ハハノシキュウ v.s. NONKEY
戦極MC BATTLE 第10章 ハハノシキュウ v.s. NONKEY 延長
今回は戦極10章からこちらの戦いを取り上げたいと思います。
前回の試合から続く延長戦となります。延長前の試合は以下のリンクからご覧ください。
[ハハノシキュウ]
最近のバトルMC みんな控え室で仲良すぎなんだよ
ふざけんなボケ
何が「リスペクト リスペクト」
キナ臭ぇだけなんだよ
disリスペクトが無えとつまんねんだよ
オメーら全員に アスベスト てめーも含めて全員に言ってる
マジで殺してやるからな
だからこの後控え室が気まずくなっても俺には関係ねぇ
Yo 来いよデブ
[NONKEY]
「面白い/面白くない」 で俺たちrapやってない
仲が良いから仲が良い
仲悪いから仲が悪い
ただそれが当たり前 さっき自分で言ってた「なにがリアル?」
仲が良いから仲が良い
仲が悪いから仲が悪い
[ハハノシキュウ]
肩慣らし バカならしい 仲違い
バカじゃない?
ホントに君と仲良くなりたいって思ってんだけど
それ言えないからここで言いてぇんだけど
そういう言い分で異文化と言い分がイーブンになるまで1分間しゃべってよボケ
[NONKEY]
Yo だったら正直に言わねぇと吸い込むぞ掃除機
分かるだろ? 正面から
分かるだろ? 少年方
Yo 俺たち大人はまっすぐなヤツらを受け止めてぇんだ
ねじ曲がったその言い方
まぁでもそれも時代だ いいかな
[ハハノシキュウ]
これからrap始めるヤツ ねじ曲がってるヤツは僕のとこに来い
コイツには行くなよ絶対に
マジふざけんなよ 接待にもなんねぇから
絶対に勝てるってここで言っておくわボケ
この場所でどんな風にやるか知らねぇけど
とりあえずさっきから 語尾だけなんだよ
もみあげなんだよ お土産要らねぇんだよ
だから東京バナナ食って帰るわ
[NONKEY]
2回目 3回目
これで君も惨敗です
俺もここでラフでいきます
だってビートは RG力学
Yo ラッパ我リヤ
俺の語尾であったまりな
Yo これがベテラン勢
飛んどけオマエはテヘランへ
概要
8小節3本
ビート: ラッパ我リヤ / RG力学
勝者: ハハノシキュウ
解説
戦極MC BATTLE 第10章 ハハノシキュウ v.s. NONKEY
今回は戦極10章からこちらの一線を取り上げたいと思います。
ご覧の通り、この組み合わせです。もう何が起こるか分からない感じですね(笑)
まず先攻はハハノシキュウ。「最近のバトルMC みんな控え室で仲良すぎなんだよ」といきなりの爆弾投下(笑)
オーディエンスではなくどうも本当に出場MCの面々へぶちまけているようで、客席に背を向け真後ろを向いたまま吐き出していきます。
このファーストバースは内容が本当に尖っていて、「何が”リスペクト リスペクト” キナ臭ぇだけなんだよ」「マジで殺してやるからな」など、痛烈にシーンの馴れ合いをdisり倒していて、ある意味清々しいくらいの暴言の数々が飛び出します。
「この後控え室が気まずくなっても俺には関係ねぇ」と、多少笑いを誘うラインも混ざる辺りはやはりハハノシキュウですが、テンションそのものは決しておふざけで言っているようには聞こえず、どこまで本気なのか全く分からないなんとも彼らしいバースになっています。
そして最後の「来いよデブ」が着地。ここに来てようやく対戦相手への言葉が出てきました(笑)
キャラクター全開のまま尖り切った素晴らしいバースだと個人的には感じます。
対して後攻のNONKEY。「(バックステージを指して)仲が良いから仲が良い」「(ハハノシキュウを指して)仲悪いから仲が悪い」とアンサー。駄々をこねる子供を諭すような説得的な調子で淡々と反論していく感じでしょうか。
こちらも冷静さの裏で微妙にすっとぼけた調子が感じが取れる面白いrapで、主張としては一貫しているものの、最後の2小節丸ごとの繰り返しに至るまでいかにもNONKEYらしい内容が展開されていきます。
