CHILL-B v.s. 輪入道
UMB2017 TCIY BEST16 CHILL-B v.s. 輪入道
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
[CHILL-B]
この会場内にいる約9割が
俺が負けると思ってる予想も覆す
ポーカーで言うなら狙うフルハウス
オマエに出すスルーパス
ジダンとかさ 至難の技
乗り越えて来いよ 輪入道
ニュースペーパーなんてゴミ箱に入れちまう
燃やす焼却炉
[輪入道]
焼却炉 この先どうなるの?
ローカルのやり方見せるぜ
方角も知らねぇけど
まるでドーナツのように空いた
パカンと穴が空いてるなら
そこにmotherfuckerな言葉ハメるラッパー
俺のやり方 suckerMCは格好の的だ
あとは やることやるだけ まずは やり方見せな
お互い名前も知らねぇ同士みてぇなもんだろ
[CHILL-B]
雑魚でけっこう 雨天決行
下手な鉄砲 も数撃ちゃ当たる
Yo 石橋叩いて渡る
Yo わかるこの意味? this is ローカル
アブノーマル 放課後のrapしてるような
爆音のスピーカー 心拍音まで聞こえるバクバク
ジュラシックパーク wackを食う
スティーブン・スピルバーグ
[輪入道]
良いこと言ってるぜジュラシックパークみたいに
バクバクくるけど 拍数よりも
俺はまずrapすることだけ 活躍するだけ
括約筋まで全部引き締めるぐらいのrapかましてるぜ
いつも通り沿線 連戦連勝で
面前でぶちかますことしかねぇ
今年だぜ 一番大事なのは
2017 つーかさぁ オメー誰だよ?
[CHILL-B]
オメー誰だよ? CHILLだよ さっき挨拶しただろ
裏では意外といい奴 ヤクザみたいだけど
Yo 長渕剛に強めの洗脳受けてる
Yo それよりも幸福の科学の方がいいんじゃねぇの?
清水富美加 さっきのバトルで尻すぼみか?
アー アー 可哀想 可哀想
刈り上げ カツアゲ なんでもしてくれ
俺が持ってるもん スキルフルに出すよ
[輪入道]
デカいとこだとデカい口叩くやつが
デカいことを出せてる
結果出せてるの見たことねぇんだよな
結局のところそれオマエ 地元の
ローカルのちっちゃなクラブで俺と当たった時同じこと言えるか?
絶対言えねぇこと言ってる
幸福の科学でも創価学会でも別に差別しねぇけど区別するだけ
俺は揺れるフロアの中言葉届けてぇ
長渕剛の名前出したから やることやるだけ
[CHILL-B]
体鍛えて ヤンキーになって
まるで般若の歌う効果
みたいな等価交換なんて出来ねぇぜ
幸か不幸か this is ローカル
から登場して落とす爆弾
自爆テロ イスラム教徒も静まる今日
恐怖を与えてやるぜ
これが教訓にしてくれ
教科書には載ってないぜ
俺らがチューインガム
注意しなよ シュリンカー
[輪入道]
そんなにビビってんじゃねぇ
別に俺 俺の先輩みたいに
怖いこと言ったりしねぇ 好きなようにやれ
だけどオマエが真似 してると思ったらすぐに言うぜ
誰かのモノマネじゃ結局のところ成り上がれません
俺はフリースタイルだけで終わる気がハナから無ぇ
音源にシフトする その移行する過程
奮わせてる魂 子ども騙しじゃねぇ
オメーの名前覚えた 意外と楽しかったぜ
概要
8小節4本
勝者: 輪入道
解説
UMB2017 TCIY BEST16 CHILL-B v.s. 輪入道
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
この大会めちゃくちゃ絶好調の輪入道に対して、1回戦で見事にUSUを破ったCHILL-Bの対戦。
試合はまず先攻のCHILL-Bからスタート。
この冒頭の1ラインはCHILL-Bの置かれた状況とキャラクターがよく出ているように思います。
投票で選出された並み居る有名MCたちの間に割って入った中で、ビッグマウスを叩くわけでもなく下から見上げつつも大物食いを狙っていく姿勢が表現されてます。
