NAIKA MC v.s. ヤングたかじん
UMB2016 FINAL
東京代表 NAIKA MC v.s. 愛知代表 ヤングたかじん
今回はUMB2016からこちら。優勝を争う決勝戦のバトルをピックアップします。
[NAIKA MC]
HipHopに憧れ続けて
一生叶わねぇと思ってた大舞台
俺は俺のやり方で行くぜ
今日は声は潰れてもいい
腹にダイナマイト巻いてるぞ
なぜなら今年でラストのラスト
見せてやるぜ12月のマスト
待てよ 16の2本だぜ
俺の番はまだ終わってねぇよ
オマエ なんだ? ヤング?
なにヤングたかじん?
呂布カルマしか知らねぇんだけど
ヤンたか興味はねぇ
オールバックじゃなきゃただの狐だろ
化かしてやるぜ
おい狸と狐の平成狸合戦
[ヤングたかじん]
初めまして ヤングたかじんです どうも
いっつも見てるよ 大声でガナるだけのNAIKA MCが上がってきた
俺はもっと新しい何かが見えるんじゃないかって思ってたのに
まぁオマエじゃなくてもニガリか
この辺でバトルの限界が見えてる
サクッと次いくぜ ここ獲った後
KOK 全部統一して
俺が分からしてやるよ
ただのスポ根HipHopのその先ってヤツを
ガキどもはちゃんと練習して
オッサンは熱さを売ってればいい
何回も言った 選ばれた者だけがやれるスポーツだ
[NAIKA MC]
オマエのその最高のスポーツを超えた芸術を堪能してる
素晴らしいと思ってるけど
やっぱり熱さには負けるんだな
オマエがMr.クールコア
ならばひたすらホットネス
バイブスしかねぇ
持ち合わせてねぇけど
いつも排水の陣でやってる
Yo 確かにガス欠ギリギリのラストの最後
オマエのすべてを認めた上で
真ん中刺さしてぶった斬らせろ
夢の続きだぜ
バカにされてたあの男も 元に戻れ
晋平太と一緒に俺もここを飛び立ってやるぜ
[ヤングたかじん]
大丈夫
誰もオマエのことなんてバカにしない
よく頑張って上がってきた
10回目にしてやっとここまで来た
でもこの先はない そこに行かせちゃ
意味がないから俺はヤングたかじん
若い頃のたかじんになりたい
黒人にも犯罪者にも憧れない
HipHop オマエのガキにも見せるぜ
オマエじゃなくて俺の背中
かっけーHipHop その先に行くために
オマエには踏み台になってもらう
愛してるぜNAIKA MC
その上で ここで引導を渡す
最後10回目? これで引退?
生まれたばっかりの二人目の娘をよく抱いてやれよ
概要
16小節2本
ビート: ZEEBRA / Street Dreams
勝者: なし(延長)
解説
UMB2016 FINAL 東京代表 NAIKA MC v.s. 愛知代表 ヤングたかじん
今回はUMB2016の決勝戦です。本年の決勝はNAIKA MC対ヤングたかじんというマッチアップになりました。
NAIKAは2011年以来、2度目の決勝戦となります。これはもう本当に獲りたいところでしょう。対するヤングたかじんはもちろん誰もが知るあのMCで、呂布カルマ時代から何度も本選へは出場しています。
そんな楽しみすぎるマッチアップが実現したこの決勝ですが、なんとビートはStreet Dreams。さすがにベタベタなチョイスで、これは賛否あるかもしれません。個人的には他にもHipHopクラシックと呼べるものが様々ある中で、ここであえてこのトラックである必要もないかな、という感じはしました。
それで試合の内容ですが、やはりビートの持つ色がかなり試合の流れに作用したようで、disとリスペクトが混じり合ったスポ根的展開を迎えます。もちろん熱やドラマがあって決勝にふさわしいストーリーを演出するのですが、ビートによって作られたバトルという感はどうしても否めません。
ちなみにこの決勝は16小節の2本勝負で、それだけに双方思いの丈を吐き出す尺も十分にあり、自然と内省的な色合いの濃いリリックスへとなってくようでした。
例えば立ち上がりのNAIKAはStreet Dreamsの引用から始まり、今年が最後の挑戦であることを強調しつつ、大会にかける想いや試合に臨む覚悟をストレートにrapにしています。この辺りの内容・展開は非常にNAIKAらしいものだと思います。
