mol53 v.s. KEN THE 390
戦極MC BATTLE 第15章 BEST16 mol53 v.s. KEN THE 390
今回は先日発売されたばかりの戦極15章から。リクエスト頂いたmol53対KEN THE 390の一戦です。
[mol53]
しゃあねぇジョブだ
こういうビートでもいいけど
それやっぱりギャグだ
KEN THE 390に寄せましたか
ありがとうございます ごちそうさま
仕方がねぇ このやり方
屍になって最後だな
俺はmol53 線香代わり
に最後一本 ジョイント代わり
[KEN THE 390]
いきなり俺向きのビートとか
言い訳からスタート
負けた時の保険すでにかけてる
ようなヤツじゃ俺には絶対勝てないぜ
何かが欠けてる
それじゃ無理だぜフリースタイル
俺が何かやってる時
ペチャクチャうるせぇな
何かテレパシーでも出せるんですか?
[mol53]
何か気になりました?
そういうことが KEN THE 390さん
小さいですね
仕方がねぇ コイツじゃ
日本語rapは引っ張れねぇ
だって見たっしょPV
俺の方がマジ バリカタいなせ
ドス黒ぇ アウトサイド
こういうヤツを抹殺します
[KEN THE 390]
ハッキリ言って 全部返すぜ
小さいですね
あなただったらHipHopシーン
引っ張れるって自信があるんですか?
俺はオマエの何倍も
火の粉浴び 真正面にいる
いいよね 陰からグチグチ言ってれば
オマエは実行 それあるのみだ
[mol53]
あーそうだ 実行するよ
仕方がねぇ
地方B-BOYレペゼンしてるぜ
オマエは東京だろ?
でもこの街オマエは背負えません
日本語rapシーン?
引っ張る気なんてさらさら無いし
俺はマイクでカネ稼ぎ
現場にget job, make money
[KEN THE 390]
じゃあ稼いでください
でも足りない説得力
そこが無いんじゃ全部結局ボツ
自分のケツまず自分で拭ける
ようになってからがオトナ
オマエはまだ子ども 俺はオトナ
あんま人に迷惑とかかけてんじゃねぇぞ
オメーが何しようが知らねぇけどよ
概要
8小節3本
ビート: DJ松永 / すれ違い狂想曲 feat. コッペパン
勝者: mol53
解説
戦極MC BATTLE 第15章 BEST16 mol53 v.s. KEN THE 390
戦極15章からリクエスト頂いたこちらの一戦です。BEST16、トーナメント上の三回戦に当たるバトルとなります。
まず先攻はmol53から。
「こういうビートでもいいけどギャグだ」「KEN THE 390に寄せましたか」と立ち上がりはビートチョイスの不利に対して言及していきます。
本試合のビートはBPMが高めで少しコミカルな雰囲気のあるものとなっていて、KEN THE 390ならいざ知らず、確かにmol53は音源でこういうビートは使わないだろうな、という感じはしますね。もちろん実際のところはわからないのですが、少なくともそう思わせる説得力はあのではないでしょうか。
ただしそんな話題も本気で不平不満を申し立てるというよりは、材料の無い先攻1バース目の話題づくりという側面の方が強く、後に続く「ありがとうございます ごちそうさま」というラインまで含めてシニカルな雰囲気を前面に出しつつ会場を沸かせていました。
それと毎度のことながらビートアプローチが国内トップクラスの精度とバリエーションで、この点はもう本当にmol53が頭一つ抜けています。この辺りは是非映像でご覧になってもらいたいと思います。何があっても彼が一定の支持を集めている理由がよくわかる気がします。
対する後攻はKEN THE 390です。くだんのビートの指摘を「負けた時の保険すでにかけてる」「言い訳」だと一蹴するアンサーから始まり、まったく遠慮なく攻め立てています。
次に「俺が何かやってる時ペチャクチャうるせぇな」という箇所について。近年のmol53は明らさまな妨害まではいかなくとも、対戦相手のrap中にしゃべる素振りを見せたり小さいパフォーマンスで横槍を入れていく傾向が見受けられるのですが、そのことに対して試合中にrapの中で指摘するKENの態度が素晴らしいです。「テレパシー」のラインまで含めて、茶化すようにユーモア交えて攻撃するやり方がいかにもという感じで、非常に好感を持ちました。
