DOTAMA v.s. mol53
UMB2013 BEST4 東京代表 DOTAMA v.s. 宮崎代表 mol53
今回はUMB2013からこちらの一戦を取り上げたいと思います。
大会もいよいよBEST4に突入。この試合に勝った方が決勝進出となる、という中での対戦です。
[DOTAMA]
Yeah 先攻でもいたって冷静
like a 碇ゲンドウ のように落ち着き払う
そしてフィーゴのように LIQUID ROOM沸かす
Yeah BOSS THE MCのスタイルも
平然とパクる ごめんなさい
それが俺のカメレオン みたいなもんだ
待てねぇよ 決勝のRくんまで
だからmol53くんを 完全燃焼させます
[mol53]
目の前の敵は俺じゃない
自分自身だ それを忘れんな
もう一度remember
オマエが最初ビート走らずにkeep on
したけど走ってマジ残念だよ
結局このビートに合わせろ
選んだのはオマエだろ?
しっかりとしたCHOICEと
オマエたちの耳と目と目を判断
認めろ 俺ここから上がるぜ階段
[DOTAMA]
あのさー だから
これが俺のやり方なんです
残念です って言われるのもホント勘弁です
Yeah mol53 完全燃焼 させる
ライムぶつけるのは 顔面でしょ?
mol53くん でもやっぱりキミは
燃えるゴミ なんかじゃないよ
でも優勝すんの アンタじゃないよ
俺の持ってるスキルはハンパじゃねぇよ
[mol53]
オイオイオイ
半端じゃねぇ 確かに
でもギャグセンス低めで面白くない
オマエ顔面じゃなくて
心に撃ち込めライムは
脳ミソのバレットに
パンチラインを詰めて
クチが銃口なら
オマエの心臓を一発で撃ち抜く
俺がマイクを持つ理由 ここにある
[DOTAMA]
Yeah ちょうどスーツ来てるから
撃ち抜く と言われても
マトリックスのエージェントみたいに
こうヒュンヒュンヒュンヒュンって全部避けます
全然平然としてるぜ
つーか宮崎帰れよさっさと
交通費 出してやるから
俺のライブにはないぜ小休止
オマエここで終わりになるから
どういう風にまとめます?
やっぱアンタカス いやゴミ
じゃなかった でも俺
それ入れるゴミ箱の容器になって
受け止めてあげます
[mol53]
わからん オマエの言っちょることが
まったくわからん
Like a なんちゃら like a なんちゃら
一つにまとめろ オマエがまとめろ
先生みたいなナリしてんぞ?
コイツにレクチャーされることは一つもねぇ
今日のDJとplayer
そいつらとflavor
俺はすべて吐き出してるぜ
オマエも返してみな check it
[DOTAMA]
Yeah 「うめーや」とか言ってるけど
やっぱゴミだからなんか韻がネタくせーや
はっきり言って 超ダセーよ
でも俺が先生 あぁそれホント褒め言葉
KRS-ONEに代わってHipHopを背負ってるのは俺だ
オマエらよくチェックしな
mol53 押せるとき
まったく赤いパーカーが
俺の顔の赤 は青に照らされてるから
ちょうどよく中和されている 今現場
[mol53]
Yo なんでかわかんねぇんだよ
俺はマイクで伝えてぇ
ネタくせぇ コイツ
ライムがどうこうとか フローがどうこうとか
コイツ口がうるせぇ
だから俺がふさぎに来たぜ
Hey yo わかんだろ? この意味が
オマエが味方 につけた会場を
すべて根こそぎ頂く
去年の俺を思い出して
ジャックナイフ 耳元刈るからcheck it out
解説
UMB2013 BEST4 東京代表 DOTAMA v.s. 宮崎代表 mol53
今回はUMB2013からこちらの一戦を取り上げたいと思います。
前年は初出場ながら決勝まで行っているmol53。こちらも優勝候補の一角であるDOTAMAとの対決です。
この試合のビートはややスローで落ち着いた雰囲気のもので、拍をつかみやすい分、DOTAMAにとっては幾らかやりやすかったかもしれません。
また、mol53にとってみてもビートアプローチに工夫の余地が少ない分、メッセージや内容に沿った勝負を仕掛けていくスタイルに完全にシフトしているような感じでした。
