DOTAMA v.s. ハハノシキュウ
戦極MC BATTLE 第10章 BEST8 DOTAMA v.s. ハハノシキュウ
今回は戦極10章からこちらの一戦です。
近年共作の音源も出している仲良し対決。ついニヤニヤしながら見てしまう、個人的にはとても好きな一戦です。
[DOTAMA]
仲良くて バチバチの試合
両立できるこの二人のお立ち台
Yeah お客さんお見舞いする
変態じゃないよ 真面目なラッパー
二人合わせて木っ端微塵だ
一点突破 今日ZEEBRAさんも見に来てた
オマエのrapは儚い 歯が立たない
だが立たない 私には
あ 別に 後輩扱いしてないよ
[ハハノシキュウ]
オメーのrapは一生バブリー
まるで 言葉 誰かのパクリ
みたいなrapをしているヤバい
俺はまるで ZEEBRA Tha Ill Skill
とりあえずこの場では Ill過ぎ
オメーを殺すぜ いぶし銀
Ah バトルがハスラー ブラザー マーダー
[DOTAMA]
あー ZEEBRA Tha Ill Skill
って単語出すまで
お客さんポカーンとしてたよ
オマエ 真似してるけど声が全然出てねぇ
さっきのNONKEYさんとの試合で
使い果たしてる テンション
とりあえず髪切れや
Yo 全くない清潔感
俺がぶった斬るオマエの鮮血だ
真っ赤に染めてやるオマエの体
[ハハノシキュウ]
DOTAMAさんにとってはこれはロン毛なんですよ
僕にとってはこれはショートカット
短髪のつもりです 考え方が違う
パラダイムシフト パラダイスロスト
この場所で殺すぞ
この場で どんな場面を
描くのかしらねぇがとりあえず
普段仲良くても
裏で気まずくなるくらいのバトルをしてやるよ
[DOTAMA]
Yeah でも全然できてない パラダイムシフト
まだ無い実力 Yeah 韻の合戦
コイツのrapは本当にダッセー
Yeah でも あの
去年のレコーディングの時の
あのテンションを出してくれハハノシキュウ
Yeah 俺が横でずっとパソコン叩いてた
あの頃を思い出して さぁ早く
[ハハノシキュウ]
リズムを脱線してるのオメーじゃん
人のこと 言えねぇラッパー
たぶんこの場で 殺すだけじゃん
ビートを外す DOTAMAラッパー
何をできる僕はスプラッター
君はなに? 僕は鬱ラッパー
このバースの カスのメンヘラ
絶対勝つよ ラストエンペラー
[DOTAMA]
Yeah ラストエンペラー
確かに言ってることはメンヘラ
でも俺のrapの方が 丁寧だ
オマエにやってるケンケンパー
一緒に遊ぼう? ハハノシキュウ
Yeah オマエやっぱ暗すぎる
Yeah そして 怖すぎる
けどオマエ 結婚して 丸くなったと思うよ
[ハハノシキュウ]
僕はDOTAMAの金魚のフン
だけどDOTAMAより韻を踏む
とりあえずこの場でシンプルさ
頭の回転 裸になって
バカな言葉が 出てくるだけさ
君 なに? 言い訳メガネくん
のび太くん 延びた風なライム吐く
その服しまむらで買ったんすよねー?
