[DOTAMA]
Let it go 派手なこんなテンション
炎上 熱闘 知らねぇ
現状打破 俺はするぜそんなラッパー
アンタ 頭がまるで復帰した
みたいなエンターテイナー
続けるぜこんなセッション 1,2
ERONEさん はじめましてよろしくお願いします
いやー 今日の試合 ホントに楽しみです
[ERONE]
Yeah yeah 分かるで
俺のテンションも餓鬼レンジャー
先出た 相手はDOTAMA
コイツを怒鳴った ことはないけど
オマエのスキルは所詮 素人のオナった
シコりまくりか? ビビりまくりか?
言葉で捲りだす
今日もパプリカ みたいに俺は効いてる野菜
関西レペゼン ウェッサイ
オマエの上でダサい
Hey 聞いてるか オマエなんか伐採
[DOTAMA]
ウェッサイ ウェッサイ うっさい
分かってるよそんなの
アンタが関西出身だってこと
俺だって栃木出身
Yeah 地方同士仲良くしましょうぜ
って言いたいのは山々だけど
俺はこうやって自分のフロー
でアンタと敵対していく
まるで黄金時代のドルドレイ要塞攻略
お客さんの心を攻略していく
そんな感じ まるでゼルダの伝説
みたいにアンタの内面のダンジョン探索
[ERONE]
Yeah 俺も感じたい黄金時代
でもキングなら動かずに堂々したい
それがフリースタイルの完成形さ
DOTAMA さっさと観念せぇや
俺のフリースタイルはオマエの3,000倍
はらたいらより本命, you know I’m saying?
飲んでも勝てない シラフでも勝てない
酒でも勝てない DOTAMA
もうへばってない?
[DOTAMA]
勝てないって言いながらここまで登ってる
ここの僕の立場は一体どうなるんですか?
NIKEのシャツ アンタ着てるけどさ
俺は無地のシャツ着てる全部ユニクロ
そんな低所得者ラッパー
でも俺はそんなことは気にせずにやっていく
自分自身にやっぱ 自信持ちたいじゃん?
そんな感じ 確かにアンタのフロー 韻はすべて的確だよ
上手いよ 分かるよ
でも俺はそれを乗り越えてく
アンタのバラバラ死体同様
しかばねで こうやって 夜景を眺める
[ERONE]
分かるよ DOTAMA
だってみんな最初持ってないカネなんか
だから俺は腕磨いたんだ
そうしたらみんなが着いてきた
だから今この渋谷のステージに立ってきた
俺がマイク ライブしにやって来た
RHYMESTERもMAKI THE MAGICも死んだ
でも俺はマイク持ってこうやってイキった
証明するぜ 俺の生き方
おい DOTAMAの見とけよ 死に様
[DOTAMA]
確かに亡くなった MAGIC rest in peace
でもお客さんの心にかけるマジック
そんな俺の味 お客さんタジタジ
まるで田代マーシー みたいに捕まったって
何度も現場に出てくるぜ俺はそんなラッパーだ
Yeah 殺されても殺されても立ち上がる
まるでパイレーツオブカリビアン みたいな感じ
ハッキリ言って俺はゾンビだぜ
どんなにギャグだとか言われようが全然平気
ERONEさん アンタ エモいな
[ERONE]
ゾンビならオマエは死んでる
ウォーキンデッド 超気に入ってんの?
賞金出んよ 欲しいのは5万円
オマエがWW WORLD WANTEDの速いゾンビでも
俺の動きは止まんねぇ
つまり俺の方が速いってことさ
聞いとけ言葉
飲んだの音が 動きは必死
所詮はメガネかけたビッチ
概要
8小節4本
ビート: AKLO / RED PILL
勝者: ERONE
解説
戦極MC BATTLE 第7章 FINAL DOTAMA v.s. ERONE
今回は戦極第7章からこちらの一戦を取り上げたいと思います。
第7章の決勝戦はDOTAMAとERONEで争われることになりました。今やフリースタイルダンジョンで審査員としての活躍が板についたERONEですが、バトルMCとして当時はまだ全然現役です。
ビートはAKLOのRED PILL。当時にしてみればタイムリーかつドラマティックな内容で、この決勝の場にふさわしい、時宜を得たチョイスだと思います。
そしてそんなビートの雰囲気に呼応するように、先攻のDOTAMAは最初からバイブス全開。ガナり倒すようなrapでスタートします。準決勝のSIMON JAP戦そのままのテンションで会場を盛り上げていきます。
この試合、DOTAMAはいやに気が張っている感じがしますが、そんなDOTAMAに対して後攻のERONEも「分かるで」と同様に意気込んでいる様子で、こうした両者のピリピリした空気がビートにうまくマッチして試合が動いていく感じです。
例えば2バース目。「ウェッサイ ウェッサイ うっさい!」と切り返していくDOTAMAですが、相手の言葉尻や表層をdisることはあっても、正面からここまで直球な攻撃をするのはちょっと珍しいかもしれません。
