カクニケンスケ v.s. 漢 a.k.a GAMI
戦極MC BATTLE 第13章 BEST32 カクニケンスケ v.s. 漢 a.k.a GAMI
今回は戦極MCバトルの13章から、こちらの一戦を取り上げたいと思います。
[カクニケンスケ]
俺はキングオブコメディよりヤバい奴
漢さんの言葉を借りるなら女子高生より光合成してる奴ってことよ
適当なrap アイドルrapだけども
アンタと般若さんのバトルを見て俺は初期衝動で食らって
このまま rap続けてきた甲斐があったよ
理解させてもらいます よろしくお願いします
[漢]
何年前の話してんだ
オメーそれからなんの成功もねぇな
意味がねぇ イリーガルライフだけじゃねぇって何度も言うが
チキンラーメンじゃねぇオマエ自身がチキンなはずだろ
だけどその笑顔 それがカクニ
だったら俺はオマエを速攻でパクリ
してから煙吸ってすぐボコりにしちまう
今日のmicrophone使うGAMI
[カクニケンスケ]
その煙を右から左に回すだけ
回すことはしない…
俺ケムリしなかったごめんなさい嘘つきました
なんてことを適当にやるだけ
ゆらりゆらり乗せてくだけ
この会場中の頭揺らすだけで
それでどうだ漢さん
アンサー返してください兄さん
[漢]
めちゃくちゃやりにくい 相手だけど俺すぐコイツに
ムカつくことに 飛び跳ねるだけじゃねぇぜ
これは本物 MCバトル
地下の格闘技じゃねぇが今日のアイドル
なるのは知らねぇが ドル 稼ぐまで行くぜ
オメーじゃねぇが今日はここで
ぶちかますコイツをすぐ抹殺
概要
8小節2本
勝者: 漢
解説
戦極MC BATTLE 第13章 BEST32 カクニケンスケ v.s. 漢 a.k.a GAMI
今回は戦極MCバトルの13章から、こちらの一戦を取り上げたいと思います。
みんな大好きカクニケンスケの試合です。それにしてもこの組み合わせは楽しすぎますね。
試合は先攻のカクニケンスケから。相変わらず歌い上げるようなフローのrapで「アイドル路線」のカクニですが、過去の漢のリリックから引用したり、HipHopに傾倒したきっかけが漢であるとして「rap続けてきた甲斐があったよ」と言及したり、スタイルウォーズとはまた違う要素をこのバトルへ持ち込んでいきます。
ラストのライン、敬語で「お願いします」と締めくくるのもカクニらしさが出ていますね。
対して後攻の漢。「何年前の話してんだ」と最初から冷淡に受け止め、「それからなんの成功もねぇな」と切り捨てます。
また、漢のrapは意識的に頭韻を入れているのですが、「意味がねぇ」「イリーガルライフ」までは分かりやすいものの、後半の「チキンラーメン」でも結構ハードに踏んでます。さらに後に続くラインでも「自身」「チキン」と合わせていて、全体的にそれなりにハードな押韻で通しているのですが、この辺りは注意深く聞いていないと中々そこまでは気づきにくいかもしれません。
頭韻でグルーヴをつくるにはビートアプローチが大切になってくるのですが、ビートの性質や漢のrapスタイルがそれを見えにくくしてしまっているのかもしれません。個人的に漢のrapは後から気づかされることが結構あってその分楽しめます。
そして試合後半、2バース目。カクニは後半に入って「アイドルrap」にもエンジンがかかり、「その煙を〜」と冒頭から完全にメロディーをつけたフローになっています。
このバースはカクニの本領発揮といったところで、伸びやかで気持ちのいいrapがビートにしっかりとフィットしています。漢が脅しのきいたdisで内容を強調しているのに対して、こちらは後半へいくほど乗り方、グルーウへシフトしていく展開となっています。
また、そんな中でも漢へは積極的に絡んでいて、漢のお家芸とも言える草ネタに乗っかる素振りを見せつつ「俺ケムリしなかった」「ごめんなさい嘘つきました」とうそぶいてみたり、最後には「兄さん」と呼ばわってみたり、結構アグレッシブです。
その様子は次で漢に「めちゃくちゃやりにくい」と言わしめるほど(笑)
ここは会場からも笑いの起きていた一節でしたが、漢にとっては相性最悪の相手と言えるかもしれませんね。
そして後攻はその漢。先ほどの通り「やりにくい」相手としつつも、そこから続く内容は「ムカつくことに 飛び跳ねるだけじゃねぇぜ」「これは本物 MCバトル」と、カクニを認めているようにも受け取れます。これが本当だとしたら漢がこういうスタイルのMCに明確なリスペクトを送るのも珍しいですね。
異色とも言えるこの二人の取り合わせですが、カクニと漢の掛け合いや対話は思いの外スムーズで、ビートを緩衝材に両者特徴のあるrapをぶつけあっていました。見応えあるスタイルウォーズになっています。
そんなバトルでしたが、勝者は漢。カクニは後半からパフォーマンスが上がっていったのに対して、漢の方は終始rapが安定していて、また内容面でもカクニよりも踏み込んでいた印象です。
この辺りはそれぞれのスタイルも影響している他、カクニの方はやや遠慮もあったかもしれません。コワモテのMCを前に萎縮していたと言うよりは、本人が1バース目で言っている通りで、リスペクトから来る配慮と見るべきだと思います。そういえばバトル前にも一礼していましたね。
いずれにせよこの時のカクニはいつもの荒唐無稽さはやや抑えられていた感じで、綺麗にまとまったrapをしていたように感じます。
※ 女子高生より光合成してる奴ってことよ
TV番組「フリースタイルダンジョン」での漢のライン「女子高生と俺は光合成するようなスキルでまずはマイクを持つ」より引用。
※ アンタと般若さんのバトル
B-BOY PARK2002での漢v.s.般若戦