崇勲 v.s. GADORO
KING OF KINGS2015 準決勝 崇勲 v.s. GADORO
今回はKOK2015からこちらの一戦を取り上げたいと思います。
[崇勲]
どうやらフリースタイルの神ってやつは
俺の方についてるみたい
この顔もすべて武器
ヒヨッ子のルーキー引っ込んどきな
まだ4小節 数えられないの残念だな
ここ準決勝だよ? 分かってないの?
Twitterの人気投票だとか
くだらん賭け 失せて
この手で打ち砕け
[GADORO]
オマエがフリースタイルの神さま?
一体オマエは何様?
コイツがバトルのあり方
オマエに言ってやるよmotherfucker
まだまだヘタクソなrapばっか
この場で言葉をしっかり爆破
Yo 顔がデカい
こんなおデブちゃんには憧れない
bitch ついてこう
この場でバッチリやっていこう
数えてやるよ 顔のクレーター
コイツぶっ飛ばすまるでズレータ
はぁ そんな感じだぜ
コイツと比べて俺はスレンダー
上には上がいるんだ
microphoneがあるから変えてぇんだ
[崇勲]
上には上がいることなんか知ってるさ
クレーター? 月面着陸 アポロ
アホの LIVEなんか聞く必要ない
こっちの方が宇宙飛行
Night Flight高いとこまで
行こうかってとこだ
どっちがハードコア?
コアなところ 扉開くのはこっちのドア
ドアノブ手かけてんのは俺の方
Microphone 一発GADORO
適当な韻ばっか並べやがって
家で考えてきたことばっか
そんなんで勝てると思うな
[GADORO]
Yeah おウチじゃ考えねぇ
バッチリ言葉でガンタレ
かましてやるから
オマエの言葉 ガッチリ聞きたいな
自分なりの気持ちを伝える
田舎もんのバッチリ背負ってる
オマエと違って都会人には
絶対負けられねぇ理由がある
そういうところをrep
オマエに付けてやる点数
だったら赤点
宮崎田舎もんがback again
絶対信念は揺るがねぇ
コイツに負けるクズじゃねぇ
コイツのrapってクズじゃね?
[崇勲]
赤点上等 そっから勉強して
這い上がるのもHipHop
ってことをちゃんと勉強しろ
点数なんか気にしてねぇよ
どうせ 赤点
どっちが連想
振り切ってるメーター
メーターやべぇなどっちの方が
分からせようか
宮崎なんだかんだ
俺だって 田舎をレペゼン
してるぜ 背負ってるもんがあるって
うってつけのライムオマエに食らわせようか
ようか オマエは妖怪のように
オマエに食らわすわ
[GADORO]
食らわせようか
じゃないよマスターヨーダ
ばりにオマエを殺してやろうか?
オマエは立っとけ廊下
バケツ持って立っときな
オマエのライムがアンモニア?
