呂布カルマ v.s. Disry
UMB2017 BEST16 愛知代表 呂布カルマ v.s. 愛媛代表 Disry
今回はUMB2017 GRAND CHAMPIONSHIPからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
[呂布カルマ]
ちゃんといびつに 歪んだこのくらいのビーツに
乗っける言葉 Disry いつになくイジる
お前の一部に 本当恥部に
それか乳首かケツの穴にブッ込む
まるでふぁんくみたいにフザけたrap
ビート 取り方も分からないくらいに
ぶっ飛んだ頭でも余裕で出てくるライミング
ぐらいにやんないことだって余裕
雑魚相手だからいろんな手のひらの上を見せちゃう
今年のチャンプ 俺以外いない
[Disry]
雑魚相手 と言っときながも俺のCD
バッチリ聴いてくれてる その耳でkickin’
キッチン ここはmicrophone クロスオーバー
クソそうな奴を動かす
俺のマイク 歌いSR
いつでもマイクで行くぜ
Yo そこの奴と違うぜ motherfucker
Disry 愛媛 松山 ここから頭出す
Yeah 1こ2こ 抜けてるぜ CoolCore
その熱を溶かすほど
俺のやり方と勝ち方で上がる
[呂布カルマ]
そこら辺のやつと同じ motherfucker
どいつもこいつも意味わからずに言ってる motherfucker
お前もか? そんな浅はかな言葉で俺の首が狩れるか?
ふざけんなよ 地元からもう一回やり直せ
「このCD 聴いてください」ってお前が渡してくれたCD
だから聴いてやったけど
おカネ俺1円も出してない
あの後何枚CD出たか知らないが
お前にカネは払わない
もう一回渡してくれるなら聴いてやっても構わない
[Disry]
じゃあ今日渡すぜ
バトルだからってリスペクトを欠いたような 適当なdis
そんなんで俺が死ぬかクソ野郎
ローカル背負ってやって来てんだぜ マジで
ビートもクソもねぇから聞けよな
松山レペゼン それ以外はねぇ
でもそこから全国 でもそこから日本
このHipHop 東京 どこまで行ける?
俺は行けるとこまで行くぜ
日本どころか世界まで
WorldwideなHipHop描く
未来 時代 変えてく 俺次第
お前じゃない今日は
[呂布カルマ]
こんなとこまで来てまだ「松山レペゼン」
とかほざいてるやつが世界見てるとかマジ笑かすぜ
俺は地元名古屋 当然黙らした上でダンジョン背負ってる
ここは俺のホーム それに間違いない
お前の吐く言葉 まぁ前の奴と一緒だ
外国行って「マザファカー」とかてめー言ってみ?
言葉の選び方からもう一回ちゃんと考えた方がいいぜ
Disry いびつに浮かんだこのビーツに
乗せる言葉はどうですか?
[Disry]
いびつに いつになくビーツに やる気はねぇ
やる気がある マイク握ってる motherfucker
HipHopが好きだから
いろんなCDを聞いて いろんな本とか読んで
吸収したスラング 俺の中でフワッと一人で着地
いつものように私がTAXIみたく届ける
言語のセンス いつでもセンテンス先天性のまま
Motherfuckerって言いたくなるようなそのツラ
どっちを見てrapをしてんだ? モンスターよ
[呂布カルマ]
行けるとこまで
そうお前行けるとこはここまで
よく頑張った お前 やり方 ここまで
いろんなrap聴いて
本を読んで吸収した言葉が「motherfucker」って
それ1行目に出てくるやつじゃないっすか?
俺のrap ちゃんと聴いてたら
そんな下らねぇこと口から出ねぇ
なにせ俺は「母を抱く」 意味が違う
お前ら言ってる 「HipHop? 黒人のモノマネ」
さっきからblack black black
肌の色を受け止めろ
[Disry]
受け止めてるよ 死ぬまでイエロー
お前それで行けそう?
