R指定 v.s. 晋平太
UMB2010 BEST16 大阪代表 R指定 v.s. 東京代表 晋平太

今回はUMB2010からこちらの名勝負を紹介したいと思います。
今や伝説の一戦。その年のチャンピオンと大阪の新世代MCであるR指定との初マッチアップとなります。
[R指定]
Yo お待たせ rapオタクの出番だ
from コッペパンだ 客寄せパンダ
つまりこの大会の台風の目
俺に勝ちたきゃ韻を倍踏んどけ
Yo たかが東京予選で優勝したくらいで男泣き?
低すぎんじゃねぇか志?
それじゃ振り向かねぇぜ小野小町
[晋平太]
Ei yo 黙れそこのガキ
なにがわかるか?
男らしいっつーか男泣き
つーか 倍の倍 踏んでやるぜ
見せるぜ気合いの違い
ライムのどつきあい
出すぜ?食事代
オマエはそいつがmicが特技かい
特にない オマエの印象
オマエは俺には勝てない一生
[R指定]
一生とかkeep onとか
オマエ優勝して泣いて マジで好印象
ここで勝ったらホントに泣いてもいいっしょ?
それじゃなきゃ踏み出せねぇはじめの一歩
わかってんのか? おめーはホントに
自己紹介ん時から溢れてんだよナルシズム
こんなザコ必ず沈む
口うるせぇ like a やくみつる
[晋平太]
最後に勝つのはアニメと一緒
こっち はじめの一歩
オイ 相手がどこの街でも一緒
マジヘボいっしょ
つーか髪をカールしてR指定
なにrapして オマエの悪口は
聞き飽きてるし
中身無い過ぎる
マジな話だぜ軽いって
[R指定]
R指定とか rapしてぇとか
Fuck死ねとか アップリケとか
誰でも踏める韻はいい
てかオメーネタくせぇんだよさっきからさ
臭すぎる like a ひきわり納豆
ぶちかますコイツに右ラリアット
いきなり圧倒してなにキリキリ舞いになっとん?
オマエの浅はかな夢をギリギリ1mm大にカット
[晋平太]
オマエもアンサーがねぇな
対戦相手に感謝がねぇな
オメーとKOPERU 揃ったとこで
俺と028には勝てねぇよ
俺のやり方 10年一緒
言ったらやるぜ 有言実行
これで最後 よく見てろ
100万に変える10円一個
[R指定]
あっちで踏んで こっちで踏んで
あっちで踏んで もう飽きてくんぜ
そんなスタイル 韻踏むだけなら
B-BOY PARKレベル面白くねぇ
もっとこうやって 音に乗って
フローに情熱でも注ぎ込んで
ノイローゼ 生理前の女子高生?
[晋平太]
俺はB-BOY PARKの生き残り
まるでMACCHO 耳元に
俺は上手くなる 昨日より
だからこう呼べ "火の鳥"
今日勝つために立ち上がった
今日勝つために負け続けた
俺が晋平太 それがわかるか?
概要
8小節4本
ビート: Promoe / Off the Record
勝者: なし(延長へ)
解説
UMB2010 BEST16 大阪代表 R指定 v.s. 東京代表 晋平太
今回はUMB2016からこちらの一戦を取り上げます。もはや伝説となったバトルで、2010のR指定対晋平太の初戦となります。
今やUMB3連覇のR-指定もこの時が本選初出場。HIDAやERONEを始めとした激戦区の大阪を制してルーキーながら満を持して全国の舞台にやってきました。
一方の晋平太、2010東京予選にてGOLBYとの死闘を制しての本選突破。意外にもこちらも本選は初出場となります。
初戦ながら後に「事実上の決勝戦」とまで言われることになるこのバトル。優勝候補同士の対決と言っていいでしょう。
それでは内容の方を見ていきましょう。まず先攻はR-指定。
当時のR-指定のスタイルは明確なライミング志向で、ストックとなるラインを試合の流れの中でうまく組み合わせながらバースを構築していくというやり方で、本バトルでもその傾向が顕著に表れています。
特に今回は先攻ということもあって東京予選のくだりなどは練りに練った、という感じで、最後の「小野小町」まで巧みにパッケージングされた一節となっています。
続いて後攻の晋平太1バース目。R-指定の「小野小町」からつなげて「黙れそこのガキ」というライミングで入った上で自身の押韻も展開していきます。
また「つーか」をブリッジとして「倍の倍」「気合いの違い」と新しいライミングへ移行していくのですが、ここまでまったく余計な言葉も挟まず、またR-指定の分も含めて同語反復や同音異義語もない、非常にムダの無い内容になっています。
2010年当時のシーン全体の技術水準からいくと、正に完璧に近いパフォーマンスと言えるでしょう。
