ハハノシキュウ v.s. 智大
戦極MC BATTLE 第10章 一回戦 ハハノシキュウ v.s. 智大
今回は戦極10章からこちらのバトルを取り上げます。
見ての通り、ものすっごく貴重な取り合わせです。こういう試合見せてくれる戦極MCBATTLEには本当に感謝しかありませんね。非常に楽しみなバトルです。
[ハハノシキュウ]
おい ナマクラ刀
最近バトルに出てねぇバカが なに?
九州のバトルMCって言ったら
mol53以外思い浮かばない現状
最近出てねぇだろ 座敷屋ばっか
この場でやるか
僕は座敷童子の成れの果て
殺すか智大 鬼束ちひろ
みてぇな感じでガンガン ガンガンいく
[智大]
POPの話か 薄っぺらい
俺がバトルに出ていない
一々俺のプライベートを調べてんじゃねぇ
オマエとは全然違ぇ
俺に負けて思い知れ
なんかゾンビみたいに入ってきたが
オマエは生き足りない
ただのキョンシー
相手にならない速攻で即死
[ハハノシキュウ]
キョンシー ゾンビ 絶対死なない
だって僕は 尊師 尊師
言ってもダメ アタマの中で
流れてるのは鬼束ちひろだけ
オメ−を殺すのはここで十分
暖簾に腕押し ここでひれ伏し
妖怪の並ぶ 名前を並べんじゃねーぞ
おめーナマクラ刀
[智大]
テメーのrapよりもたまごっち
それとも今なら 妖怪ウォッチ
オマエのことだぜ
どっかに行っとけトレンド追いかけときな
オマエみたいな言葉のパズル
家でパズドラでもやっときな
ソーシャルゲーム
頭が長ぇだけでアタマは全然足りてねぇ
[ハハノシキュウ]
ロン毛が苦手なクセにな
キミからしゃべれば面倒くさい
今ならこのラッパー クソラッパー
僕 a.k.a. ジバニャンだよ
軍閥から殺す出番だよ
君の言葉威張んなよ
マジで死んで 僕はまるで
エヴァンゲリオン 出番ねぇよ
[智大]
落ち着きが無い
オマエはさっき言ったような
俺が総裁のアルバム出てる
かっこいいね
俺と当たると思ってなかったのかザコが
オマエとは違う次元でやってる
タコ殴りにする
心の痛み そいつをあつみ
オマエをぶった切る 当たり前のように
概要
8小節3本
ビート: Lunch Time Speax / B:compose
勝者: なし(延長へ)
解説
戦極MC BATTLE 第10章 一回戦 ハハノシキュウ v.s. 智大
今回は戦極10章からこちらのバトルを取り上げます。
私の知る限り、これ以上にないくらい非常に異色な組み合わせ。夢の対決と言ってもいいくらいの驚きがありますね。
智大は福岡出身。ハードコアなスタイルのMCで、キャリアも長く、UMB本戦へは2008と2010でそれぞれ出場しています。(ちなみに読み方は「ちひろ」となります)
一方のハハノシキュウ、こちらはサブカル、というかナードさを全開にしているMCで、バトルもほどほどに音源制作等でも活躍しているここ数年で脚光を浴び始めたMCと言えるでしょう。
スタイルもキャラクターもバックボーンも対極にある両者。
どんなバトルになるのか想像もつかない、非常に楽しみなマッチアップなワケです。こうしたステージ上での巡り合わせもMCバトルの面白さの一つですね。
また、このバトルはビートがLTSのB:composeで、個人的に非常に好きな楽曲だったのでこれはもう上がります。上がるしかありません。楽しみです。
さて、バトルの内容に移ります。まずは先攻のハハノシキュウです。
「おい ナマクラ刀」「最近バトルに出てねぇバカが」と、しょっぱなからド直球のdisをぶつけていきます。いきなり遠慮のない攻撃です。
ハハノシキュウはアブストラクトめいたことを言うようで、その実こういう身も蓋もないようなdisをなんの衒いもなくぶつけていったりします。でもそういうところはかなり好きです。
続く後攻の智大、先述のdisに対して「一々俺のプライベートを調べてんじゃねぇ」と反撃。
もともとメッセージ性や一発の言葉の重さという点が非常に特徴的な智大ですが、このバトルでも独特な言葉選びで奮戦しています。
少し乱暴に分類すると呂布カルマのようなスタイル、と言えばわかりやすいでしょうか。それだけにハハノシキュウとのスタイルウォーズも一層際立ちます。
智大のビートの乗りこなし方はいいですね。特に「テメーのrapよりもたまごっち」から続く2バース目は彼らしい言葉の置き方のリズムですが、それでもハードなビートにとてもしっくりくるように感じます。
そしてハハノシキュウ3バース目。智大の出した「妖怪ウォッチ」の単語に反応して「僕 a.k.a. ジバニャンだよ」とおどけてみせます。
こういうアンサーの返し方はハハノシキュウがやると妙にハマりますね。ここは個人的に本バトル一番のハイライトです。スタイルウォーズもまさに頂点に達した瞬間という感じです。
最後3バース目の智大。あくまでも自分の世界の中でrapしている感じで、「オマエをぶった切る 当たり前のように」など、表現も独特です。
このスタイルウォーズが話題の上でももう少し交錯していたらもっと楽しめたかもしれません。いずれにせよこの組み合わせはファン垂涎の非常に貴重なマッチアップではないかと思います。
そして気になるバトルの結果ですが、なんと引き分けで延長に突入します。両者とも持ち味が出ていたいいバトルだと思いますが、それでも相手を刺し切るだけのものが出せていなかったという感じです。
どちらも未知数の相手と戦っている感じが非常に新鮮で、オーディエンスもまたこの組み合わせを最後まで好奇の目で見守っていたのではないでしょうか。
※ mol53
宮崎出身のMC。
※ 座敷屋
智大の所属するクルー。
※ 鬼束ちひろ
日本の歌手。
※ たまごっち
90年代に流行したデバイス一体型の携帯ゲーム。
※ 妖怪ウォッチ
2013年に発売された3DS用ゲーム。その後はアニメや映画などのメディアミックス展開をしている。