呂布カルマ v.s. JAG-ME
KING OF KINGS2015 2回戦 呂布カルマ v.s. JAG-ME
今回はKOK2015からこちらの一戦を紹介したいと思います。
[呂布カルマ]
さっきのナシ 仕切り直し
会場 愛嬌だよ愛嬌
俺も気にしねぇからオマエらも気にすんな
そんな相手がJAG-MEじゃ辛くねぇ?
ポッケの中のもん 全部集めたとことで
コイツは飛べねぇ そんな軽くねぇ
今から見せる今年のチャンピオンのスタイル
年末の大会を待つまでもねぇ
[JAG-ME]
軽くねぇかもしんねぇけど
この説教くせぇ 演説みてぇ
なんかこんなもんじゃ乗れねぇし
ビートと言葉がセットじゃねぇ
説得力のねぇ 説法は
いつまで聞いてもくだらねぇ
つまらねぇ 次がねぇ戦いならば
俺はもうここで寝るぜ
[呂布カルマ]
次はねぇとかはねぇ
いつだって俺は 俺はただ輝かしてる
XLIIのビート尻にくるやつ
オマエらHipHopだ もっと揺れてくれ
オマエ大した曲なんか作れねぇ
俺ならオマエも オマエのクルーも
オマエの女も 首揺らせる 俺によこせ
[JAG-ME]
ハイ なんでもいいが
勝手なことをほざきな
こうやって重たい言葉並べれば客がわくか?
ワクワクしない これはHipHopじゃない
オマエが簡単に語るな 黒さがない
黒いのはサングラスだけ
それ割って失明してぇ
[呂布カルマ]
黒さはない そりゃ俺黄色い
今さら肌の色は そう関係ねぇ
黒さ語ったって仕方ねぇ
だって俺はblackじゃねぇ
けどniggaよりも苦いstyle
まるでブラックのコーヒーみたく
寝ぼけた眼 一発で覚ます
[JAG-ME]
コイツはイエロー 俺もイエロー
だけど中身が黒
だから黄色と黒 危険信号
危ねぇぞ 呂布 caution
caution caution
どうしようもねぇ このステージ上 降りたくねぇ
下ろすのはこっち 呂布カルマ
3枚くらいに下ろしてポイ
[呂布カルマ]
コイツ偽もん と思ってたけど
けっこういいrapすんじゃねぇか
俺は認めるとこは認めるけど
俺の方が次を見てる
俺は今年を代表し このシーンを代表し
全部 もってくんだ目にこのマイク
オマエじゃ辛ぇ 土臭ぇ
ガキは憧れねぇさ 先はねぇ
[JAG-ME]
臭ぇヤツに噛み付く
コイツの言うHipHop 嘘くせぇ
コイツは俺を認めた だけど
俺はコイツを認めねぇ
後で話そう ゆっくりな
だけど今はそう 腹からだ
腹から出すこのエネルギーで
東京の会場 飲み込もうか
概要
8小節4本
ビート: オリジナル
勝者: JAG-ME
解説
KING OF KINGS2015 2回戦 呂布カルマ v.s. JAG-ME
いわゆる鎖UMB、KING OF KINGSからの一戦で、取り上げる最初の試合がこの組み合わせです。めちゃくちゃ楽しみなマッチアップですね。
今をときめく名古屋の呂布カルマと東北随一の名MCであるJAG-MEとの対戦。この両者が怪しげな雰囲気のビート上でぶつかり合っていて非常に面白いバトルになっています。
まず先攻は呂布カルマ。冒頭から「さっきのナシ」と再延長までもつれ込んだLick-Gとの死闘によるイメージを払拭しにかかります。
呂布カルマ本人にとっても彼の勝利は圧倒的であってこそ、という感じでしょうか。その後の「年末の大会を待つまでもねぇ」というラインまで含めて、大上段に構えた余裕の試合展開というお得意の構図を構築しにかかっている感じですね。
続いては後攻のJAG-ME。こちらは「この説教くせぇ」「演説みてぇ」「説得力がねぇ」とストレートなdisを連続でぶつけにいきます。
また中盤の「ビートと言葉がセットじゃねぇ」というラインが非常にハマっていて、オーディエンスもかなりの盛り上がりでした。
試合後の解説でKEN THE 390も言及していましたが、このバトルは全体的にみてフローのJAG-MEに対するパンチラインの呂布カルマ、という構図では決してありませんでした。
むしろその逆をいく流れで、要所要所で重たい一撃を吐き出すJAG-MEに対してフワフワとビート上を泳いでいく呂布カルマ、という誰も予想しなかった展開となっていた印象があります。