それではバトルの内容を見ていきましょう。まずは先攻のDOTAMA、1バース目の「碇ゲンドウのように落ち着き払う」からのラインは、THA BLUE HERB / THE ALERTの一節である、「フィーゴのように落ち着き払う ディーゴのようにリキッドルーム沸かす」というラインのサンプリングですね。
続く「カメレオン」からの「待てねぇよ」のライミングはおそらく完全な即興ではないでしょうか。押韻に特化したMCのような滑らかさこそないものの、トップオブザヘッドによるライミングというひとつの武器をモノにした感じが伺えます。
ハードなバトルをいくつも勝ち残ってきたDOTAMAですが、純粋にrapの基礎的なスキルの面でも着実に進化している様子がうかがえる立ち上がりになっています。
一方後攻はmol53。「オマエが最初ビート走らずにkeep on」「したけど走ってマジ残念だよ」という1バース目のラインですが、これはおそらくDOTAMAの1バース目が後半にビートから外れて自分のリズムが先行してしまったことに対する言及かと思います。
今大会、これまでmol53の相手がACEやTK da 黒ぶちといったこちらも言葉数を多く詰め込んでいくMCではありましたが、リズムキープはしっかりとするスタイルなため、余計にそういった部分が目についたのでしょう。
そして次の2バース目のやり取りが本バトルでの一番の盛り上がりでした。「mol53 完全燃焼」「ライムぶつけるのは 顔面でしょ?」というラインに対して、mol53は「オマエ顔面じゃなくて 心に撃ち込めライムは」と見事に切り返していきます。
その後には「脳ミソのバレットにパンチラインを詰めて」「クチが銃口なら」と続いていて非常にうまいまとめ方でDOTAMAのバースに対するカウンターを展開します。このやり取りでは完全にmol53の方に声が上がっていました。
ここまで見事な返され方をされてしまい、DOTAMAにとってはやや手痛い状況でしょうか。
これに対してDOTAMAの3バース目、「ヒュンヒュンヒュンヒュン」とマトリックスのアクションをコミカルに真似ながらのアンサーで会場に笑いを誘います。
キレイにまとまった相手のrapをキャラクターで強引にねじ伏せようとしていく感じで、非常にDOTAMAらしい返し方ではないかと思います。
一方mol53の3バース目ですが、「オマエの言っちょることが まったくわからん」と冒頭が微妙に方言混じりのrapで新鮮です。方言が出てしまうほど熱くなった、ということではなさそうですがバースにバリエーションが生まれたことだけは確かでしょう。
そしていよいよ最後のターン。DOTAMAはmol53から出た「先生」という単語に反応して「KRS-ONEに代わってHipHopを背負ってるのは俺だ」と大きくぶち上げます。
たまにこういう途方もないことをサラッと言ってのけるのもDOTAMAの魅力の一つでしょう。オーディエンスも上がり、わずかではあるものの会場の空気をモノにしかけた感じでした。
対するmol53も最後は殺しにかかりますが、「オマエが味方につけた会場を」と言う辺り、勝負の流れを察知してのことでしょう。「去年の俺を思い出して」と釘を差しつつオーディエンスに向かい呼びかけて終了となりました。
結果から言うとこのラウンドは引き分けとなり、勝負は延長へ突入していきます。
途中会場の空気が一方に流れるような場面も幾度か見られましたが、どちらもその流れに完全に乗ることができず、相手に付け入る余地を残してしまっていたという印象です。まあその度に盛り返していく方も十分スゴいですが(笑)
結果を見ればドローに終わりましたが、双方自分のスタイルを最大限ぶつけていて非常に面白いシーソーゲームになっていると思います。
延長も延長でこれまたスゴい一戦なのですが、そちらの模様は以下からチェックしてみてください。
[UMB2013] mol53 v.s. DOTAMA 延長戦
※ 碇ゲンドウ
アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の登場人物。
※ フィーゴ
サッカーの元ポルトガル代表選手。
※ BOSS THE MC
THA BLUE HERBのMC
※ 決勝のRくん
本大会の出場MC。大阪代表 R-指定。
※ マトリックス
アメリカのSF映画。
※ KRS-one
アメリカのラッパー、プロデューサー