[キョンス]
ダラダラ くだらねぇ HipHop
やってねぇMCだから一回戦申し分ねぇ
土臭さもある こういうのもある
最近とかじゃなく 己の色
今日は東京 王道に変えにきた…
落ち着け ゆっくりのペース
デカいスケールでバツ付ける言葉のテール
そう 背中 一番デカくなる
男の背中 音の乗せ方
[KTSRO]
OK クソrapお疲れ様
こういうビート乗れねぇと言ったら大間違いさ
オメー 馬鹿じゃん
オシャレな格好してさ
こういうビート全然乗れてねぇじゃん
俺から言わせりゃ 何がストリート? HipHop?
バカにしてるオメーの裏が見えてる
俺に言わせればそんなスキル?
速攻で退場させてやる
どういうBPM だって乗せてやれる俺
当然ストリート上がりだぜ
オメーと動かす量が違ぇ
それも分からねぇ
オマエなんて速攻俺が最前線
CDも発売 オメー2枚使い
異様 臭い 最後
[キョンス]
そうだよ 俺はストリートなんて全然触れてもない
だけど京都だから分かる BONG BROS
そういう俺を変えにきたということ
テメーのrap クソとは思ってないけど
俺は俺のやり方で京都背負って来たのさ
…まだだと言ってる 全然合ってない
BPM そんな固定概念を
disはBGMにしか聞こえない GB-WEB
GPSを付けなかったとしても
俺は頂点に照準を当ててる
[KTSRO]
OK 必要ねぇ GPS
当然俺からすりゃノーマーク
オメーのrapは no smooth
全然言いたいことが伝わらず
終わり のらりくらりやってた人生
オメー10代だろ? まだ若ぇ
もうちょっと頑張れ 俺3回目
この道は悪いけど簡単に譲れねぇ
自分の意思だけでやってきた
ASTRO RECORDS 茨城 忘れんな
俺がMC KTSRO
この名前を刻み込みに来た この会場
STUDIO COAST 俺の全てをぶつけにきた
2017のこの大一番 俺のrapを見せに来たんだ
絶対俺負けねぇ 気持ちはチャレンジャー
概要
8小節2本
勝者: キョンス
解説
UMB2017 1回戦 京都代表 キョンス v.s. 茨城代表 KTSRO
今回はUMB2017からこちらの一戦を紹介したいと思います。
KTSROはもう本選は常連と言ってよく、2010,2014に続いて今回が3回目の出場となります。
対するキョンスは今回が本選初出場。全国有数の激選区である京都予選を制しての登場となりました。
それでは内容を見ていきましょう。
まずは先攻のキョンス。対戦相手のKTSROに対してリスペクトのある内容でスタート。「土臭さもある」という表現は、愚直にハーコーなスタイルを貫こうとするKTSROにとっては最大級の賛辞なのではないかと思います。
ちなみに今回の試合、BPMがだいぶ遅めで、拍ももっさりとしたやや乗りづらいビートでしたが、キョンスは単語単位で刻んだフローをベースに、要所要所で拍の裏を取ったりしながら器用に対応していきます。巧いです。
そしてバース後半へさしかかろうかというタイミングで、拍を取り間違えたKTSROが割って入ろうとするところを「落ち着け」と制します。
本選初登場の一回戦、変則的なトラック上でビートキープしながらこの対応力。これは視野の広さに加えて、rapにある程度の余裕がなければ出来ない芸当と言っていいでしょう。巧いです。
そんなアクシデントがありつつも、全体通してバーストして綺麗にまとまっているのが分かります。
対して後攻のKTSRO。こちらは打って変わってビートへ寄せずに倍速、というより地のスピードでrapしていくのですが、「こういうビート乗れねぇと言ったら大間違いさ」との言葉通り、それほど崩れてはいません。
こちらはキョンスから敬意をもらいつつも果敢に相手のスタイルを攻撃していくスタンス。スタイルというよりはファッションが矛先かもしれません。
画像を見てもらえればお分かりの通り、HipHop的にベーシックな風貌のKTSROに対してキョンスはハンチングに茶色のロングコートという探偵小説に出てきそうな意外性のある服装で、全出場者の中でも異彩を放っていました。
そんなキョンスに対してKTSROは服装がbasicならrapスタイルもbasicで、シンプルに相手へdisの言葉を畳み掛けていきます。
この引用したラインも内容が抽象的ながらどこか格好よさがありますね。
一方の先攻キョンス、2本目。
そんな一本気なKTSROに対して柔軟にアンサーを返していきます。それでもrapのクオリティと安定感は落ちずに、ゆっくりなBPMのビートで安心して聴いてられるという点が、彼のスキルをなによりも物語っている気がします。
先ほどに続いてKTSROへの敬意がありつつも、スタイルで対抗しない分だけ、repする地元である京都をしっかりと提示しています。
そしてまたしてもバースのちょうど真ん中辺りで、小節を数え間違えフライングしようとしたKTSROを「…まだだと言ってる」と制する場面がありました。
KTSROにとっては致命的な2度目のミス。キョンスにとってはrapのリズムを乱す妨害公開になるはずですが、これを見事にさばいて本来のバースにすぐ立ち返っています。
特にBGMからライミングへ移っていく様が割り込まれた直後とは思えないほどスムーズで、この一事だけでもキョンスの瞬発力や安定感の高さがうかがい知れますね。
ラストの「GPS」から「照準」の流れも突発的なBPMの流れからよくまとまっています。
対して後攻のKTSRO。先ほどのアクシデントもあり、こちらはdisとしては散発的な攻撃に終始している感じでしょうか。
ただしそんな中でもこの切り返しは個人的に唸りました。
「GPS」や「照準」といったキョンスの言葉に反応したアンサーですが、本選初出場の新人に対するdisとのダブルミーニングになってます。
ただし手数はあっても有効打はここまでで、流れをひっくり返すような反撃は見られないまま終わってしまった印象です。1バース目同様リズムキープは安定していただけに、もう一歩踏み込んだdisが欲しかったところでしょうか。
そんな訳で勝者はキョンス、結果的にはルーキーがベテラン世代を食った格好となりましたが、度重なるアクシデントへ冷静に対処していたキョンスに軍配が上がるのは当然といったところでしょうか。本当に安定感が凄かったです。
プロップスで言うと京都はまだまだ早雲の牙城という印象が強かったのですが、新しい世代の台頭を感じさせた一回戦となりました。