GILI v.s. Kowree
戦極MC BATTLE 第7章 GILI v.s. Kowree
今回は戦極7章からこちらの一戦を取り上げてみます。
ライミングに定評のある二人の対決です。ちなみにGILではありませんのでご注意を(笑)
[GILI]
Uh 相手はKowree
前輪と後輪 MCが降臨
自転車 みたいな名前してんじゃねぇよ
速攻でブッ飛ばすぜ? Ah
自転車なら伸ばせ走行距離
顔面からして登校拒否
ぐらいな感じだぜ それかそう
グチャグチャにして混ぜて焼く 道頓堀
[Kowree]
Yo 「Kowreeで後輪」ってY.A.Sが言ってたじゃねぇかクソバカ野郎
マジ言っとくけどY.A.Sが待ってんだ 俺のことを
だったらオマエはアイツに最敬礼
オマエの口にチャックまるでYKK
そんな感じだぜ まさに最低点叩き出してんだよ
超アウェー関係ねぇぜ 俺は導火線に火をつける
スクランブル交差点 盛り上がって来いや
[GILI]
導火線に火をつけて爆発
元気はつらつ かましていこうぜ
Ah 爆発 つまりバスガス爆発
俺はまだまだrapが上手くなる
わかっとけよ wack MC なぁ
アタマもうすでに血だらけじゃん
Ah? 自転車 自転車 そりゃオマエ見てると
自転車しか思い浮かばねぇんだよバカ
[Kowree]
俺で自転車しか思い浮かばないって
マジ意味がわかんないんですけど
Yeah 何が言いたいか 爆発させる
言葉で爆破 この場でまずは お咎め無くな
そんな感じさ まさに小悪魔
みたいなそう イケメンか知らねぇ
二重まぶた 俺は一重
鋭い眼光 で全部掴みに来た
大東京 遊ばせてくれよ
[GILI]
小悪魔よりも本物の悪魔
オマエはそうだ 目は天使
Ah 悪魔で言うなら悪魔のささやき
腹かっさばいてサンマの蒲焼
Ah ah かましていこうぜ
俺は確かに最近言われる「イケメン」
恥ずかしい 似てる三浦春馬
俺のワイルドさは木村拓哉 Uh?
[Kowree]
Yeah yeah
こういうやつの基準は何文字踏んだ?
ちげーだろ ちゃんと自分が
あるかどうかなんだよ
誰かのパクりみたいな練習
予備校でもオリコンでも
ポリ公でもロリコンでもねぇんだMCバトルはよ
アァ? なにかDJモーリス?
信念とdis曲げずに来たぜ
俺が12時間かけて来たから全員注意しな aright?
概要
8小節3本
ビート: The Whole Darn Family / Seven Minutes of Funk
勝者: Kowree
解説
戦極MC BATTLE 第7章 GILI v.s. Kowree
今回は戦極7章からこちらのバトルを紹介します。
2012以来、UMBファイナリストとして島根を背負い続けているKowree。それに対するは戦極の押韻職人として名を上げているGILI。微妙にスタイルの近い二人で、組み合わせとしても面白いと思います。
ちなみにこの一戦は一部公式の動画にアップされていますので、まだ未見の方はそちらを再生しながらご覧頂ければと思います。
(動画の3:37〜からになります)
まずは先攻のGILI。「前輪と後輪 MCが降臨」とKowreeの名前から韻をつなげていきます。
特に「自転車なら伸ばせ走行距離」「顔面からして登校拒否」の辺りでは非常にGILIらしいというか、リズムを守りつつ淡々とボキャブラリーを
披瀝していくrapを展開していきます。最後の「道頓堀」までリズムもライミングも途切れません。地味なところですがrapにおいての基礎体力を感じますね。
一方の後攻はKowreeですが、「[Kowreeで後輪]ってY.A.Sが言ってたじゃねぇかクソバカ野郎」と最初から熱を込めてぶち上げていきます。
Y.A.SとはUMB2012の本選で直接対戦しており、その時の関係を思わせる内容になっていますね。また、「最敬礼」「YKK」「最低点」とこちらもライミングは忘れません。言葉選びも決して単純でなく、Kowreeの引き出しの広さと瞬発力をうかがわせます。
