NAIKA MC v.s. 晋平太
UMB2011 FINAL 群馬代表 NAIKA MC v.s. REVENGE代表 晋平太
今回はUMB2011から決勝戦の模様をお伝えしたいと思います。
こちらもかなり有名な一戦ですね。もうすっかり書いたものと思ってました。
[晋平太]
東京だから 東京だから
東京だから 東京だから
同情なんか 要らねぇぜ
即興だったら 東京だからトップオブヘッド
東京だから 速攻だから
ガンガン出てる 宝がな だからかな
たかだかmotherfuckerか? あぁ?
俺に勝つか? ハァ?
なめてんのか? ハァ?
ハゲ NAIKA やめないか
なぜないか 経過 関係ないな
ぺーた 勝つんだ
俺は言わす「さすが」
[NAIKA MC]
パッパ パッパ パッパ パッパ
パッパ パッパ 馬か!
おい ケツ叩くぞこの野郎
韻がどうこうの時代じゃねぇこと証明
アァ? これで勝つしかねぇから
これしか持ち合わせてねぇから
なぁ 韻がヤバいヤツが
この先勝てねぇってこと証明してぇ
[晋平太]
韻がヤバい 韻がヤバい
韻だけだったら進化がない
「晋平このまま死んじゃわない?」
死なない 韻だけじゃないの今年は
ビートの選択間違った?
オマエはどれでもmotherfucker
後攻取りそうだから選んでやったんだ
どれでもいい ビートだろ?
勝手にしろよ 今日も勝つ
見ろよ 真後ろの城を
[NAIKA MC]
ずいぶんその白帽似合ってるけど
ハナから白の帽子?
あぁ? 白旗振ってるヤツが
白かぶってたら終わりなんだよな
Yo 韻だけがどうこう
ビートがどうこう 面倒くせぇぜ
やるならもちろん全国
天辺でタイマン わかるガイダンス
[晋平太]
韻がどうこうだの
ビートがどうこうだの
言い出したの俺じゃねぇだろ
みんなどうよ?
韻がどうこう 因果応報
NAIKA もういい 死んじゃおうよ
白の帽子で獲る 白星
黒の帽子だぜ 黒星
これでいいか? バッチリなアンサー
アンタの番さ NAIKA
頑張らないか!
[NAIKA MC]
最高だね 晋平ちゃん
でもやっぱり目の前のヤツは死んでいた
殺してやる 確かなもんで
大丈夫 ありがと 好きだけど殺すよ
このセリフわかるかな?
オマエにクイックされたリベンジ
今日は俺の番さ
わかる? 死ぬかもしれねぇ
だから歌わせろよラストの挽歌
[晋平太]
歌えよ 最高のライバル
だがそれが 最後の言葉になる
仲良しだけど お友達だけど
音の上ならば立場なしだろ?
立ち話じゃねぇ なぜかって
価値があるわけ? 俺の勝ち方に
おだわり こだわり あるのさ
DOTAMAに ここで負けたらマジで
申し訳立たねぇ
[NAIKA MC]
そんな申し訳立たねぇ
けどすべてのヤツらのため報わせてるぜ
勝ちも負けもなに小節気にしてんだよ
結局のとこそこだろ なぁ
全国の各地に届けたい
「これが生きがい」ってヤツがいるぜ
この国今年はすべてが
生きたいと思わなきゃダメだろ?
概要
8小節4本
勝者: 晋平太
解説
UMB2011 FINAL 群馬代表 NAIKA MC v.s. REVENGE代表 晋平太
今回はこちらの一戦を取り上げます。UMB2011の決勝戦となります。
まずは当代最強の呼び声高い王者晋平太。ちなみにこの年の東京はDOTAMAが獲り、晋平太は敗者復活からの勝ち上がりでリベンジ代表としての本選出場となりました。
対するNAIKAは地元の群馬予選から。本選では準決にて同じ北関東栃木出身であるDOTAMAを下しての決勝進出となりました。
ちなみに晋平太は前年のUMB2010で優勝。この年はディフェンディングチャンピオンとして本選に臨んでいるのですが、それでも今回はリベンジ代表というところがいかにも彼らしい感じです。
前年と異なり、今回はこの決勝までさしたる波乱もなく圧倒的なスキルで勝利を重ねていきますが、果たしてこの決勝ではどうなるのか・・・
さて、それでは試合の内容に移りましょう。先攻の晋平太、冒頭の「東京だから」の連呼でリズムを作りつつ、器用に言葉をずらしながらビートにきっちりとフィットした形でライミングを重ねていきます。
先攻ということもあり、意味づけよりも言葉のリズムを重視している感じですね。ノンストップで押韻を畳み掛けていきますが、バースの着地は穏当なもので、「100万の札束が似合う男さ」とひねりの効いた、またキザな晋平太らしい実に計算された締め方になっているのではないでしょうか。
対する後攻のNAIKA。似たような音韻の言葉を連呼していく晋平太の1stバースを「馬か」と一蹴。
また、そこから「韻がどうこうの時代ではない」と双方のスタイルの違いを強調するような流れにもっていきます。
彼の主張は非常に明快で、「韻がヤバいヤツがこの先勝てねぇってこと証明してぇ」と、最後までこの打ち出しでバースを終えます。
語を小刻みに拍の隙間に置いていく晋平太に対して、普通の会話のような平文を小節ごとに繰り出してリズムを作るNAIKA。スタイルは違いますが両者アプローチはさすがのものです。うーん、この年の決勝もレベルが高い。
続いて2バース目の晋平太。先のNAIKAの主張を受けて、「韻だけだったら進化がない」「韻だけじゃないの今年は」と文脈的にキレイなアンサーを返していますね。
