[DOTAMA]
Yeah 戦極MC BATTLE
一回戦 HIDAさん
Yeah 去年の年末ぶり
あの雪辱は返させて頂きます
アンタに送るdeath ここで死ぬ
アンタ夜神月
俺が書いた名前で
アンタは1週間後即死
するから言っとくぜ
俺は牧師 じゃない
俺は無ぇよdream
だって今日ここで実現させてやる
コイツをぶっ殺すことが夢
Yeah 俺は有言実行のMC
[HIDADDY]
有言実行言ってまたそんなんかな
前にも戦った時言うたけど
いちいち眠たい ライムとネクタイ
無いからおもんないぜマジ俺なら
まず boy 見たらそう顎ひげ
これをイジれよ もっとアホ言え
だからいつも 背広 背広
背広のヘビロ? 嫌いだバビロン
[DOTAMA]
Yeah 顎ひげ?
イジれとか言ってる
この人ダセェ ハイごめん
クソなラッパー
これが大阪チャンプの成れの果て
マイク持ってんの誰のため?
Yeah このクソなMC 鳴れよ鐘
Yeah オマエつーかここで
Yo 敗けろハゲ
Yeah つーかマジで見た目浮浪者
俺の方がはるかに上手く
EMINEMみたくフローします
[HIDADDY]
Yo 昔 過去の話?
こんな関係ないぜ 今カッコええ方
過去の栄光? マジで関係ない
今日の勝負に一切関係ない
だから何度も言っとくけどな
孫悟空 戦極 損得じゃないよ
損得ない そん時のバイブスで
思いっきり勝負するMCバトルだろ?
[DOTAMA]
Yeah HIDAさん
アンタ 俺より先輩だけど
戦極MC BATTLEでぶちかますぜ
アンタの頭にゲンコツ
Yeah おめー 過去の話すんなって
アンタ自分で持ち出してんじゃん
Yeah 顎ひげdisるとか
つーかやっぱ見た目この人
貧乏人 Yeah そんなハッキリ言って
俺マジ 貧相に rapしてるわけじゃねぇ
こんなスタイルだからはるかに苦労人
やってるぜ でもrapの修行は黒帯
Yeah 持ってるこのマスタースキル
でコイツを叩き潰す
[HIDADDY]
Yeah 帯が黒?
でももちろん 飛びなフロー
俺 トビがプロ
だからハイになるまで
灰になる葉で
這い上がるハゲ
ハゲ? でもあるぜ
俺髪はフサフサ
Hey yo 吸わない草
でも憂さ晴らしか?
だけども無視か
だけどもオマエとバビロンと背広がキラい
概要
8小節3本
ビート: Eminem / Rap God
勝者: DOTAMA
解説
戦極MC BATTLE 第9章 一回戦 HIDADDY v.s. DOTAMA
本大会一回戦の第一試合となります。一回戦からこのカードです。なんとももったいない。
それでは早速内容をみていきましょう。まずは先攻のDOTAMA、一本目。
冒頭の2小節はこのバトルの位置付けを説明することに費やしていて、彼にとってこの組み合わせがリベンジマッチであることを提示。ゼロから話題を作り出すのが巧いです。
後半にはマンガネタからキング牧師まで、話題が慌ただしく横すべりさせていきますが、「”I have a dream?”」「コイツをぶっ殺すことが夢」のあたりなど、ただやみくもに言葉を並べるのではなくしっかり自分のメッセージで着地させています。
続いて後攻のHIDADDY。「有言実行言ってまたそんなんかな」とDOTAMAの言葉を拾うところからですが、その後の「いちいち眠たい」からのラインはビートアプローチも完璧。この乗り方とライミングは個人的にとてもアガりました。上手いです。
また、終盤の「背広のヘビロ?」の部分も切れ目のないスムーズなライミングに加えて相手のDOTAMAに対して内容もバッチリはまっているラインで、これ以上望めないくらいにクオリティの高い渾身の1バース目だったのではないかと思います。
そして2バース目、先攻はDOTAMA。見た目をイジれというHIDAに対して、「大阪チャンプの成れの果て」「マイク持ってんの誰のため?」とキレイな押韻も交えた手痛いdisを加えていきます。
ちなみに、邪推になってしまいますが、UMB2013終了後という時期から言ってもこのラインは対R指定用に準備していたネタだったのかもしれません。ただしHIDAを相手に、繰り出したタイミングとしてはかなりスッキリ収まっていてバッチリでした。
そしてここから一気にヒートアップして「敗けろハゲ」までバイブスの高い怒涛のラインが続きます。
最後は一転、コミカルな調子で「EMINEMみたくフローしまーす」と笑を誘うラインで着地、話題も駆使するスキルもテンションもかなりスクランブルで目まぐるしいバースとなっていました。
対する後攻のHIDADDY。「大阪チャンプの成れ果て」とのdisに対して、過去の話は今日のバトルに関係ない、と至極まっとうな切り返しで応戦します。
もちろん随所にライミングしつつで、特にバースの後半では「戦極」「損得」など、ひとしきり踏んだ後で、「そん時のバイブスで勝負するMCバトルだろ?」というラインでスムーズに着地。ライミングも前後の文脈も含めてとても素晴らしいパンチラインだと思います。
勝つために何でも使ってくるDOTAMAと比べるとその「キレイな」rapスキルがいっそう際立ちます。
そして最後、3バース目です。
この3本目はどちらのMCもこれまでのスタイルを継続して、DOTAMAは小節の最後に押韻を入れつつ、HIDAの揚げ足をとるラインを見せたり見た目をdisったり、多彩な内容で引き続き攻め立てていきます。
それでも終盤には「苦労人」から「黒帯」、そして最後に「叩き潰す」と着地までの流れはかなりよくまとまっていました。
対するHIDAの方もこれまで同様で、ライムとフローの均整がとれた、スキルで魅せていく非常にキレイなrapになっています。さらに冒頭は「帯が黒?」と、相手の言葉を拾ったところからスタートしていて、スムーズに自分のペースへ移行していたのが印象的です。
また、ラストには「オマエとバビロンと背広がキラい」と1バース目で自ら言ったラインを持ち出して、こちら、オーディエンスに強く印象付けるような構造上もキレイな着地になっていました。
どちらも相手の言葉を継ぎつつ、対話をしつつで、しかもrapスタイルは少しもブレさせないで最後まで戦いを継続していた流れとなりました。
そんな拮抗した流れのバトルでしたが、結果としては客判定によりDOTAMAの勝利に。
両者トドメとなるような一撃はなかったものの、全体通してみると試合の流れを掌握する、という意味ではDOTAMAの方がわずかに上回っていたということになるでしょうか。
※ 去年の年末ぶり
おそらく前年の12/3に行われたSpotlightのことだと思われる。
※ 夜神月
マンガ『DEATH NOTE』の主人公。
※ “I have a dream”
キング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)による演説の有名な一節。アメリカ公民権運動に大きな影響を与えた。
※ バビロン
ここでは体制側の権力、程度の意味。
※ EMINEM
USのラッパー。本バトルのビートに採用されていることから。