続くGILIの2バース目。Kowreeからの「導火線」というワードを受けて「導火線に火をつけて爆発」「元気はつらつ」「バスガス爆発」「rapが上手くなる」とライミングのラッシュをかけつつも、非常に自然に自分の文脈に取り込んでいきます。
このあたりが相当スゴいんですよね。広いボキャブラリーに適切にアクセスできる上、なにより普通の早口言葉も即興で織り交ぜながら決して噛まないというのにはまったく脱帽です。
また、GILIの方はよくも悪くもアタマの回転にクチがようやく追いついているというのがとてもよく伝わってくるrapです。
これほどの突発的な意味の生成が間に合っているのがそもそもスゴいのですが、それでいてなお文脈上の整合性もユーモアもあったりして、即興rapの絶妙なバランスが垣間見える感じです。徹頭徹尾トップオブザヘッドだということをここまで体現しているMCはそう多くはないのではないでしょうか。
最後の「自転車しか思い浮かばねぇんだよバカ」という着地は半ば投げやりなようにも聞こえてしまいますが、前記した内容を踏まえるとそれなりに納得がいくわけです。
引き出しに貯めておいたラインのパッチワークというのもMCバトルにおいてはひとつのスキルだとは思いますが、どちらかと言えばこのGILIやTK da 黒ぶちのような即興性の高いスタイルの方が聞いていて面白いと個人的に思います。
そして後攻のKowree2バース目です。「俺で自転車しか思い浮かばないってマジ意味がわかんないんですけど」という苦笑いで始まります。確かに意味はわかりませんね(笑)
また、GILIの「バスガス爆発」に反応して「言葉で爆破」「この場でまずは」「お咎め無くな」と畳み掛け、ライミングに関してこちらも負けていないです。
もちろんGILIのライミングスキルも相当なものですが、Kowreeにとってもやはり押韻は大きな武器になっています。
ただし両者の間に違いがあるとすれば、GILIの方はいかにまだ使い古されてない、(バトルの場などであまり耳にしない)よりフレッシュな言葉で押韻していけるかに腐心しているのに対して、Kowreeの方はバトルの対話の中で相手へのメッセージを最大限強調させるための手段としてライミングをどう活用出来るか、という部分に重点を置いているように見受けられます。実際にrapを聞くと両者のアプローチの違いが体感できると思います。
双方のこの違いは特に最後のバースにも色濃く現れています。GILIが「小悪魔よりも本物の悪魔」とKowreeのバースを受けつつも「悪魔のささやき」から「サンマの蒲焼き」と比較的真新しいボキャブラリーで押韻を決める一方で、後攻のKowreeは「自分が何文字踏んだ? ちげーだろちゃんと自分があるかどうかなんだよ」と真っ向から返していきます。こう見ると両者の違いが際立ってくるんではないかと思います。
「誰かのパクりじゃないオリジナルだろ」的なことを次々とKowreeが提示していきますが、先述したGILIのスタイルを考えると、本バトルのみならずシーン全体へのメッセージに思えてきます。
そんな展開で進んだバトルでしたが、結果の方はKowreeの勝利。判定としては僅差であったでしょうが、Kowreeはやっぱり強いですね。ですがGILIのライミングも最後まで失速せずに続いていて、非常に面白いバトルでした!
※ Y.A.S
同大会出場MC。静岡県伊豆の出身で、UMB2012、2014のファイナリストでもある。
※ YKK
ファスナーの製造メーカーで、世界のシェア45%を占めている。
※ スクランブル交差点
交差点の種類で、ここでは渋谷駅前の巨大な交差点を指す。
※ 三浦春馬
日本の俳優。
※ 木村拓哉
日本のタレント。SMAPのメンバー。
すごい適切な解説。
読んでて面白いです。
相手へのメッセージを最大限強調させるための押韻。なるほどなぁと思いました。