで、「冴えてない」という相手の言葉へ対応しつつ、瞬発力を活かしたライミングで流れをひっくり返していきます。この辺りの守備範囲の広さは期待に違わぬパフォーマンスだと思います。

高い即興性・瞬発力をベースにしつつも、そこからストックを乗せてまとまったラインへと昇華させる技術はさすがのもので、ポイントポイントで印象に残るラインを吐いていたのは智大とは対照的に、裂固は全体通した安定感とピークへの導線・バースの構成力が勝っていた印象です。

全体通して高ラっぽい陳腐さは残るものの、総じて安定したパフォーマンスを見せていて、特に2バース目ラストの「一杯どう?」というオチの付け方など、智大には決してできないインサイドワークと言っていいでしょう。

ヘボいラッパーはboy
楽しくない おととい来い
– 智大

対して後攻の智大。こちらは最後まで語気とバイブス、そして内省的なリリックで押し返していく戦い方をしていきます。

そもそも智大は本来的にMCから好かれるMC、つまり同業者からのプロップスがあるMCではあるのですが、この試合でも重たい、内容面で訴えかけるようなラインで会場を沸かせていて、裂固の綺麗にパッケージングされたライミングへ対抗していきます。

その辺りの地のスタイルで突き進んでいく感じがなんとも智大らしいと感じました。

「どん底ってやつ見なきゃ〜」という着地の部分では会場から大きく声も上がり、それまで手数で押していた裂固のアドバンテージを一気につき崩すようなrapをしていた印象です。

そんなわけで勝者は智大。これはもうキャリアの差というか、バックボーンの差異がそのままパフォーマンスに表現されていたように思います。

つまり高校生rap選手権やFSDといった表舞台で活躍する裂固と、あくまで地元での活動によって圧倒的なプロップスを集める智大というMCとして真逆のスタンスになるのですが、その辺りのMCとしての芯・コアの部分ががそのままメッセージングの強度に表れてた感じでしょうか。

ライミング対メッセージングという分かりやすいスタイルウォーズではありましたが、個人的にも総合的なインパクトとしては智大の方に分があったように感じました。

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