[晋平太]
TK 前の方の客よく見てみろよ
オマエがこんぐらいだった時から俺は知ってるよな
俺もこの辺にいたヤツと大差なかった時からオマエを知ってる
そしてリスペクトし続けてる
心のモヤモヤ 勝ち負けを付けるためのバトル
その オマエの 心の中の闇は晴れたのか
だったら 今日晴らすためにも
全力で俺にぶつけろよ 全部食ってやるよ
[TK da 黒ぶち]
全力でぶつかるにはスキルが足りないってことを
俺はスキルで甲乙つけたいってことをここで証明しに来た
照明は当ててくれよ?
マジでそういう下らない話は要らない
最前列 その他諸々 どうのこうの
ばっか言うやつは航路が見つかってない
そろそろここで白黒つける
これはリベンジじゃない
ナウとナウのぶつかり合い
調子どうだ 今の話をしようぜ
[晋平太]
今ここ オマエの心開くのは今こそ今ここ
これしかねぇのさ
俺はオマエらが見たことねぇことしてんだよ
熱量 オマエ本当に聞くぞ?
本当に俺に言いたいことそれだけなのか?
白黒つけるだ? 諸々だ?
オメーの方がボロボロだ
このボケが命もろともな
[TK da 黒ぶち]
TとK 言いたいことは特にない
無駄な穴を探す暇も無い
リスペクトしか無ぇから言うことは無ぇんだよ
これでどうだ? over the border
俺は自分に素直に行くぜ
バトルで勝ちたいから下らない穴とか見つけるヤツにマジで中指を立てる
本当の言葉を信じてるヤツらにはわかるだろ?
You know what I’m saying? yeah
[晋平太]
俺もオマエの穴なんて一個も探してない
腹だって黒かない わかるだろ?
白か黒かしかない そんなフリースタイルバトルしたかない
俺はそれだったらプロじゃない それでいいぜ?
甘いだろ? だが砂糖はかけてねぇ 加糖でもねぇんだよ
下等じゃねぇ 上等
勝とうじゃねぇか最後まで
俺のマイクは日本刀
[TK da 黒ぶち]
こっからがリアルのrapタイム
俺が好きなのはブラックコーヒー
つまり砂糖は要らない
オマエのrapはしがない司会業に専念しといてくれ
こちら現役で点々…とぶつけるぜ
Yo 言葉のスキルを見せつける
どんなこと言われたって関係無い
こちらブレない視界 持ちながらトライしてく
世の中はドライ K-DUB SHINEの曲だぜ
ぶつけるぜ世の中に
概要
8小節3本
ビート: K DUB SHINE / 機能停止 remix
勝者: なし(延長へ)
解説
戦極MC BATTLE 第10章 一回戦 晋平太 v.s. TK da 黒ぶち
今回は戦極10章からこちらの試合を取り上げたいと思います。
晋平太対TK、一回戦からこの好カードです。
それでは試合の内容を見ていきましょう。まず先攻の晋平太。「この辺にいたヤツと大差なかった時からオマエを知ってる」という語りからスタートします。
このバトルの晋平太は100%メッセージングに振り切っていて、ビートに対して等速で乗せていきますが、まずメッセージが先行して、後からライミングが追いかけいくようなrapを仕掛けていきます。
対して後攻はTK da 黒ぶち。こちらは冒頭から軽快なフローで、ゆったりとしたビートに倍速で言葉を詰め込むいつものスタイルです。
それにしても昔語りで呼びかける晋平太に対して「スキルが足りない」と突っぱねていて、この試合に対する態度が明確に表れていますね。そしてこの構図は中盤以降も続いていきます。
続いて晋平太2バース目。TKの「今の話をしようぜ」に対しては「オマエの心開くのは今こそ今ここ」とアンサー。1バース目から続く「心の闇」談義をはぐらかすTKに対して食い下がります。
ここでもやはりメッセージングが先行していて、バース前半は「俺に言いたいことそれだけなのか?」など相手に対する呼びかけが大半を占めていて、後半に入りようやく押韻のフェーズが訪れます。
ただし相手の言葉を拾った上で組み込んでいくようなライミングで、これがスラスラ出てくる辺りはやはりさすがのスキルです。
そしてそれに対するTK。先ほどの晋平太に対して「言いたいことは特にない」とアンサー。一見するとにべもなくはねつけているように見えますが、実はそうではないことが続くラインで「リスペクトしか無ぇから言うことは無ぇんだよ」と明かしていることから分かります。
さらに次のライン、一瞬溜めをつくって「over the border」と吐いていくシーンがありますが、ここが個人的には大好きです。日ごろ早口で言葉を詰め込むTKが緩急をつけていく瞬間はだいたい良いです。
また、このバース後半は晋平太から仕掛けられた「心の闇」の件に対するストレートなアンサーになっていて、初めて正面から切り返していった感じがします。晋平太に引っ張られるようにメッセージ成分が多くなったという見方もできるかもしれませんね。
それで最後の3バース目。晋平太はもう相手の言葉にアンサーしっ放しで、特に「白か黒かしかない そんなフリースタイルバトルしたかない」なんて TK1バース目のラインに対するものだったりします。
また、先ほど2バース目と同様で、前半がアンサー、後半が前半からの流れを踏まえつつのライミングという構成になっていますが、押韻はシンプルながら非常に即興性の高い展開になっています。晋平太なら完全にトップオブザヘッドでやっていてもおかしくはないですね。
対して後攻のTK3バース目。冒頭の「こっからがリアルのrapタイム」というラインですが、これはおそらく晋平太がメッセージングからスキルへシフトしたことを受けてのものではないかと思います。TKの土俵に変わってきた、という感じですね。
そして続くアンサーもまた強めの内容で、「甘くてもいい」という晋平太に対して「ブラックコーヒー」のラインで一線を画した上で、「司会業に専念しといてくれ」と突き放していくわけです。
2バース目にメッセージング(晋平太へのアンサー)に注力していた分、この3バース目は試合冒頭と同様のフローで、リズムを取り戻しているという印象があります。内容が薄まりつつも、その分言葉一つ一つが跳ねるようなrapで、これぐらいのバトルであればこちらの方がしっくり来ますね。
この試合の結果は延長。お互いにdisやアンサーをやりとりしつつも、正面から攻撃し合うという感じではなく、定められたテーマに沿って問答をしていたような感じでしょうか。もっとノリのいいビートでもう一戦見たいと思っていたところ、これはいいジャッジだと思います。