その後に「地方同士仲良くしましょうぜ」と取り繕いつつも「アンタと敵対していく」と言ってみたり、抑えきれない臨戦態勢と本来のキャラクターがせめぎ合う中で、ややいびつなバース展開になってるのが分かりますね。
この辺りは文章に起こすとけっこうちぐはぐですが、実際に観ると1ライン1ラインに気持ちが乗っていてかなり熱いです。また、ゲームやアニメ、映画の話題にも事欠かず、全体通してのボキャブラリーはDOTAMAらしさに溢れてますね。
対してERONEはさすがにIFKの看板を背負うだけあってこの決勝にきてもライミングがハードで、DOTAMAとのめちゃくちゃな問答を挟んでもそこはブレません。
また、個人的に唸ったのは2バース目の「俺のフリースタイルはオマエの3,000倍」というラインで、後から「はらたいら」としているように昔のTV番組「クイズダービー」が元ネタのように思われますが、私のようなヘッズには「Parteechecka」の一節「今日のテンション 普段の3,000倍」の方も同時に想起させます。
そして本大会の1週間ほど前、トラックメイカーでありキエるマキュウのMCでもあるMAKI THE MAGICが逝去するという大ニュースがシーンの間を駆け巡りましたが、ERONEも3バース目でそのことについて言及しています。
ちなみにその部分にRHYMESTERの名前が入ってることに引っ掛った方もおられる方かと思いますが、一つ前の「俺がマイク ライブしにやって来た」というラインからRHYMESTERの「20世紀~開け心」のリリックを連想したのではないかと思われ、それ以上の理由は特になさそうです。
そしてそうしたシーン全体のドラマと絡めて両者の言い合いはさらにヒートアップしていくのですが、言ってることがますますエモくなっていって、決勝に似つかわしい雰囲気になっていきます。
具体的に言うとそれぞれ相手へのdisに加えて自分自分のアティテュードを言葉にする機会が増えているということですね。
例えばDOTAMAが卑屈な言葉を並べ立てた上で「自分自身にやっぱ 自信持ちたいじゃん?」と言えば、ERONEの方は「分かるよ」と共感しつつもそこで腕を磨いてフォロワーを獲得してきたという経緯をストレートに言葉に吐き出していきます。
DOTAMAが最後に「エモいな」と言っている通り、こんなERONEはかなり珍しくそうそう見れない姿かと思います。
そのDOTAMAですが、そんなアティテュードの文脈の中で「どんなにギャグだとか言われようが全然平気」と、こちらも自分のスタイルのことを直接的に言葉に出していて、非常に熱くなります。
語彙には辛うじてDOTAMAらしさがありますが、そのテンションは真面目そのもので、おふざけ成分が全く薄いバチバチモードです。たぶんR-指定と戦ってもここまでストレートなDOTAMAは出てこないのではないかと思います。そしてそのことがさらに両者の対話をガッチリと噛み合った一つの要因になっている気がしますね。
ラストは後攻のERONE。これまでの話題や流れを踏まえつつ、ライミングを器用に挟んでアンサーしていきます。
個人的にこのバース最後の着地はかなり素晴らしく、「動きは必死」から「所詮はメガネかけたビッチ」と情景を捉えて巧妙にライミングとdisへ昇華させたラインで見事に締めてバトルを終えています。
そして結果ですが、判定は割れてドロー。勝負は延長戦へと進みます。この二人、スタイルも出自も全く異なる組み合わせで、始まる前はまったくイメージできませんでしたが、予想に反してバッチリ噛み合った素晴らしいバトルを展開していました。
もともとスキルもあり場馴れしまくった成熟したプレイヤー同士なので考えてみれば当然と言えば当然なのですが、それでもスタイルウォーズと対話の中での協調という両輪を絶妙なバランスでキープしながら試合が進んでいったという感じがします。熱さもありユーモアもあり適度な刺し合いもありで、見どころの多い一戦だと思います。
続く延長戦の模様もご期待ください。
※ MAKI THE MAGICも死んだ
HipHopグループ「キエるマキュウ」のMC。本大会(2013/7/21)の直前、7/14に急逝。
初めまして、いつも楽しく読ませていただいております。
解説でもとりあげていらっしゃる、ERONEの「ウェッサイ」ですが、West sideではないでしょうか。
DOTAMAのアンサーの関西出身の下りにもスムーズに繋がりますし。
> asada さん
こめんとありがとうございます!
はい、ご指摘の通り米国HipHopの一翼たるwest sideを意味する言葉となります。やや砕けた表記ではありますが、日本においては「ウェッサイ」と記す用法もある程度市民権を得ているかな、と思いそのようにしていますー!