[mol53]
やられちまった もう涙が止まらねぇ
今年は 俺はこのマイク1本で
カチ込みに来たぜ T.O.K.Y.O
ACE 確かリベンジの勝者
でもオマエloser 残念だったな
ギャグのrapが勝てるんだったら
DOTAMAの方がヤベーMCだ
[ACE]
Yo ギャグのrapじゃねぇんだ
これはマジだぜ
サグのワルじゃねぇ わかってんだろ?
客は沸くだけ
オマエはwackだぜ お誂え
来年もムリ 今年もムリ
オマエは一生無理 going homie
Love you body
なに? 去年の約束? わかんねぇ
だったらオマエに足りないのは肺活量
ハイ mol53 俺は飛べる鳥
オマエを殺して 墓場に花を 添えるのみ
[mol53]
OK 俺は飛ぶ鳥 落とす勢い
去年から止まらない
そして内容がまとまらない
俺がすべてここ100倍返し
MICもって俺が発狂
去年と違うとこ それは分かるだろ?
オマエたちの首 そして心
全てをいただく IllなMC
[ACE]
IllなMC kill wack MC
知らねぇな 何が「100倍返し」?
オマエは勝てないし 100万無いし
やられたらやり返す 倍返しだコノヤロー
教えてやるぜ なにが飛ぶ鳥の勢いを落とす
オマエ勢いがねぇんだよ
わかってんだろ ニット帽
どっちでもいいんだよ
ちゃんと聞いときな
DJが流すイントロ
[mol53]
OK ニット帽 ニートも
そこら辺のバカも
B-BOYもB-GIRLも
and you don’t stop
2013 今年は俺が
もらいたいのは 心の叫びだ
オマエたちと共鳴したくて
1年待ちわびた ハッキリするぜ
レペゼン宮崎 地元に錦
それが俺の覚悟 aight?
[ACE]
OK 覚悟なら 活路見出してやるよ
オマエのrapにはこだわりが無いんだよ
馬鹿野郎 お黙りがあるぜ お黙り
こだまで帰ればいいんじゃねぇの?
死ねよこの場で
もっとわかってんだろ?
オマエ誰かのモノマネ なんかまるで
劣化したzone the darknessみたいな感じだ
雰囲気とか
わかんねぇな オマエのパンチライン
一個も感じないんだよ
mol53 fuck 即焼却炉
[mol53]
おいおいおいおい ありきたりだよ
「パンチライン」とか「感じない」とか
マジでそれいいの? 2013 UMB
なんでかって?
俺は熱を取り返しに来たんだよ
今はどうだ? 単なるまがいもんが
チャンピオンを獲っているようじゃ
マジで終わっちまうぜ
日本語rap 俺が取り返すぜ
[ACE]
Yo 取り返していいぜ オマエの日本語rap
だがまかり通る オマエがホンモンのまがいもんだ
わかった 俺も若い オマエも若い
でもオマエを破壊 してやるぜ
でも俺の韻はオマエの倍堅い
わかったvitalize
OK なんだ? R-指定に負けたクセに
オマエ「今年取り戻す 取り戻す」って馬鹿じゃねぇのか?
いつだってリベンジ 正真正銘
俺は全身全霊 やってくだけ
いつだって挑戦者 つまり表現者
概要
8小節4本
勝者: mol53
解説
UMB2013 BEST8 宮崎代表 mol53 v.s. REVENGE代表 ACE
今回はUMB2013からこちらの一戦を取り上げたいと思います。
前年にR-指定とやりあったUMBファイナリストであり、地方宮崎からのニューヒーローであるmol53に対して、大会直前の12/23に行われたUMB REVENGE EASTを見事勝ち上がった勢いのあるACE。
かなり面白い組み合わせで、どちらが勝つか注目された一戦です。
まず試合始まって先攻のmol53。「去年 一歩手前で」など、かなりゆったりと言葉を落としていく立ち上がりでしたが、「このマイク1本でカチ込みに来たぜ T.O.K.Y.O」という辺りから流れるようなリズミカルなドロップへシフト。
「残念だったな」「勝てるんだったら」と、押韻ともつかぬ押韻ですがビートにばっちりとハマっていてこれぞmol53というフローを見せていきます。
また、DOTAMAを引き合いに出したりと内容で言っても非常に直裁な表現を使って攻勢に出ていますね。
続いて後攻のACE。こちらは1小節目から「ギャグのrapじゃねぇんだ」とmol53のラスト2小節の内容へアンサーで立ち上がり、そこから即興性の高いバースを展開していきます。
トップオブザヘッドの短いラインでつないでいき、「来年もムリ 今年もムリ」と要所要所で印象に残るフレーズを挟んでいく戦術をとっていて、とてもACEらしい展開の仕方になっていると思います。
そして最後は「飛べる鳥」からの「墓場に花を 添えるのみ」でキレイに着地。ただガナり立てるだけのrapではなく、技巧的な面でもしっかりと見せ場を作っていますね。
それにしても本当に上手いですね。ACEは日本語、ポルトガル語、英語のトライリンガルだと思いましたが、日本語が第二外国語だとはとても思えません(笑)