ここまでそれぞれにキャラクターを出しつつの論戦になっていて、流れは五分という感じでしょうか。キャラの立つMCはそれだけで強いということがこの二人を見てると本当によく分かります。
対してハハノシキュウ。今度は打って変わって最初と最後にライミングだけでつないだラインを見せたり、1バース目とはまったく異なる構成のrapを見せていきます。
また、「仲が悪い」と突き放されたラインに対しては「ホントに君と仲良くなりたいって思ってんだけど」と意表を突いたアンサーで対応。この辺りも個性が非常に出ている部分だと思いますが、さっきあれだけdisり散らしてたと思ったら次のバースでこれです(笑)次に何を言ってくるかまったく読めないようなところが彼の魅力のひとつではないかと思います。
続いてNONKEYは後攻2本目。ハハノシキュウに呼応するように「正面から」「少年方」などこちらもライミングの多用が目立つようになりました。
ただしハハノシキュウが1小節内でできるだけ韻を詰め込む構成なのに対して、NONKEYの方はオンビートでゆったり小節を使った脚韻という非常にシンプルでオーソドックスなスタイルなので、そこの対比は面白いですね。
テンションもrapの内容も終始起伏を抑えた平板なもので、「ねじ曲がったその言い方」など相手へのメッセージングも攻撃というよりは大人が子供を扱うような、一段上から余裕に構えたというような雰囲気があります。そういえばこの試合、最初からそんな感じでしたね(笑)
そして最後3本目。「これからrap始めるヤツ ねじ曲がってるヤツは僕のとこに来い」とハハノシキュウはアンサーの矛先をオーディエンスへ向けます。「コイツ(NONKEY)には行くなよ絶対に」とのラインはなんとなく分かる気がしますね(笑)
そこから「語尾だけなんだよ」とdisを入れていくわけなのですが、「もみあげなんだよ お土産要らねぇんだよ」と延長前のバトルの内容を絡めていくオマケつきです。
もうそれなりに時間が経っているのですが、それでもアンサーとして成立しているのはやはりNONKEYのパフォーマンスがそれだけ強烈なインパクトを残しているからなのでしょう。
ラストの「東京バナナ食って帰るわ」も吐き捨てるような言い方になっていますが、それが逆に彼らしくて笑いを誘います。
ハハノシキュウの表現やスタイルを一言でいうならば「真面目を装ってメチャクチャにふざけ倒す」という感じになるでしょうか。とにかく相手が突かれたくないところをしきりに突きにいくような、そんな殺傷能力の高い遊びをしているような感じです。
そして最後NONKEY。「3回目」「惨敗です」や「ラフでいきます」「RG力学」など、オーソドックスながら通りがよくインパクトのあるrapが続きます。
ちなみに続く「俺の語尾であったまりな」は本家のサンプリングで、楽曲のタイトルとしても存在するラッパ我リヤのルーティーンになってます。なのでサンプリングというよりはオマージュに近いでしょうか。
ビートに触れたのはこの3バース目にきてようやくとなりましたが、「これがベテラン勢」という言葉通り、多角的な視点を内容に落とし込んで幅広い内容でrapしていたのはNONKEYの方だった印象がありますね。
そんな感じのバトルでしたが、勝ったのはハハノシキュウ。この異種格闘技戦のような組み合わせの中で内容もフローも余裕を見せつつ優位に立とうとしたNONKEYに対して、ハハノシキュウは終始まくしたてるように鋭い言葉をぶつけ続けていた印象でした。
また、大人びたテンションのNONKEYと比較して多少子供じみた側面が強調されていた感はあるものの、内面をストレートに言葉にしてそのまま対戦相手へぶつけていたハハノシキュウの方が多くの支持を集めた、という見方もできるかもしれません。決して素直と言えるようなスタイル・内容ではありませんが(笑)