DOTAMA v.s. ふぁんく
UMB2017 FINAL 東京代表 DOTAMA v.s. 大阪代表 ふぁんく
今回はUMB2017 GRAND CHAMPIONSHIPからこちらの一戦を紹介します。決勝戦、今年はこの組み合わせとなりました。
[DOTAMA]
俺がNo.1 HipHop Dream
不可能を可能にした東京人
栃木も背負って今日やってきた
こんなベタベタな始まり方でゴメンねー
Yeah でも君もギャグ 俺もギャグ
でも俺はどっちかっていうと熱さで笑わす方
君はなんかちょっとひねた意見で笑わす方
[ふぁんく]
1,2回戦でなんか相手に
5小節目ぐらいで「ウワー」って言うのどうこう言ってて
その試合で「ウワー」ってやってたで? ヤバない?
自分の言ってること数秒後にひっくり返す
舌の根も乾かんうちにそんなことしたのね
大丈夫なのかな?
それでHipHopドリーム? ダッサ
[DOTAMA]
5小節目でウワーって言うのは3試合目ですー!
ちゃんと人の試合 聞いててください
ゴメンね 重箱の隅突っついて
君が下らねぇ
しかもそれ「典型的なラッパーのやること」っていう僕の意見
「ダセー」とは言ってねぇよ バーカ
人の話聞いてねぇ 単なる揚げ足取りだ
[ふぁんく]
「この人ウソつき ウソつきー!」 OK?
Yo お前はウソつき 俺はfrom 子宮
ハハノシキュウよりもぶっ飛んだ脳みそで弾き出す計算方式
これは常識 振り返るこんな押韻
お前よりもrapできて フローできて
リズム良くて 韻も踏めて 何もかもが上
[DOTAMA]
俺のrapマネした上にハハノシキュウの名前出してるけど
ハハノシキュウ 輪入道くんにクリティカル負けされてるから
全然売れてねぇんだアイツ
Yo そこんとこフォローしてくれてありがとう
Yeah 君はR-指定が全国レベルに持ち上げたrapを
HIDADDYレベルまで元に戻した男 yeah
フローもぶっちゃけねぇよ
お前のこと誰も見てねぇよ
[ふぁんく]
「俺のrapマネして」ってウソつきの一言で言うてんの?
お前のrapやと思ってないから
ただのおしゃべりやろ?
NAIKAさんに続いて2年連続 日本語rapのシーンの
てっぺんに立つ男が
ラッパーを名乗りながらおしゃべりを続けて? 8小節4本?
最後まで下らない もう話ダッサ
ダサい〜ッ!
[DOTAMA]
最後の最後で「ダッサ!」
お尻まで振ってベタベタな落とし方
梅田じゃこれが流行ってるの?
大阪に泥を塗るなよ
俺は東京 栃木 関東 いや全国
全部 巻き込んで即興してる
あ 呂布さんに勝ってくれてありがとう
あんなお葬式みたいなrap聞きたくないもん
[ふぁんく]
1バース目に戻るぜ
「ギャー!」っていうやつ
やらんみたいなこと自分で言ってんで?
ずーっとやってるよ!
ヤバい 「やってるっつんだよ」ってめっちゃ言ってる
スゴい アツい ってかHipHop Dreamって自分のこと言ったけど
何年かかって叶えへんつもりやねんオイ
オイオイオイ・・・
概要
8小節4本
ビート: Zeebra / Street Dreams
勝者: なし(延長へ)
解説
UMB2017 FINAL 東京代表 DOTAMA v.s. 大阪代表 ふぁんく
今回はUMB2017の決勝の模様を取り上げたいと思います。
2017もいよいよ決勝で、今年はこの両者がここまで勝ち上がって来ました。
フタを開けてみれば優勝候補同士が相見えた格好ですが、ここまでムートンや晋平太の1回戦負けや、手裏剣さんの快進撃など、様々な波乱もありました。
ここまでDOTAMAは本選出場回数数知れず、決勝だけでみても2年前のUMB2015以来、早3回目です。「今年こそは」と誰より思っていたことでしょう。
[UMB2015] DOTAMA v.s. CHICO CARLITO
対するふぁんくは初の決勝進出となりますが、前回UMB2014では準決勝でGOTITに敗れBEST4、こちらも下馬評では優勝候補の一角として名を連ねていました。
そんなわけでこの一戦、もう考えうる限り最高のマッチアップになっていて、期待に違わぬレベルの高いバトルになる予感がしてきます。
ただしそれほど高まったこの試合、1点だけケチをつけるとしたらバトルビートで、前年の決勝に引き続いてZeebra / Street Dreamsが選択されています。
[UMB2016] NAIKA MC v.s. ヤングたかじん
単体でみると確かに熱いビートには違いないのですが、これだけ多用されるとさすがにちょっと食傷気味な感は否めません。
最初に使われたUMB2007、BES対HIDAの一戦ではビート選択の場面でも大いに沸いたものですが、そこから早10年。「Street Dreamsかければアガるんでしょ?」「証言かければアガるんでしょ?」と言わんばかりのこの安易なチョイスにはさすがに疑義を呈したいと思います。
[UMB2007] HIDA v.s. BES
また、DJではなくMCが主役であるこの大会で、毎年飽きもせず自らのベストワークをゴリ押ししてくるバトルDJのCEROLYもどうなんでしょう、音源は大好きなだけにその辺りが少々残念に感じました。以上、難癖終わり。
それでは気を取り直して内容の方を見ていきます。まず先攻のDOTAMAから。
はい、引用ですね。ベタでごめんと断りつつも、しっかりビートを使って盛り上げていきます。
また、「君もギャグ 俺もギャグ」というフレーズがありますが、この両者に共通するユーモアやrapスタイルの部分はこの戦いの主要なテーマになってきます。