概要
8小節4本
勝者: ハハノシキュウ
解説
戦極MC BATTLE 第10章 BEST8 DOTAMA v.s. ハハノシキュウ
今回は戦極10章からこちらの一戦です。
一緒に音源制作もしている両者の対決。こう書くと語弊があるかもしれませんがナードなオタクMC同士の一戦と言えるかもしれません。
ちなみにこちらがその音源『13月』。
1月から始まり全13曲それぞれが月を表していて、各曲がその季節ちなんだ曲になっている、という構成のコンセプトアルバムになっています。
個人的にこれは大好きなアルバムで、ここ数年買った中でも特にお気に入りです。(リードタイトルの「13月」以外にも、特に2月と9月などは素晴らしいです)この二人が好きな人には必聴の1枚だと思います。
何やら音源紹介になってしまいましたがそれはそれとしてバトルの内容に移りましょう。
先攻のDOTAMAは少しおどけたようなフローで言いたい放題という感じです。
「あ 別に 後輩扱いしてないよ」という1バース目最後の忙しく言い添えるラインなどは非常にDOTAMAらしい笑いを誘う感じで、オーディエンスから見てもこのバトルを楽しいものにしていると思います。
対するハハノシキュウ。DOTAMAがZEEBRAを引き合いに出したことを受け、1バース目は丸々全部モノマネで通します。
この後DOTAMAに指摘されますが、似てると言えば似てるし、似てないと言えばそれほど似てもない感じですが、「ハスラー」「マーダー」など、使う言葉がそれっぽいのでなんとなく伝わりますね(笑)
そして2バース目DOTAMA。なんとなく両者の内容がかみ合っているようでしたが、唐突に「とりあえず髪切れや!」と言い出したりして意図的に流れをぶった切っていく予測不能な内容。
こうした客や対戦相手の意表をついていくのはDOTAMAの良いところの一つですね。むしろこれがあるから彼は強いのだと思います。
また、オンビート / オフビートもごちゃ混ぜで、フローも切り替わりの激しさを随所で見せていて内容で予想の裏をかき、フローでも裏をかき、またパフォーマンスも予想を裏切り、といった感じが毎バース起こるので、オーディエンスにとってはそれが非常に期待を高め、また、相手にとってみれば「何をしてくるかわからない恐ろしいMC」になるのだと思います。
一方、オンビート / オフビートの区別でいうとハハノシキュウもメリハリがあってこちらも素晴らしいです。
ダミ声でがなり立てる部分があるかと思えば、例えば3バース目「人のこと 言えねぇラッパー」から始まる部分などは、すごく正統でライミングしつつ「キレイ」なrapになっていて、こちらも単調でないバラエティに富んだ内容になっています。
そして迎えた4バース目。ライミングを覚え、rapとしてのまとまりはあるものの、「一緒に遊ぼう? ハハノシキュウ」「オマエやっぱ暗すぎる」など、内容をよく見てみてるとDOTAMAの方は言ってることがけっこうめちゃくちゃだったりします。
ただし試合のペースを掴んだ上でこれをやるので、実際にはそこがまたオーディエンスの沸くポイントになったりもし、コントロールされたカオスと言えるかもしれません。
4バース目の内容を見比べるとハハノシキュウのrapのまともさが際立ちますね。
「僕はDOTAMAの金魚のフン」「だけどDOTAMAより韻を踏む」など、すごく丁寧にライミングして相手を上回る内容でアンサーを返していく感じで、こういうことやらせても非常にスムーズなのはハハノシキュウのスキルの証明でもあると思います。
ただしそれで終わるはずもなく、ラストには「その服しまむらで買ったんすよねー?」というハハノシキュウらしいオチもつけていて、笑えるdisで後攻逃げ切りをはかります。そして全4バースは終了。
結果、どちらにも声が上がって判定が割れたかに見えましたが、恒例のアスちゃん登場で再確認の末、僅差でハハノシキュウの勝利となりました。
この大会のDOTAMAは一つ前のSIMON JAP戦など、非常に「らしさ」が出ていて調子が良かったのですが、それを上回ったハハノシキュウもやはり強いですね。非常に面白いバトルでした。
※ 一点突破
ZEEBRAの楽曲「Mr.DYNAMITE」のhookから。
※ 東京生まれ HipHop育ち
ZEEBRAの客演したDragon Ash / Grateful daysより、ZEEBRAバースのサンプリング。
※ ZEEBRA Tha Ill Skill
活動初期から中期にかけてのZEEBRAの変名。
※ NONKEYさんとの試合
同大会一つ前の二回戦。NOKEY v.s. ハハノシキュウ戦のこと。
延長までもつれた末にNONKEYを下した。
※ パラダイスロスト
聖書の逸話を題材にした英国作家ジョン・ミルトンの叙事詩作品。日本語で「失楽園」。
※ ラストエンペラー
清朝最後の皇帝溥儀を描いた歴史映画。
※ しまむら
全国に展開する安価な衣類販売チェーン。
価格の安さからオタクがよく利用するというイメージが広がった。