また、その先の「ビートの選択間違った?」から「選んでやったんだ」まで、非常にスピーディーなrapで疾走していきますが、文脈もスムーズに維持したまま「どれでもいい ビートだろ?」へとつなげていきます。
並みのMCだとこの流れではリズムに溺れていきそうなところ、晋平太はやはりさすがです。確かに韻だけじゃない。
2バース目後攻NAIKA MC。晋平太の「真後ろの城」を受けて「ハナから白の帽子?」から「白旗振ってる」というアンサーで切り返します。
NAIKAは声量やガナる時の迫力・力強さが説得力を生んでいて、会場も盛り上がります。この辺りは後年に本人も言っているごとくですね。実力の発揮の仕方をよく心得ているMCだと思います。
そして3バース目へ突入。バトルはここからさらに盛り上がりを見せていきます。「韻がどうこう 面倒臭ぇ」とのNAIKAに対して、「(最初に)言い出したの俺じゃねぇだろ」とカウンター。
ここまで多数の言葉数を息つく暇なく考えた上、ビートに合わせて吐き出しつつも、これまでの話題の推移や相手の発言を踏まえてリズムそのままにrapしていくという超絶技巧を見せていきます。
オマケに「韻がどうこう」に対して「みんなどうよ?」とライミングまで貫徹している徹底ぶりです。
また、続けざま帽子のくだりに対して、「白の帽子で獲る 白星」「黒の帽子だぜ 黒星」「これでいいか? バッチリなアンサー」と畳み掛けていき、本人の宣言通りこれ以上ないほどに完璧なアンサーをぶつけていきました。
これは冒頭の画像を見てもらえば分かる通りで、確かにこの日、NAIKAは黒い帽子をかぶっていたのですが、対戦中は赤/青のライトが交互に双方当たっていました。
実際の色味そのものは試合の最中にはかなり認識しづらかったと予想されることから、事前の情報としてインプットしていたものをここぞという場面で取り出して巧みに利用したのだと思います。いったいどんな脳ミソしてるんでしょうかこの人は。
2バース目の「韻だけじゃない」という言葉通り、この時期の晋平太で最も凄まじいのはずばり「アンサリング」でしょう。
Rapのクオリティ・文脈・ビートその他なに一つ損なわずに相手の言葉に対して倍返しでカウンターしていく、こうした芸当をこのクオリティでできたのは少なくともこの時期では彼だけでしょう。
2011年当時にあって、晋平太ただ一人だけが圧倒的な技術水準でこうしたrapを実戦で運用できていたのではないかと思います。
この3バース目先攻の辺りが本バトルの最高潮となりました。
実質的に勝負の潮目が一気に傾いていきました。それを察してか、後攻のNAIKAは「わかる? 死ぬかもしれねぇ」と漏らしています。
そして最後4バース目。相手との対話という意味では双方変わらず丁寧にアンサーを重ねていきますが、その中でも晋平太はライミングも継続してバースのクオリティが一切損なわれません。
また、晋平太がここで負けたら「DOTAMAに申し訳立たない」と言えばNAIKAは「すべてのヤツらのため」と応じる。熱戦を繰り広げながらも
全国の出場MCの頂点を決めるに相応しい、ドラマの締めくくりという側面もrapで表現されています。
おそらく結果は誰の目にも明白でしたが、この4バース目はUMB2011のラストを飾る象徴的な内容となっているのではないでしょうか。
そういう意味で決勝の一角がNAIKAなのはとても良く、また、バトルの終了後には大会史上でも稀に見るカタルシスのある気持ちのいいラストだと感じました。感動的ですらある素晴らしい決勝ではないかと思います。
結果は3バース目の流れそのままに晋平太の圧勝となりました。UMB2010に続いて2連覇を達成した晋平太、もはや並ぶ者なしですね。
気づけば長めの記事になってしまいましたが、それだけこの一戦は内容の詰まった素晴らしいバトルだと思ってます。
ちなみにこの組み合わせは翌年のUMB2012で早くも再戦があるのですが、この2011決勝を踏まえて観るとさらに楽しめるバトルになっていますのでそちらも是非チェックしてみてください!
※ トップオブヘッド
“top of the head”、特にフリースタイルの文脈では「完全即興」の意味を表す。
※ 100万の札束が似合う男さ
「100万」とは本大会の優勝賞金額。
※ トラックの選択間違えたんじゃないの?
大会ルールで、一般に不利と言われる先攻側のMCにはバトルビートの選択権が与えられていた。
※ DOTAMA
同大会出場MCで、東京予選代表。準決勝でNAIKA MCの前に敗退。
1バース目の晋平太はナイカのアンサー力を警戒して、敢えて相手が聞き取りにくいようにラップをしたそうですね。
仮に白帽の話を自分から出した時点で、それに対するナイカのアンサーと更にそれに対する「白の帽子で取る白星〜」のラインまで思い描いていたとしたら恐ろしいです。
> 名無しのソナタさん
コメントありがとうございます!
1バース目の真相については下記の対談の内容になりますね。
そうした戦略性と試合巧者ぶり、そして試合最中の臨機応変の数々など、
ただ「rapが上手い」以上の何かがありますよね。
司会業と並行して出ている昨今の対戦でも
試合勘についてはまったく衰えていないようですし、図抜けた強さは健在ですね!
http://freestylemcbattle.jimdo.com/sp-talk/vol-1-%E6%99%8B%E5%B9%B3%E5%A4%AA-naika-mc/