この一見するとやや自虐的に聞こえる「ギャグ」という単語も、DOTAMAにとっては自身のスタイルを構成する主要な要素であり、またUMB2014の決勝で「ギャグラップで頂点になる」と言っていた通り、「このスタイルで勝つことが悲願」という背景や文脈が会場中に浸透していたのではないかと思います。
[UMB2014] MC DOTAMA v.s. R指定 延長戦
そう考えると生半可なストドリのサンプリングよりも、この後半部分こそが熱い内容であり、またその相手がふぁんくというのもユーモラススタイルの頂上決戦といった趣きで、かなりハマっています。
続いては後攻ふぁんくに端を発するこちらのやり取り。
ここが非常に面白くて、相手の試合をしっかり観察してツッコミを入れたふぁんくに対して、冷静に訂正のアンサーで切り返していくDOTAMA。どちらもツッコミとしては的確で、両者それぞれに見せ場があったやり取りでした。
ちなみにここで言われてる試合とはBEST16のDOTAMA対sivaの延長戦で、その試合もかなり面白いので後日アップしたいと思ってます。
ふぁんくは「ヤバない?」の関西弁特有の言い回しがかなり面白かったのですが、DOTAMAは即答に近い形で2バース目の開口一番アンサーを返す瞬発力を見せていて、ふぁんくに傾きかけた流れをうまく打ち消していた印象です。
それにしても「典型的〜」という後半のくだいりも含めて、自分の発言をかなり正確に覚えているのがスゴいです。仕掛けていったふぁんくにしてもそうですが、試合単位で閉じたライミングやフロー、アンサリングといったやり取りとは別の応酬で、この二人ならではの戦いが見れた感じでした。
ただしDOTAMA2バース目は最後までこの話題へのアンサーで占められていたので、ちょっと冗長に過ぎたかな、と。
ここぞとばかり直球な言い回しで詰め詰めにていった戦法ではあったのですが、もう少しデリバリーや内容を散らしていてもよかった感じはしますね。
続いてふぁんくのこちら。これはもうご存知フリースタイルダンジョン、対R-指定戦でのDOTAMAのサンプリングになっていて、会場もここで大きく声が上がります。
DOTAMAの盟友であるハハノシキュウにも言及したりと、いささか脈略のない展開にはなっていますが、そんなことは意に介さずに思いつくままrapしていくかのようなふぁんく、ややモノマネの入りつつ茶化すような言い回しがウケにウケていた感じです。
それに対するDOTAMAのアンサーがこちらで、これはもう予想のつかない反撃(?)になっています。
個人的に展開としてはかなり面白かったのですが、それにしてもハハノシキュウにとってみたら完全にとばっちりですね(笑)
そんなやり取りの最後にくるのがふぁんくのこの一節。なかなか面白おかしい応酬が続きいていましたが、その最後にこのドギツい一発ですね。
そこからは「NAIKAさんに続いて〜」と、、さらにアクセルを踏みにかかるような最高の流れになっていて、この試合の中でも屈指の沸きどころになってます。やはりふぁんくは面白いし巧いし素晴らしすぎます。
スキルや盛り上げ方など、他出場者とは明白に一線を画していて、もう本当にさすがのパフォーマンスでした。この辺りはぜひ映像で観てもらいたいところですね。
やや前後しますがこちらはDOTAMAのラインから。このラインも最高過ぎます。
結果的にHIDDADYのことも攻撃している形になってる気もしますが(笑)、いい意味でなんともイヤらしい、DOTAMAらしいdisり方ですね。個人的にはこれはDOTAMAの大会中でのベストラインだと思います。
続いてもDOTAMAから。これもまた含みのある一節で、DOTAMAの呂布カルマに対する相性の悪さや苦手意識が伝わってくる内容になってます。
バースの最後に取ってつけたような言い方ではありますが、こういう本音含みの内容をユーモア交えて言明できてしまうこともDOTAMAの強さ・魅力だと言えるかもしれません。
それもUMB決勝の舞台、他MCが決して言わない/言えないであろうことも平然と言いのけてしまうこの豪胆さ、天真爛漫です。
「ただ熱いだけの単調な試合では終わらないだろう」という会場の期待も、DOTAMAをここまで勝ち上がらせてきた一つの要因ではないかと思います。
そして最後ふぁんくのバースから。これは試合序盤の「ガナり立ててテンションでごまかす」話題を蒸し返したラインになってます。
言い回しや内容の面白さもさることながら、ふぁんくの場合はそのアプローチの自然さというか、間の良さが非常に素晴らしく、それが内容の面白みをより一層際立たせている印象です。
ふぁんくのギャグやユーモアはすべて国内トップクラスのrapスキルに裏打ちされていて、それがDOTAMAとの最大の違いになるのですが、今回の試合ではその面も十分に対比されています。
そして最終ライン。「不可能を可能にする」トラックであるストドリを引き合いに出しつつ、DOTAMAを全否定するかのようなえげつない一文になってます。これかなり強烈ですね。
そんな感じでこの決勝の8×4本、判定は割れて結果は引き分けに終わったのですが、DOTAMAもふぁんくも最後まで出し惜しみなく、全力で個性がぶつかり合っていたいいバトルだったと思います。
試合前の空気感としては是が非でも勝ちたいDOTAMAと、それを後押しする会場といった様相でしたが、これに対してふぁんくが圧倒的で有無を言わせないrapスキルを背景に、みるみるうちに捲っていた感じでした。
文句なく楽しい決勝戦で、ふぁんくは相変わらずの安定感。そしてDOTAMAは不完全燃焼感の残った前回2015決勝に比べれば、そのパフォーマンスは段違いでした。
それにしてもこのマッチアップで延長が見れるのは嬉しいです。