[R-指定]
Yo ビートでは逃げない
しっかりと魂のぶつかり合いがしたい
なぁ 本選で何度だって戦うチャンスはあったのに今日が初めてだぜ
なぁ 輪入さん いろいろあって戦えなかったが今日
せっかくのチャンス 魂のぶつかり合いとやら
アンタの言葉の重みを見せつけてくれや
[輪入道]
まずは絶対オマエはネタ仕込んで
来ると思ったけど意外と意気込んでる
OK いいね そのバイブスのままやろうぜ
俺だってオマエのことぶっ殺したかったぜ
Yeah ライブやった後なのに
コイツ全然声枯れてねぇ バイブス足んねぇ
マイク掴んで なにが言いてぇ
それをちゃんと最後に伝えるのはどっちか
見極めてくれ
[R-指定]
声が枯れてないのは サイファーで毎晩
朝までrapしてる 体力が違うな
Yo LIVE いつもフリースタイルか知らんが
俺は生きてる間いつもフリースタイル
脳みそ 回して LIVE出る 包囲網
このままABC包囲網で包もう
どこまでいったって ネタ仕込むわけねぇ
去年の決勝見てたら分かるやろ
[輪入道]
いやぁ 観てねぇから分かんねぇんだよな
オマエがネタどれぐらい仕込んで来たのか それは見えてねぇ
俺はオマエがネタが仕込んでねぇことよりも
やはりこの瞬間ここでぶつかり合えたことが嬉しいね
ABCD包囲網ならばイギリスとドイツとあとどの辺だって
アタマ悪い奴らばっかりだけど Japaneseは間違いないぜ
それだけは言えるよ
今日この場にいる白人も黒人も日本語でブッ飛びな
[R-指定]
肌の色なんて関係ないぜ
俺は肌の色気にしないぜ
パラサイト 未だ 実家に帰省中
だがこのビートの上乗らした観客をstay tune
Yo いまだ伐採中 ダサいチューンなんて要らない ここにはな
そう 俺らは日本人 ジパングの刀
日本刀 斬り回す 島人ぬ宝
[輪入道]
島人ぬ宝ならば沖縄だけどオマエはおいたが少々過ぎたようだな
俺を本気にさせたな
オマエはハゲタカのようにあっという間に食い尽くされちまう
カネが無いころから俺はずっとストリート上がりだ
オマエが歩道橋の上でサイファーしてその脳の強さを磨いてる間に俺は橋の下でバカにされ続けた
Fuck you そういうところから成り上がるHipHop
だけど実力の差は一目りょう然
[R-指定]
狙う俺 異端児 from 堺市
橋の上 俺にとっちゃ
ストリートは歩道橋 ストリートは歩道橋
アンタにとっちゃ 血なまぐさい現場がストリートかもしれんが
俺はステージ ビートの上 そして歩道橋
アンタらの鼓膜の中が俺にとっちゃ
Rapを表現する場所だったんだよ
[輪入道]
間違いねぇな お互い表現する場所が違かろうが
それでも今はここだろうが
ちゃんと見てやれ 俺はオマエのことを見せかけ
じゃねぇってわかってるけどこの瞬間生贄だぜ
決めてやるぜ一発の進撃
オマエよりも奇跡的なライミングの刺激
暴力一回でも俺が口に出したことあるか?