そしてそんなKEN THE 390のメッセージが凝縮されているのが2バース目で、「シーンを引っ張れる自信があるのか?」と逆に返していき、続けて「オマエの何倍も火の粉浴び真正面にいる」という、これまでのアクティビティに対する自負を込めたラインを見舞っていきます。
やはりKEN THE 390としてはこの辺りの話題に思うところがあったようで、そうした感情は続く「いいよね 陰からグチグチ言ってれば」というラインにもストレートに表現されているように感じます。
そしてバトル終盤。メッセージ性でやや優勢に立っていたKENに対して、「(シーンを)引っ張る気なんてさらさら無いし」と茶化しながら身をかわして応戦するmol53。
また、同バース内の「現場でmake money」というラインもごくごく一般的なHipHopメンタリティではあるのですが、ラストの部分をピークに非常にキャラの出たビートキープをしていて、スムーズかつ盛り上がりのあるrapになっています。この辺りがmol53が強さの一端なのだと思いますが、とくかくスムーズです。
対するKEN THE 390の3本目。こちらはあくまで内容で返していて、「自分のケツまず自分で拭けるのがオトナ」「あんま人に迷惑とかかけてんじゃねぇぞ」と、ガチの説教みたいなラインが並びます。
これはUMB2015の欠場や戦極CAICA入りの後に発生した音源発送トラブルなどを示唆しての内容になるかと思いますが、それらを直接糾弾するのではなく、あくまで抽象的な物言いで噛んで含めるような感じにする辺りがちょっと笑えます。
最後の2小節なんてもう完全に職場の先輩や上司みたいな雰囲気です(笑)内容に限って言えばここが本試合最大のハイライトではないでしょうか。
そんな具合にバトルが推移して、フローとバリエーションのmol53対メッセージ・内容のKEN THE 390という構図が終始続いていた印象ですが、判定はmol53の勝利。
個人的には妥当な結果になったと思ってますが、この辺りはオーディエンスのrapに関する好みもやや影響が大きかったかもしれません。どちらもそれぞれに沸きどころや盛り上がりを作ったいいバトルではないかと思います。
そして本当にお伝えしたいのはmol53のビートアプローチの素晴らしさで、これもはや職人芸の域に達してます。是非映像でチェックしてみてください。
リクエストに答えていただきありがとうございます!!
本当にmol53 のビートアプローチは今のMCのなかでも群を抜いてる感じがしてすごいっすね
後、今年のUMBのムートン vs BASEの延長とkowree vs 黄猿の延長をお願いできるでしょうか?
ムートンのワンバース目とかBASEの三バース目とか黄猿の二バース目とか結構凄いこと言ってた気がするんでお願いします
> のーねーむさん
読んで頂けて素直に嬉しいです!
またリクエストの方もありがとうございます!
今ちょうどDVDを見ているのですがいずれ取り上げようと思っていました。
ムートンはいいですね!今回かなり好きなったMCの1人です。
いつも楽しく読まさせてもらっています。
筆者の一つ一つの高度なバトルの感想について本当に感心させられます。それでなんですがNAIKAMC vs呂布カルマの決勝も解説してもらいたいんですが、もし余裕があればお願いします。
> 卍丸さん
コメントありがとうございます!
決勝戦、つい先ほど公開しました!
mol53の1バース目は「線香花火」ではなく「線香代わり」で、3バース目は「get biz」ではなく「get job」だと思います。
このバトル、バチバチで面白かったですね。良ければ、umb2016の句潤vsじょう宜しくお願いします。
> zone さん
コメントありがとうございます!
ご意見頂いた部分は変更させてもらいました。
また、リクエストも承知しました。こちらもありがとうございますー
ビートはDJ松永のサーカスメロディーに入ってる、「すれ違い狂想曲featコッペパン」ですよ!
> サービスさん
ビートに関してありがとうございます!
追記させてもらいました!
kenの3バース目の最初の方、「全部結局ボク」ではなく「全部結局ボツ」だったと思います。
> マツさん
コメントありがとうございます!
該当の箇所を修正しました!