続く呂布カルマ。「オマエらHipHopだ もっと揺れてくれ」など、まるでこの大会のルールを楽しむかのようにビートを話題の中心に据えたrapを展開します。
その流れで「どうせこのビート獲ったところで」「オマエ大した曲なんか作れねぇ」と相手への攻撃も抜かりなく、最後の「(だから)俺によこせというラインまで含めて意味に一貫性を持ちたせつつ、幅をもった内容を1バースの中に織り込んでいくという試合巧者ぶりを発揮しています。
そして後攻のJAG-ME、2バース目。「こうやって重たい言葉並べれば客がわくか?」というのは対呂布カルマ用のラインですね。
続く「黒いのはサングラスだけ」など、JAG-MEおなじみのゆらゆらしたフローではなく、小節ごとに1行1行詰めていくrapで着実に言いたいことを吐き出していくスタイルになっています。
続いて呂布カルマ3バース目。黒さがない、というJAG-MEに対して「そりゃ俺黄色い」という切り返しで応戦。
また、その流れから出てきた「さっきの白い肌で沸くヤツ相手に」「黒さ語ったって仕方ねぇ」というラインですが、これは純粋にオーディエンスに向けられたものと受け取れますね。
要するに先の戦いで再延長にもつれ込むほど「Lick-Gを評価していた連中」という程の意味に取れるわけです。会場にいなかったから言えますがここは個人的にけっこうポイント高いです(笑)
また、肌の色のくだりから転じて、後半には「まるでブラックのコーヒーみたく」「寝ぼけた眼 一発で覚ます」と比喩表現に仮託して話題を転じる部分があり、さすがの構成力を見せています。わかりやすい一撃必殺感こそありませんが、さすがに巧いです呂布カルマ。
そして後攻、3バース目のJAG-ME。まずは呂布カルマの「俺は黄色い」というラインを受ける形で「俺もイエロー だけど中身が黒」で応じます。
続けて「だから黄色と黒 危険信号」から「危ねぇぞ 呂布 caution」とイメージを次々と推移させていくのですが、話題の転じ方が鮮やか過ぎます。
これを受けてさしもの呂布カルマも「けっこういいrapすんじゃねぇか」と即座に認めるほどでちょっと珍しい光景が展開されました。
その呂布カルマですが、こちらも決して負けてはおらず、最後の4バース目では中盤「俺は今年を代表し このシーンを代表し」と彼にしてはかなりリズミカルなフローでrapします。
もちろん凝ったようなライミングではなく、また、重たい言葉というわけでもないのですが、とてもスムーズな一節で普段とはまた違った格好良さになっています。
個人的にはこのバトルの中で呂布カルマ一番のラインではないかと思うくらいです。
続いてラストのJAG-ME。「臭ぇヤツに噛み付く」とこちらも相手の内容を受け止めているのですが、意識的にアンサーを返してる時のJAG-MEは非常に強いですね。
その後の内容で言っても、「コイツは俺を認めた」「だけど俺はコイツを認めねぇ」と、前のバースのやり取りをあっさりと突っぱねるように切り捨てていたり、いつものフローに加えてdisの鋭さも光っています。
会場の盛り上がりも含めて、どちらが試合の流れを支配しているのかがまったく読めない、大接戦の中でバトルが終了しました。
そして結果の方ですが、審査員5名の採点からJAG-MEの勝利となりました。ただしポイントの内訳としては本当に僅差で、内容から言ってもほんの少し違うだけで延長になっていてもおかしくはなかった勝負だったと思います。
KOKのバトルは今回取り上げるのが初めてですが、この両者の他にも、崇勲やTAKASE、NAGIONなど、なかなか渋いMCが集まっていて、非常に面白い大会となっています。まだ観ていない方は是非チェックを!
※ さっきのナシ
同大会1回戦、Lick-Gとの再延長までもつれた対戦のことを指す。
※ 年末の大会
LIBRA RECORDSの主催するUMB決勝大会のこと。ちなみに当時、King of KingsとLIBRA UMBの間で、UMBに関する商標権が争われていた。
※ XLII
このバトルの担当DJ。
※ どうせこのビート獲ったところで
大会ルールにより、各対戦の勝者はそのバトルの利用ビートを獲得できるようになっていた。
※ さっきの白い肌で沸くヤツ相手に
1回戦、Lick-Gとのバトルで、オーディエンスが相手に歓声を上げ苦戦を強いられたことに対して。