[早雲]
コイツに勝てば 優勝なんだろ?
日本一詰めの甘い男
コイツに勝てば 優勝なんだろ?
準優勝が大好きな男
95から5が足りない
いや99から1が足りない 頭の閃き
お前のメッキはがれた シルバーコレクター
がんばれ いつか獲れるさ
[SAM]
Yeah 準優勝にもなれてねぇ奴がガタガタ言うな
雑魚が能書きを垂らす
あいにくコイツは大恥を晒す
今日は俺自身 それを超えるために俺はここにやってるぜ
Yo またベスト ここじゃなんかゲーム上
悪ぃが東京 今日俺は暴れるぞ
[早雲]
分かってない その時点で
スポーツマンシップがバッチリそなわってる
オリンピックじゃねぇんだ 銀も銅もねぇんだ
一回戦と一番 それ以外は意味が無ぇんだ
負けてんな 準優勝?
でもお前 それは慰めの言葉だぜ?
第2位 さい疑心 ばっかり
バッタリ会ったら目が泳いでる
ライム考えんのに必死か? 若造
[SAM]
大丈夫俺は目が泳ぐよりもここで登る
俺の覗くだけじゃなくて 俺の心 伊達じゃない
オリンピックか パラリンピック
今日も戻らないぜ片道切符
Yo 今日はつかみ取る天辺
後ろ向かぬ武蔵坊弁慶
あいにくさ敗北が決定
東京 俺にまかしとけって
概要
8小節2本
勝者: SAM
解説
戦極MC BATTLE 第17章 1回戦 早雲 v.s. SAM
今回は戦極17章からこちらの一戦を取り上げたいと思います。
いずれも実力十分な早雲とSAMの対決。一回戦から好カードですね。
それでは早速試合を見ていきます。
まず先攻は早雲から。「日本一詰めの甘い男」「準優勝が大好きな男」と、冒頭からSAMへのdisを飛ばしていきます。
前回大会の16章では惜しくも準優勝。大きなイベントの常連でありながら、あと一歩のところで勝ちきれないここ最近の戦績を引き合いに攻勢を仕掛けます。
そんな中で早雲が素晴らしいのは一つ一つの構成がしっかり練られている部分で、例えばこのラインなど、単に「優勝できない」と言うだけでなく、意味の上で一捻り加えたラインを重ねているのが分かります。さすが京都を代表するMCですね。
そんな感じでDisと言葉遊びを両立させたような、面白みのあるrapをしていく早雲ですが、試合冒頭とはいえオーディエンスはもう少し反応してもよかったように感じます。
続いて後攻のSAM。こちらも真正面から相手のdisを打ち返していて、ライミングもそこそこにどちらかと言えばメッセージングシフトの戦い方をしています。
この試合で面白いのは、日ごろどちらもライミング主体で戦う試合も多いのですが、早雲1バース目の話題を皮切りに、双方でdisとアンサーへの対応を重視する流れとなり、そのまま試合全体の比重もメッセージングの方に傾いていくところだと思います。
例えばその後の推移で、「俺自身を超える」というSAMに対して、早雲からは「それじゃスポーツだ、結果がすべて」という切り返しがなされます。
京都に君臨する百戦錬磨のMC、さらっと出てくるメタファーもさすがに秀逸ですね。
相手のSAMはバリバリに言葉のカバレッジが広いMCで、rapさせたらいつまでも続けられるような実力の持ち主なのですが、話題の転がし方というか、試合勘のようなものは早雲の方に一日の長があるように感じさせる展開になってます。
最後の「ライム考えんのに必死か? 若造」というdisもかなり鋭く、これがあることでSAMの2本目でライミングに逃げることを牽制していきます。8×2で先攻ならではのクギの差し方と言えばいいのか、この辺りの駆け引き本当に巧いです。
それに対してSAM。やはり会場を味方につける道具立てとしてライミングも利用していくのですが、しっかり相手の仕掛けた話題を吸収しつつも、自身のメンタリティを乗せた文脈に即したラインで使っています。
続く「武蔵坊弁慶」のラインはかつてUMB2016でも見せたお馴染みのルーティーンで、おそらくオチまでのつなぎとして自然に出てきたものではないかと思います。
[UMB2016] ウジミツ vs SAM
そのオチに何がきたかと言えば「東京 俺にまかしとけって」というオーディエンスへの言明で、それをフツフツとバイブスを込めた調子で客席へ飛ばしていきました。
早雲へ言い返すのではなく、あえてオーディエンスへ向けて放たれた「勝たせてくれ」という懇願に近い含意を含んだ着地になっていて、ウィットのかたまりのような早雲のrapに対して、これも戦い方としてはかなり上策だったのではないかという印象でした。
そんなバトルでしたが、判定はSAMへ。一回戦からもったいないくらいのマッチアップでしたが結果的に早雲は一回戦で敗退となってしまいた。
SAMは得意とするライミングはあえて抑えているようなスタイルで、どちらかというと気迫で競り勝ったような格好でした。ビートの雰囲気や会場の空気も込みのけっこう際どい勝利と言えるかもしれません。
早雲の方は相変わらず相手への皮肉とウィットに満ちた面白い内容で、こちらも非常にパフォーマンスの高いバースになってました。
個人的には延長もなくはなかったかな、という印象でした。ビートを変えてライミングでのバチバチの殴り合いも見てみたかったです。