輪入道 v.s. JAKE
UMB2017 TCIY BEST32 輪入道 v.s. JAKE
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
[輪入道]
長渕剛の名前出す以上
俺は死ぬ気でやることやるだけ
鎖とLIBRAモメてて残念
それより俺はrapやり足んねぇ
KoKからUMB
度胸試し 見せてくぜ腕っ節
鳥取のJAKE準備はいいか?
ZEPP TOKYO 調子はどうだ?
[JAKE]
平日月曜からケンカを見に来る
コイツら俺よりジャンキー
ハッ 晋平太よりもJAKEはファンキー
輪入道 そんなしがらみの話なんていいんだよ
大阪で初めて オマエのLIVEで見せた
あの目のギラつきをもう一度見せな
[輪入道]
見せてやるぜ目のギラつき
そりゃ大阪やオメーの地元じゃ関係ねぇだろうな
でもここがどこだか分かってんだろうな?
俺が尖った牙 舌 見えてんだろうな?
この街にはある様々なしまがり
しがらみ 仕方ない
ちょっと噛んだ かもしんねぇが
お客さんは絶対ほっとかんな
見せてやるぜ これが東京アンダー
[JAKE]
最近の若手とは違う
俺たちはスルメだ 酒によく合う
噛めば噛むほどに味が出るぜ
しっかりバッチリ耳に突き刺す
Yo わざわざ仕事休んで鳥取から二日間も来とるやせんけぇの
BEST4まで残って LIVEをいただく
輪入道 ここで負けて頂く
[輪入道]
そうだったオマエは 俺とタメ年
昼間の仕事では俺より金持ち
だけど俺はマイク これだけでいい
首は縦ノリ ぶち壊すカテゴリー
全員酒飲み それをアテにし
今でも大事にする心の縁(えにし)
中国地方?
だけどオマエ広島の司会者に気合い負けてんぞ
[JAKE]
広島 中国 中国地方
誰でもぶっ飛ぶ中毒仕様
注目しろ 俺はぶっとく芯通していこう
Yo 俺と同い年
オマエとふぁんくぐらいだぜ
俺がしっかりと目を掛けてんのは
バチバチで来い まだまだやり足んねぇな
概要
8小節3本
勝者: なし(延長へ)
解説
UMB2017 TCIY BEST32 輪入道 v.s. JAKE
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
JAKE対輪入道。並み居る有名MCの中で地方を背負って立つMCは個人的にとても応援してます。
それではバトルの内容をみていきます。
先攻は輪入道から。「鎖とLIBRAモメてて残念」とLIBRAにとってタブーなのか微妙な話題を冒頭から投下。
いきなりブッ込んだ格好ですが、「それより俺はrapやり足んねぇ」と続けているところからも、輪入道としてはどちらの派閥につくとかではなく、いち個人としての偽らざる心情なのだと思います。個々のMCとしては大きな大会への出場チャンスが増えれば増えただけメリットになるので、これは分かる気がしますね。
その後は力を込めつつも一語一語確かめるようにじっくりとrapを継いでいく感じで、対戦相手のJAKEやオーディエンスに語りかけるシリアスな印象のバースになっています。
続いて後攻のJAKE。「平日月曜からケンカを見に来る コイツら俺よりジャンキー」と多少皮肉のきいた内容でアンサー。いわゆる「客いじり」というヤツですが、ブラックな感じでいいですね。
そして輪入道に対しては「そんなしがらみの話なんていいんだよ」と切り返した上、「あの目のギラつきをもう一度見せな」と煽り立てていきます。
対して輪入道の2本目。しがらみのくだりに対して「そりゃ大阪やオメーの地元じゃ関係ねぇだろうな」と受けた上、「でもここがどこだか分かってんだろうな?」とアンサー。シーンにおける東京という街の特性を話題に打ち返していきます。
輪入道の千葉出身なのでrepする地元があるという点ではJAKE同様ですが、やはり首都圏は日常の移動圏内に東京が含まれるため、1都3県とそれ以外とではその辺りの感覚が異なる感じでしょうか。最後の「見せてやるぜ これが東京アンダー」という部分からも伺える通りで、純粋な地方MCと比較するとそのrepを意識する範囲に微妙があるようですね。
ちなみにこのバース中、噛んでしまった後にすぐさま軌道修正して「ちょっと噛んだ」から「ほっとかんな」へつなげてラストできれいに着地まで持っていったりした辺りはさすがですね。完全即興のMCならではの強みが出ている感じです。
対してJAKE。こちらは話題を切り替えて「最近の若手とは違う」と切り出し、「俺たちはスルメだ 酒によく合う」などひねりの利いた内容を展開。「噛めば噛むほどに味が出るぜ」なんて上手いこと言ってますね。