俺は見せようとする自分の世界
Yeah コケることはない このまま行くぜmicrophone
クソ野郎 クソ野郎 胡散臭ぇなその言葉
Motherfucker たしかにそうだな
でもなんだかんだ言ったって
HipHopが好きなことに変わりはねぇから
俺はDisryという銘柄 ライムの名家だ
無名からここまでやって来たんだクソ野郎
概要
8小節4本
ビート: ONE a.k.a ELIONE / 此処ニハナイ REMIX feat. CHICO CARLITO & Pablo Blasta
勝者: 呂布カルマ
解説
UMB2017 BEST16 愛知代表 呂布カルマ v.s. 愛媛代表 Disry
この試合の見どころはなんと言っても呂布カルマの試合運びで、今回はフローを転がすことによって流れを作ることに重点を置いているような戦い方をしてます。日頃のパンチライン飽和攻撃とは打って変わったスタイルで、本当に必見です。
まず先攻の呂布カルマ。「いびつに」「一部に」といった、いつになくライミングで小節単位に細かく刻んだrapをしていて、日ごろのスタイルからは想像できないほど、もうほとんど戯画的と言っていいくらいに分かりやすくフローにシフトしたバースを構築していきます。
こうした発言からも見て取れる通り、トップオブザヘッド気味にフローが先行しつつ後から語尾を合わせていくというスタイルになっている模様ですが、それでも面白いぐらいにビートに妙にハマった、一度聞いたら忘れないインパクトの強いrapになってます。
また、本人もそうしたフローを楽しんでいるかのような素振りで、余裕たっぷりに進んでいくのですが、当然のようにパンチラインも健在で、上記のような強いメッセージを含んだラインも端々に登場して会場を沸かせています。
対して後攻のDisry。こちらは普段通り勢いのあるdisとメッセージングを披露していきますが、呂布が完全にフローに振り切っている分、メッセージ性の部分が相対的に強調されて聞こえてきます。
そして1巡して2バース目。これ以降はもうアンサーの撃ち合いになっていきます。
呂布カルマ、リズムは1バース目同様一定のままで、的確に相手の言葉を拾って仕掛けていくのですが、いずれのメッセージングも重たく、その一挙手一投足に会場が沸き立ちます。
軽妙なフローに乗せてはいますが、言うことがいちいちドギツいですね。半ばオーバーキル気味に序盤から中盤にかけてはDisryを圧倒していきます。
続くDisryはここにきてようやく熱の込もった反撃を見せ、呂布のパンチラインに対してありったけのシャウトで対抗していきます。
呂布カルマが大上段に構えた余裕のあるdisを吐くところ、こちらはバイブスと地元repのメッセージングに徐々に振り切っていきます。
それに対する呂布のアンサーがこちら。もう全部引用したくなるほど全面的にパンチラインで、何を言われても芯を捉えて的確に打ち返していく感じです。本当にスキがないです。
そんな両者の際立ったやり取りが上記の部分なのですが、やはり呂布カルマの返し方が頭一つ抜けている印象ですね。
こうした単体でも試合終了級のパンチラインを、1バース目から続くフローと勢いに乗せて次々に繰り出していく様は圧巻で、もうこの頃には試合全体の空気を掌握し切っていたような感覚でした。
特にこの「1行目に出てくる」のくだりはぐうの音も出ないほどストレートな切り返しで、先攻にも関わらず、個人的にはこの辺りで勝負あったかな、という印象でした。コールド勝ちに近い試合運びを見せたこのバトルの呂布カルマ、本当に強かったです。
Disryに関して言えば、呂布が遠慮なく相手を刺しに行っていたのに対して、やや内省的なリリックが多く、シャウトの声量とは裏腹に呂布カルマへの直接的なdisがあまり多くはなかった印象でした。
後攻8×4というアドバンテージを活かしきれないまま終わってしまったように見えはしましたが、パフォーマンスも悪くなかっただけに、手がつけられないほど増長した呂布カルマに対してはもう少しヘビーな反撃もできたかな、と感じさせる内容でした。
それにしてもこの一戦の呂布カルマは本当に強かったです。日ごろのメッセージングや不意に出るパンチラインはそのままに、試合を通底するフローの根幹をぶらさずスタイルの一貫性も保っていて、さすがと思わせる完璧に近い試合展開になっていました。
この一戦はとにかく呂布カルマで、彼の異常なまでの強さが全面的に垣間見れたバトルになりました。まだ見ていないという方はぜひDVDで見て頂きたいと思います。必見です。
また、大会トーナメントで言えば、この「強い呂布カルマ」をいったい誰が止めるのか、という部分も当日のテーマとして浮上していったように感じました。