知らねぇ オマエはくっさいくっさい
まるで マンコ以下 bitch motherfucker
興味がねぇ さっさとこの場で死んでくれ
GADOROが踏んでる韻ってスゲー
オマエにバッチリ斬りつけるだろ
ザコ この場でカット
してやる首チョンパ
オマエが勝つのは無理そうだ
[崇勲]
次だって来るぜ Yo 何回だって
何回だって挑戦するぜ
マンコ臭いとかなんだかんだ言ってるぜ
Yo マンコ以下? 知ったこっちゃねぇな
マンコの臭い 臭くない女だって
いることもちゃんと分かれ
オマエは女をここで軽蔑しちまってるってことだ
男女平等 分かってないの
堂々 公共 新宿中央
こっちのフリースタイルがかなりスゴいの
[GADORO]
今夜に150万俺がいただく
バッチリこの場でやる
俺にはオリジナルトラックがひとつもねぇ
オマエとは違うぜ
俺は底辺から這い上がってるMC
それ分からせる
オマエは黙らせる
バッチリこの場でつないでこう
どうか運命 負けちゃう寸前
ポッケの中身は10円
そんだけしかねぇんだ
俺にはぶっちゃけカネもねぇんだ
彼女から 現金50万円借りてる
motherfucker
概要
8小節4本
ビート: オリジナル
勝者: なし(延長へ)
解説
KING OF KINGS2015 準決勝 崇勲 v.s. GADORO
2015年のKOKからこちらの対戦を取り上げたいと思います。埼玉の崇勲に対して宮崎のGADOROです。
まず先攻は崇勲。ちなみに序盤の「この顔もすべて武器」は個人的にかなり食らったラインです。
こんなの崇勲に言われたらアガりますね。そしてバースの半分過ぎたところでは「まだ4小節 数えられないの残念だな」という、GADOROの動きを割り込む素振りと捉えたラインがありますが、ここは映像で見てもやや微妙なところだった印象です。
それでもrapの中での崇勲の冷静な諌め方にはキャリアや場数の差というか、崇勲の余裕をオーディエンスに提示する十分な効果のあった一幕ではないかと思います。
また、その直後にもすかさず「ここ準決勝だよ? 分かってないの?」と自らの優位を確立していくようなラインが続くのですが、この辺りは崇勲というMCの試合巧者ぶりが伺えますね。
純粋なrapスキルに特化しているGADOROと比べると、そのスタイルは好対照をなしていると言えるかもしれません。
そして後攻のGADOROへ移ります。「オマエがフリースタイルの神さま?」「一体オマエは何様?」という出だしからで、お馴染みのボキャブラリーを多用しつつも、内容、ライミング、ビートキープすべて高いクオリティーのスタートを切っています。
また、「顔がデカい」からの「こんなおデブちゃんには憧れない」という一節や、「数えてやるよ 顔のクレーター」からのくだりなど、ライミングを維持しつつ、対戦相手の崇勲に対してこれ以上ないくらいの鋭いdisをぶつけていて、序盤だけで言うとGADOROが空気を掴んでいるように感じました。
続く2バース目以降は流れが変わり、アンサーに長けた崇勲が徐々に地力を上げてGADOROの言葉を拾いつつ勢いをつけてアンサーしていくシーンが目立ってきます。
例えば「クレーター?」「アポロ」からの「アホの LIVEなんか聞く必要ない」という部分などは、BBP2003における3位決定戦でのFORKを想起させるラインですね。
また、2バース目の「家で考えてきたことばっか」「そんなんで勝てると思うな」というラインや、ラスト4バース目に放った「臭くない女だっていることもちゃんと分かれ」という部分など、ビートの隙をつくように通る声で力強いラインを吐く場面が多数あり、観る者に強烈な印象を与えています。
呂布カルマのようなMCとはまた違ったカラーですが、この太い声質と選んだ言葉そのものの印象から、十分にパンチラインへと昇華されています。
一方のGADOROですが、こちらも崇勲に呼応するように押韻による言葉遊びの側面は徐々に薄くなり、内容面でのアンサーへとシフトしていきました。
特に「オマエと違って都会人には絶対負けられねぇ理由がある」という部分など、地元を上げる趣旨のラインが目立っていますね。
また、3バース目には随所にフローにバリエーションをつけて疾走感のある、非常に即興性の高いrapをしていてこの辺りも唸ります。
合間に挟んだ「bitch motherfucker」というつなぎの一節は個人的にお気に入りです。
この勝負、それぞれこれでもかというくらいに自分のカラーを出したrapをぶつけ合っていてスタイルウォーズ全開な感じで推移していましたが、それでも内容は拮抗していて、観ている側としてはかなり面白い展開だったのではないでしょうか。
結果はドローで勝負は延長戦となりますが、審査員によるジャッジもまたナイスでした。このバトルはKOKらしい一戦で、かなりお気に入りです。