ライミングやフローなどスキルの側面でもなく、また純粋なユーモア・笑いでもなく、言葉の意味や内容の上で「面白い」と思えるrapで、このJAKEもそうですが、有名なところだと早雲やR-指定辺りがこうした点にこだわりを持っている感じだと思います。たしかに関西のMCが多く思い当たるのは土地柄というような気がしますね。
そして次、「わざわざ仕事休んで鳥取から二日間も来とるやせんけぇの」というラインなのですが、ご覧の通りお国言葉がそのまんま出ていて、これが非常にカッコいいです。聞き取りやすく、また意味も取りやすいながらも混じりっ気の無い完全な方言という感じで、私は関東の人間ですがとてもアガりました(笑)
このライン、鳥取にゆかりのある方々は私なんかよりももっとブチ上がったのではないでしょうか。
続く輪入道3本目、最後のバースです。ここでの輪入道は非常に綺麗なライミング対応のrapへシフトしていますが、実に全体の4分の3ほどは小節ごと細かく押韻を挟んできます。
また、内容で見ても「最近の若手とは違う」というJAKEのラインに反応した「オマエは俺とタメ年」から始まり、共通点から相違点へ移る「俺より金持ち」、続いて「俺はマイク これだけでいい」より自身のアティテュードへ話題を戻して「カテゴリー」のまで連続したライミング。
さらに前バースの内容を受けた「酒飲み」のくだりから最後のメッセージングまでスムーズにまとめていて、ライミングと連動するように内容面でも相手へのアンサーがバランスよく配置されていることがわかります。もちろん文脈上まったく破綻しておらず、前後関係で見ても非常にスムーズです。
ここにきてかなりのクオリティのバースになってます。輪入道というと「売りことばに買いことば」を地で行くような、ケンカ腰のスタイルという印象が先行するMCではないかと思いますが、こういうことやらせても相当に上手いですね。この一連の流れで一気に試合のペースを掴んでいったのでは無いかと思います。
そして後攻JAKEの3バース目。「中国地方」「中毒仕様」とこちらもストレートにアンサーする中、ライミングをうまく交えて対応していきます。
さらにJAKEの口から出てきたのは、注目しているMCがこの対戦相手の輪入道と大阪梅田のふぁんくぐらいだというもので、この二人をJAKEが推す理由はもちろん頷けるのですが、それぞれまったくスタイル・タイプが異なるMCなので、この両名が同列に並ぶとなんだか意外な気もします。
それにしても私はこの「目をかける」という表現にJAKEのいかにもなキャラクター、彼らしさを感じてしまいます。「気を配る」でも「動向を追う」でもなく「目をかける」としているのですが、純粋にキャリアや戦績だけで見るとビッグマウスになりかねない表現でありながら、まったく嫌味を感じさせないのはJAKEのキャラやパーソナリティーのなせる技といったところでしょうか。
ラストの「バチバチで来い」のくだりまで、輪入道に気圧されずに言いたいことをしっかり言えてバースを終えている印象でした。
結果的に今回のバトルでは決着がつかず引き分けとなるのですが、どちらも、特に後攻のJAKEはまだまだ燃え足りてない感じが出ていて、判定が出る前から「これは延長かな」と思えるような展開、終わり方になっていたのではないかと思います。
総じて、とりもなおさずこの試合での両者の攻防は本当に素晴らしく、JAKEのウィットのあるパンチラインの数々に対して輪入道の懐の深いrapスタイルとメッセージング、それぞれにいい味を出しながら激突していたというのが全体通しての印象でした。素晴らしい一戦であることは間違いないでしょう。
JAKEの言う通り「噛めば噛むほどに味が出る」ようなスルメバトルだと思います。ぜひお酒を片手に映像をご覧ください(笑)
そしてこの後に続く延長戦の模様は以下のリンクからどうぞ。
[UMB2017 TCIY] JAKE v.s. 輪入道 延長
※ 広島の司会者
DOUGH BOY。広島出身のMCで、前年の晋平太に代わり大会の司会を務める。
※ ふぁんく
大阪出身のMCで、UMB2014,2016大会のファイナリスト。同大会にも選出され出場。
いつも見させていただいています!
「ぶっとく侵攻していこう」→「ぶっとく芯通していこう」ではないでしょうか。
違ったらすいません。
> かきぴー さん
コメントありがとうございます!
こちらはそうですね、頂いた内容の方が適っているかと思いますので修正させてもらいました!感謝です!