以前UMB2015本選での試合を取り上げた際にも感じたことですが、どんな状況でも完全に落ち着いて、ビートキープしながら自分の考えを冷静にrapに落としていけるのが非常に印象的です。
[UMB2015] MAVEL v.s. CHILL-B
続く2バース目でも「ザコで結構」「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」「石橋叩いて渡る」と、めちゃくちゃ性格が出ているデリバリーを飄々と輪入道へぶつけていて、キャラを前面に出したかっこよさを見せています。
サグを気取るのでもなければセルフボースティングするでもない、この「ちょっとクレバーな一般人」という感じの風貌とrapスタイルがCHILL-Bのキャラクターであり、また最大の魅力でもあるのだと思います。(もちろん、その格好良さを裏打ちするスキルがあった上での話ではありますが)
対して後攻の輪入道。「suckerMCは格好の的だ」など言ってはいますが、かなりフラットに相手と向き合ってる印象があります。
中途半端な有名MCによくある、変に上から目線だったり、凄みを効かせた威圧だったり、そういう詰まらないギミックを挟まずに真っ当にrapし続けた点が非常に好感持てました。
特にこちらは2バース目立ち上がりのアンサーですが、相手のラインを正面から受け切って、その上で純粋にrapの内容やライミングで上回る言葉を畳み掛けているのが分かります。
この辺りは文章だと中々伝わりづらいところなのですが、徐々に強まっていく勢いとリズムが非常に素晴らしかったです。
「攻撃はすべてrapで返す」というy輪入道もメンタリティが見えましたし、それを実行してしまうMCとしての懐の深さのようなものを感じたバースでした。とにかくもう強いの一言です。
そして試合後半の3バース目。
まずはCHILL-Bのパンチライン。このdisは個人的に試合一番でした。
輪入道に対してこの切り口から攻撃したMCはそれほど多くないと思いますが、このチクリと刺すような皮肉めいた物言いがなんともCHILL-Bらしいです。
さらにエンジンがかかったCHILL-Bは勢いに乗って攻撃を重ねていきます。ここも是非映像で観てもらいたいシーンです。
ライミングもさることながら、相手を茶化していく雰囲気が最高に面白く、最後の「可哀想」の言い方まで含めて、この瞬間は試合の空気をCHILL-Bが完全に掌握していたように感じます。
続いて輪入道、こうしたCHILL-Bの攻勢にメタな視点から切り返ししていて、こちらも上手いアンサーになってます。
さらに「幸福の科学」のくだりへは「別に差別しねぇけど区別するだけ」とこちらも余裕で切り捨てていきます。この辺りは内容で返したという感じではありませんが、内容どうこうよりも「少しも動じずに即座に切り返した」という事実そのものが会場に強い印象を与えていた感じです。
その後も一点の迷いもなく淡々と言葉を積み重ねていく輪入道。開始こそイーブンに推移していたやり取りも、もうこの時点で両者の力関係が固定化されてしまった感じでしょうか。
4バース目には殺傷能力の高いdisは控えて手数で勝負するCHILL-Bを喝破してこのライン。もうここまでくると輪入道が思うままに試合を動かしているかのようです。
後攻ということで、最後は余裕のフィニッシュ。個別のバースのピークやdisのやり取りではそれほど明確な差があったようには見えませんでしたが、全体通した試合の運び方では輪入道の方が頭一つ分くらい抜けていた印象です。
そんな訳で勝者輪入道。この試合はスタイルウォーズという意味でも相当に面白いバトルになってました。後半に進むにつれ盛り上がり始めたCHILL-Bの勢いを見事に挫いた輪入道はさすがという感じです。
輪入道は前の試合がJAKEとの延長3回の死闘直後ということもあって、その試合勘の鋭敏さや隙の無さが目についた一戦でした。
[UMB2017 TCIY] 輪入道 v.s. JAKE
また、それを十二分に引き出していたCHILL-Bのパフォーマンスもまた素晴らしかったと思います。