対するヤングたかじんも大いに自分のカラーを出していて、「大声でガナるだけのNAIKA MC」など冷静にdisを重ねていきます。特に1本目序盤に「まぁ(準決勝勝ったのが)オマエじゃなくてもニガリ(だった)か」「この辺でバトルの限界が見えてる」というラインがあるのですが、自身もその渦中にありながら大会上位MCの陣容を見てシーン全体を余裕でこき下ろす感じに彼らしさが出ています。
また、この大会通してヤングたかじんの主張は一貫していて、このバースでもスポーツ化したMCバトルを超えた価値を見せる、というメッセージを吐き出しています。それも過去の経緯から分離したUMBとKOKという両大会を統一した上で、とさらりと公言するあたりがまたカッコいいですね。
ここまで見ると両者の戦法はかなり両極端で、「何度も挑んでこれが最後だから」とこれまでのドラマをシェアすることで共感を集めるNAIKAに対して、まるで選挙のマニフェストのように「俺が優勝したらシーンは変わる」と未来のビジョンを語り共感を呼ぶヤングたかじん、という構図が生まれています。
その闘い方の違いと両者のメッセージングの対立が本バトルの見どころの一つではないかと思いますが、2バース目に入るとそこへ個のMCとしての双方に対する感情が入ってきて、NAIKAが「オマエのすべてを認めた上で真ん中刺さしてぶった斬らせろ」と言えば、ヤングたかじんの方も「愛してるぜNAIKA MC その上で ここで引導を渡す」とキレイに対応したラインで切り返していきます。
呂布カルマ時代含めても彼がバトル中に相手を受容する発言をするのはなかなか珍しいのではないかと思いますが、この決勝にきてかなり「デレた」部分が見られた感じです(笑)
双方disりながらも認め合うという、それこそスポ根のような色が強い展開になってきます。しかもビートがビートだけに、当日会場にいたヘッズはかなり熱くなったのではないでしょうか。
また、ヤングたかじん2バース目の「若い頃のたかじんになりたい 黒人にも犯罪者にも憧れない」という部分は個人的にとても好きで、一見HipHopに歩み寄っているようでベッタリつくことはしない、そんなヤングたかじんのスタンスがにじみ出る本試合一番のパンチラインではないかと思います。
さて、そんな感じで16小節2本のバトルも終わっていきますが、なんと結果は割れて引き分け、この決勝も勝負は延長戦へと持ち越されます。
ちなみに今大会も会場の歓声プラス陪審員という判定方法になりますが、陪審員は会場判定が出る前にジャッジを下すため、2013大会のように意図的に引き分けを発生させれるわけではないことは書いておこうと思います。要は本当に判定が割れていたわけですね。
また今回、試合としての決勝戦のクオリティは安定して高いです。安心して見て入られます。個人的にDOTAMAは好きなのですが、特に前年の決勝は勝った方も負けた方もともに気の毒という印象が拭えない酷いバトルだっただけに、それと比較するとかなり際立ってしまいます。今大会で一番よかったのは決勝のバトルが終始安心して見れたこと、かもしれません(笑)
続く延長戦はこちらからどうぞ。
[UMB2016] NAIKA MC v.s. ヤングたかじん 延長
※ ただ マイク握りたくて
ZEEBRA / Street Dreamsより。冒頭のリリックの引用
※ 平成狸合戦
「平成狸合戦ぽんぽこ」。スタジオジブリ製作映画。
※ ニガリ
MCニガリ。同大会出場MC。ベスト4にてNAIKA MCの前に敗退。/p>
※ KOK
KING OF KINGS2016。2015年にUMBより分離独立したバトルイベント。呂布カルマとしてその決勝大会への出場が予定されていた。
※ Mr.クールコア
「The Cool Core」。呂布カルマの制作音源。
※ 晋平太
同大会の司会・審判を務めたMC。2010,2011大会優勝者でもある。
※ たかじん
やしきたかじん。大阪ローカルで活動する歌手、タレント