俺はいつもやってる 手のひらで転がすさ
概要
8小節4本
ビート: Nitro Microphone Underground / Nitro Microphone Underground
勝者: なし(延長へ)
解説
ADRENALINE MC BATTLE 2014 R-指定 v.s. 輪入道
今回はADRENALINE2014大会からこちらの一戦を紹介します。
R-指定対輪入道。超有名MC同士の対戦で、バトル中にも言及されていますが意外にも両者が対戦するのはこの時が初めてだったようですね。
それでは内容を見ていきましょう。
まず先攻はR-指定。輪入道のスタイルやキャラクターに合わせて「魂のぶつかり合いがしたい」と言うところからスタートします。
先攻としては穏当な内容で、「言葉の重みを見せつけてくれや」と相手を煽り立ててバースを終えます。
そして後攻の輪入道。「絶対ネタ仕込んで来ると思ったけど意外と意気込んでる」と印象を率直に語っています。初対戦らしい微妙な距離感の中でやり取りしてる感じがいいですね。互いに相手の実力は嫌というほどわかっているはずです。
そして大人しめなテンションの輪入道でしたが、途中から一気にエンジンがかかり、あのバイブスを全開にしたガナり声で「俺だってオマエのことぶっ殺したかったぜ」とスピットしていきました。
ここの落差は個人的に非常によかったと思います。この瞬間から一気にバトルが熱を帯び始めたんではないでしょうか。
また、続けざまに「ライブやった後なのに声枯れてねぇ」とdisを入れつつ、最後にはオーディエンスの方を向いて「見極めてくれ」と落ち着いたトーンで問いかけてバースを終えます。
メッセージやテンションにメリハリがあり、動きのあるバースで非常にバラエティに富んだ1バース目になってます。
対してR-指定の2バース目です。「声が枯れてないのはサイファーで毎晩鍛えてるから」とすかさず輪入道へアンサーを入れていきます。これは説得力がありますね。
そして次のライン。輪入道はLIVEでフリースタイルによるパフォーマンスをすることで有名ですが、それを引き合いに出した上で「俺は生きてる間いつもフリースタイル」とそこへパンチラインを見事にかぶせている訳ですね。ここは本当に上手いですね。
そこから立て続けのライミングで勢いを持続させ、「去年のUMB決勝を見てたらネタ仕込んでないのはわかるだろ」と、内容面でもクオリティを保ったスキの無いバースになっています。
続いて後攻の輪入道。こちらは通して相手のバースの内容を受けた上での切り返しになっていて、全編にわたってアンサーを含んだバースになっています。
「この瞬間ぶつかり合えたことが嬉しいね」と熱の入ったラインで応答したり、「ABCD包囲網ならば・・・」というくだりから「白人も黒人も日本語でブッ飛びな」と、キレイにまとめたアンサーを繰り出したりして、かなり冴え渡ってますね。
そしてこの辺りからアンサーの撃ち合いがさらに激しさを増しており、続くR-指定が「肌の色気にしないぜ」というラインから「帰省中」「stay tune」と見事にライミングで切り返せば、輪入道は「島人ぬ宝ならば」から続くラインで小節を区切らず一息にスピットしていくラインで観客を沸き立たせるなど、双方見どころのあるrapを展開しています。
それらの中でもいくつか挙げるとすると、輪入道3バース目の「オマエが歩道橋の上でサイファーしてその脳の強さを磨いてる間に俺は橋の下でバカにされ続けた」という長めの一節だったり、4バース目R-指定の「橋の下じゃなく橋の上から大阪維新」というウィットの効いたラインだったり、どちらも余すところなくスキルの詰まったrapをしていて、もう本当にレベル高すぎます。
どちらも単に言葉が遊びに秀でてるだけではなく、しっかり対戦相手の背景やバトルの文脈、オーディエンスの理解度など、その他諸々の要素を踏まえた上で最も効果的にパンチラインが際立つようにバースを構成していて、その点には目を見張ります。ただただ驚かされるばかりですね。
それでいてバトル全体を通して対話の文脈はしっかりしていて、最後の表現者としてのメンタリティに関する話題まで双方でシェアする中メッセージを交わし合っているので、対話の体裁が保たれた中でrapスキルのコンペティションが繰り広げられていた印象です。相当レベルの高い戦いになってる感じです。
そんな素晴らしいバトルでしたが、勝敗は決着つかず延長。試合の行方は延長戦へと託されます。
どちらもバイブスを高く保ちつつ、随所に気の利いたラインを吐いたり技巧的な点でも素晴らしく、甲乙つけがたい一戦だったと思います。
ちなみに本大会ADRENALINE2014は、R-指定が化け物じみたパフォーマンスを出していたことで有名だと思いますが、それに食い下がった輪入道もめちゃくちゃカッコイイrapをしていました。強い上に巧く、そして熱い。そんな輪入道が見られた個人的には非常にお気に入りの一戦です。
この試合はバトル好きの方には是非一度見てもらいたい一戦だと思います!
※ 去年の決勝
UMB2013本選大会での決勝戦のこと。相手のDOTAMAと再延長に及ぶ死闘を演じた。
[UMB2013] DOTAMA v.s. R指定
※ ABCD包囲網
戦中に日本に対して行われた経済封鎖の呼称。アメリカ、イギリス、中国、オランダそれぞれの頭文字から来ている。
※ 島人ぬ宝
BEGIN / 島人ぬ宝
※ 橋の下じゃなく橋の上から大阪維新
悲惨な境遇の象徴としての「橋の下」と対比する形で梅田歩道橋を「橋の上」と表現しつつ、政治団体「大阪維新の会」の代表を務めた当時の大阪市長 橋下徹を掛けたダブルミーニングになっている。