ウジミツ vs SAM
UMB2016 一回戦
広島代表 ウジミツ v.s. 栃木代表 SAM
今回は発売直後のUBM2016からこちらのバトルを紹介します。無名MC同士ですがめちゃくちゃ面白いバトルです。
[ウジミツ]
Yo 広島のMCはイモかもしれんが
旅の風下に立ったことはねぇ
真剣勝負で今日はSAMを泣かすから覚えとけ
yo 言わずと知れたパンチラインマシーンできると思うな ここで安楽死
ジワジワいたぶって沈めるから覚えとけ
[SAM]
「言わずと知れた?」 ゴメン 知らない
この丸メガネ すでにクソ食らえ
自分の気持ちにゃウソつかねぇ
今から誘う go to the hell
つまりこのまま奈落に進路
手のひら踊る 操り人形
マリオネット SAMにbet
俺に任しな ULTIMATE
[ウジミツ]
Yo 最後の方 お客さんに向けて
言葉出してんじゃねぇ
同情でもらえるような歓声じゃねぇ
あやつり人形のヒモで首を吊りな
オマエが死ぬ番だ
なんか レッドコーナー
青コーナーからウジミツ
今日はカネを貸すんじゃねぇ
オマエから一度借りたアンサー
5割増しで返してやるから覚えとけ
[SAM]
アンサー Q&A
俺は不死身の 復活のF yo
履いてるTimberland
首 狩ります シザーハンズ yeah
いつもの調子 言葉飛ばしてく
こいつは紙ヒコーキ
俺は意地でも掴み取る天辺
背は向けないぜ 武蔵坊弁慶
概要
8小節2本
勝者: なし(延長)
解説
UMB2016 一回戦
広島代表 ウジミツ v.s. 栃木代表 SAM
いよいよ発売されたUMB2016のDVDからこちらの一戦を紹介します。
低くドスの効いた声色でシブいラインを吐いていくウジミツに対して、相手の揚げ足を取りつつ器用なライミングと的確なボキャブラリーで言葉を遊んでいくタイプのSAMという両者ですが、このスタイルの対比がバトルのみどころで、面白いです。
例えば1本目。先攻ウジミツが「言わずと知れたパンチラインマシーンできると思うな」と吐き棄てればば、それに対して「”言わずと知れた?” ゴメン 知らない」と後攻のSAMは茶化すようにかわしていきます。
また、SAMのライミングは本当に気持ちがよく、特に「今から誘う go to the hell」の辺りや「手のひら踊る 操り人形」の辺りなど、単純に語尾を合わせただけではなく、前後の文脈の推移や、ビートアプローチのスムーズさも作用してrapとしてかなりクオリティの高いものになっています。
実際この辺りはお客さんも大いに盛り上がっていて、バトルの見せ場を作っていました。SAMのバースは一部公式のトレイラーにも載っているので是非チェックしてみてください。
2バース目に入ってもウジミツは淡々としていて、「同情でもらえるような歓声じゃねぇ」など、力強い言葉をスピットしていきます。
先ほどのSAMのラインに対しては「あやつり人形のヒモで首を吊りな」と切り返したり、こちらもアンサリングでは負けていません。お客さんもちゃんと文脈的に巧い切り返しにはちゃんと反応しているのがいいですね。
そんなウジミツに対して、SAMの方は後半も言葉遊びとライミングをうまく絡めながらビート上を泳いでいきます。特にラストの「武蔵坊弁慶」のくだりなどは本当にキレイです。
そんな感じで、双方ともに見せ場のあった実力伯仲という感じのバトルでしたが、この一戦最大の見どころはやはりこのSAMのスキルとユーモアの間の絶妙なバランスではないかと思います。
試合の空気を良いように引っ掻き回す様は痛快ですらあり、個人的にこのMCが一発で好きになりました。
それで結果の方ですが、判定は割れて勝負は延長へ進みます。双方パフォーマンスが良く、これはナイスジャッジだったと思います。素晴らしいスタイルウォーズで、ビートを変えて改めて堪能できることを喜びたいと思います。
ウジミツの1バース目「敵の風下に立ったことはねぇ」は「旅の風下に立ったことはねぇ」だと思います。「旅」とは広島の極道用語で「よそ者」という意味です。
仁義なき戦いで「広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんもないんで」というセリフがあります。ウジミツが広島代表かつあのスタイルということを考えると、ここのセリフを一発目に引用したのではないかと思います。
ウジミツ2バース目の「オマエから一度借りた『はずだ』 5割増しで返してやるから覚えとけ」は
「オマエから一度借りた『アンサー』 5割増しで返してやるから覚えとけ」だと思います。
そのあと、SAMがすぐ「『アンサー』Q&A 俺は不死身の復活のA」と返し韻を踏んでるのもSAM自身そう聞こえたからだと思います。ウジミツは脅しとポップさを併せ持ったMCです。自分から闇金ウシジマくん的要素とMCバトルの要素を掛け合わせに行ったのかなと思い個人的にはテンションの上がるパンチラインでした。
SAM1バース目 「つまりこのまま奈落に『落ちろ』 手のひら踊る 操り人形」は「つまりこのまま奈落に『進路』 手のひら踊る 操り人形」だと思います。
SAMは個人的に好みなラッパーですが、おそらくここの4小節はネタまたは引き出しといわれる部分だと思います。SAMの過去の試合を振り返ってみるとネタと思われる部分は全文字の韻を踏んでいるのが特徴的です。「人形 I_N_O(U)」を踏むならば「落ちろ O_I_O」よりも「進路 I_N_O」のほうが韻にこだわりを持つSAMらしいラップのような気がします。そしてその前の「今から誘う go to the hell」という『誘う』という部分から「進路」や「操り人形」という言葉に主導権はこちらが握っているぞ、という意味合いが取れるように思えます。
以上が自分の思った訂正場所です。偉そうにすいません。
どちらかといえば、SAMはNAIKA MCやMAKAとつながりがあり、フリースタイルダンジョンなどにも出たことからこの大会でもマークされていたMCの一人だと思います。おそらく下馬評は入場してきた声の大きさからしてSAMのほうだったのは間違いないです。それでも互角以上に張り合ったウジミツの存在感とうまい言い回しは今大会ひいては今後のMCバトルを面白くしてくれるものだと思います。今回のUMBは若手と常連組の差が大きく一時の熱量のピークはなくなったのかと思われますが、それはHIP HOPシーンに新時代が到来し、MCバトルも新たなステージへステップアップする序章のようなものだと思います。そしてSAMやウジミツのような魅力あふれる若手のMC同士の対決はそれを象徴するように思え個人的には今大会ベストバウトの一つです。
若手のMCが地元をレぺゼンして大舞台で活躍できる可能性を秘めているUMBは素晴らしいと改めて思わせてくれる試合でした。
> MCバトルってやっぱ好きやねんさん
コメントありがとうございます!
また、丁寧に説明頂いて感謝です。至極納得のご意見、ご指摘頂いた部分はいずれも修正させてもらいました!
「復活のA」ではなく「復活のF」だと思います。ドラゴンボールの映画のタイトルです
> 53万さん
ご意見ありがとうございます!
反映させてもらいましたー!
延長のリリックも見たいです!
アマプラで仁義なき戦いシリーズ観てたら急に聴き覚えのあるフレーズが出てきてビビッた
ウジミツ若いのに古い映画観てるんだなー
> ヒロポンさん
コメントありがとうございます!
映画の方は知らなかったのですが私も同じことを思いました!(笑)