続いてそれを受けるmol53。「俺は飛ぶ鳥 落とす勢い 去年から止まらない」と引き続き言葉を短く刻んで音と同調する流れから入ります。
そしてこちらもおそらく完全即興でしょう。そして即興ながら「100倍返し」のあたりで語気を強めてピークを作ったりしていて、これぞmol53といえるような変化をつけたフローになっています。
続くACE。ビートに合わせつつ「倍返しだ」とはドラマ半沢直樹からですね。ちなみにこれに限らずこの年のUMBは時事ネタがかなり多く登場していました。このバースのACEはビートを外すことなく「ニット帽」「イントロ」など最後までハードライミングで通していていて、かなりクオリティの高い内容になっているのではないかと思います。
そして後半、3バース目mol53。「ニット帽」から「and you don’t stop」まで、相手の言葉を継ぎつつ冒頭2小節目の最後にピークをもってくるのは2バース目同様となります。
それ以降はフローからバイブスへシフト。ビートは外しませんが内容で押していく感じで独創的なリズムキープは一時鳴りを潜めます。
対するACEの3バース目。mol53の「覚悟」に反応して「覚悟なら活路見出してやるよ」という「MSC / 決断」のフックを思い起こさせる言葉で始まります。
テンションもここに来て一段と熱を帯びて、「死ねよこの場で」など直截な物言いも増えてきました。最後には意図的なトーンダウンでmol53(燃えるゴミ)を「即焼却炉」とひねりの効いたラインで余韻を残してバースを終えます。
個人的にACEは熱くがなり立てていくrapよりもこういったひねりにひねったラインを捨てゼリフ的に残しつつピークアウトしていくスタイルの方が見ていて楽しめます。
いよいよ4バース目。先攻のmol53です。「おいおいおいおい ありきたりだよ」とACEの安易なライミングをdis。
「パンチライン」「感じない」についてはもう手垢にまみれた日本語rap最頻出イディオムなのでさすがに見逃しませんね(笑)これは攻撃する相手にとってはいい材料です。
また、このバースのmol53は完全にメッセージ性にシフトしていて、シーンの現状に疑問を呈しつつ「熱を取り返しにきた」と豪語。
「2005年のUMBは夢があった」とまで言ってのけ、これに会場も大いに沸き立ちます。ただしmol53の意見そのものへの賛意というよりは、熱を込めて語られたかつてのシーンへの郷愁というリリシズムを評価しての反応だったのではないかと個人的には思います。
(バトルシーンは当時から「スポーツ化」であるとか色々言われていましたが、2013より2005年を評価するリスナーって一体どれくらいいるのでしょうね。)
ちなみにその後の「単なるまがいもんがチャンピオンを獲っているようじゃ」とは素直に考えると前年優勝のR-指定のことになるでしょうかね。mol53、さすがです。
そしてラスト、後攻のACE。「取り返していいぜ オマエの日本語rap」と、意外にも相対主義めいた返しから「オマエがホンモンのまがいもんだ」と反撃。ここ、rapの技術とかでなく純粋にdisの攻撃力が高くて個人的にはかなり好きです。
続く「俺も若い」から続く数小節は短いライミングで畳み掛けるように相手を罵倒していくACEの真骨頂とも言える内容になっています。
また、「R-指定に負けたクセに」「[取り戻す]って馬鹿じゃねぇのか?」という部分、この対戦で一番のパンチラインではないでしょうか?個人的には非常に痛いところを突いているようで、これが純粋な悪口合戦ならACEの圧勝だったんじゃないかな、と思います(笑)
お互いに最後まで攻撃の手を緩めずにライミングあり畳み掛けるようなラッシュあり、またトンチの効いたラインもがなり立てる展開もありで、かなりバラエティに富んだ素晴らしい対戦となりました。ナイスバトルです。
そしてこちらの試合の結果ですが、票としては観衆、陪審員ともmol53を支持。ただしその内実はかなりの僅差だったのではないかと思います。それくらいに拮抗した試合展開で非常に白熱したいいバトルだった印象です。
要所要所でmol53のラインの盛り上がりがわずかに上回っていて、そうした小さい差の積み重ねが判定の際にモノを言った、という感じでしょうか。
※ 去年 一歩手前で
前年 UMB2012決勝大会にて、mol53は決勝戦でR-指定に惜しくも敗れている。
※ リベンジの勝者
前週の12/23に行われたUMB REVENGE EAST。
※ DOTAMA
同大会の出場MC。
※ 倍返しだ
TVドラマ「半沢直樹」シリーズに登場する主人公のセリフ。
※ zone the darkness
昭和レコード所属のMC。現在は「ZORN」と改名。
※ 2005年のUMBは夢があった
第1回大会であるUMB2005のこと。
※ R-指定
同大会出場MCで、前年優勝のディフェンディングチャンピオン。