続く2バース目。R-指定も「一生」という晋平太最後の言葉を上手く使ったアンサーでまず対応。
その後は1バース目同様にその場の状況に合った言葉を組み合わせていくのですが、その乗せ方がとても自然かつ抑揚をつけた形で工夫されており、こちらも晋平太に負けず劣らず終始高いパフォーマンスでrapしています。
この一戦、最後までそんな調子で、どちらも目立ったミスもなく、相手の言ったことを受けながら小節の途中また最後にライミングを挟みつつ、完璧にビートキープしつつ文脈も維持して・・・という感じで、非常にレベルの高いバトルが展開されていきます。
そして迎えた4バース目。「韻踏むだけなら CITTAじゃなく行けよ代々木公園」という先攻R指定のdisから始まります。
さらにそこから「B-BOY PARKレベル面白くねぇ」と続き、内容の連続性とライミングの精度は最高レベルで、本バトルの中でも屈指の、珠玉のラインになっていると思います。
内容で言うとR指定にも当てはまりそうな若干ブーメラン気味のラインではありますが、スキルフルなラインを見せつつも刺すべきところはしっかりと刺していく内容で、このバトルをただの競技にさせない重要な場面と言って言えるのではないかと思います。
続く後攻の晋平太ラスト。上述のラインを拾った上で、「俺はB-BOY PARKの生き残り」と前置きした上で「耳元に」とMACCHOをサンプルして対応していきます。
さらに重要なのがここからで、「俺は上手くなる 昨日より」「だからこう呼べ "火の鳥"という熱い内容を言葉数をペースダウンさせつつしっかりとオーディエンスに聞かせます。続く最後の4小節はすっかり有名になってしまった以下の内容です。
こちらは「M.B.H」や「CHECK YOUR MIC」といったバトル史を綴った彼自身の楽曲に丸々サンプリングされており、まさにMCバトル史上の画期となった伝説の4小節でと言えるのではないかと思います。
このラインが即興のバトル中、それも死力を尽くした8小節4本の後攻ラストで出てくる辺りが当時の晋平太の実力を物語っています。今のUMBに出ても余裕で優勝できるんじゃないかと思うほどです。
そしてそこに対して最後まで食い下がったR-指定もさすがなもので、当時からその怪物じみたスキルや体力がハッキリと見受けられますね。そしてご存知の通り、判定は割れて勝負は延長へ、この激しい一戦もここから始まる死闘の序章に過ぎないのでした。
2016年の今振り返って見ても、このバトル、そしてUMB2010という大会はそれまで2008、2009、そして後に続く2011、2012などと比較して間違いなく一つの画期であったと思います。
個人的な感覚としては、2008、2009までは「相手を負かすバトルとしてのコンペティション」が判定の際にやや重視されていた印象がありますが、この2010からはそれに加えて、「前提となる要求スキル水準が格段に上がった」という点が顕著になったように感じます。
時系列的にはR-指定の台頭が著しかった2012大会やそれ以降のバトルシーンに直接つながるような要素が多く垣間見えた感があります。
そしてその大会を一番端的に象徴しているのがこのR指定 v.s. 晋平太の一戦と言っていいでしょう。今内容を見ても古い感じがまったくしない、素晴らしいバトルだと思います。
バトルは好きだけどこの対戦は見たことないという方は是非映像で見てみることを強くオススメします。
前提知識無しに今見ても楽しめる、という意味ではおそらく2009や2011よりもやはりこの2010大会が適してます。
スゴいですよこの一戦!
次回:
[UMB2010] 晋平太 v.s. R指定 延長
※ コッペパン
R-指定とKOPERUによるrapユニット。
※ 東京予選で優勝したくらいで男泣き?
UMB2010東京予選にて。アスベストとの決勝戦後のこと。
※ はじめの一歩
ボクシングをテーマにした漫画のタイトル。
※ やくみつる
日本のタレント。
※ KOPERU
大阪、梅田サイファーのMCで、コッペパンでのR-指定のパートナー。
※ ojibah
SD JUNKSTAのMC。以前は晋平太と組んで活動していた。
※ 100万
同大会の優勝賞金額。
※ CITTA
川崎CLUB CITTA。同大会の会場
※ 代々木公園
東京都にある公園。野外ステージでは例年B-BOY PARKが開催されている。
※ MACCHO
OZROSAURUSのMC。
※ 今日勝つために生まれてきた
ここからの4小節は後に自身の楽曲で引用している。