ハハノシキュウ v.s. GOLBY
戦極MC BATTLE 第10章 ハハノシキュウ v.s. GOLBY
今回は戦極10章からこちらの試合を取り上げたいと思います。はっきり言ってこの対戦相当面白いです。
[ハハノシキュウ]
Yo オメーも語尾だけのラッパーだろ
さっきもらったもみあげ お土産にして今渡してあげるから
とりあえずこの場所で キミを殺すだけ
それができるのは 今はたぶんボクしかいねぇ
とりあえずこの場で キミの仮面
ぶっ壊すためのフットワーク
GOLBY 今日から名前は「乳首」に変えた方がいいと思うよ
[GOLBY]
そうか 今日から名前が「乳首」
それでも語尾踏む 俺は一途に
それが一途な愛
決勝 晋平太の相手はオマエじゃない
みんな見たいんだろ?
あの再戦を アタマの回転を
オマエは賽銭を乞食るようなオマエはジプシー
オマエも改めろその乳首
[ハハノシキュウ]
君の一途な愛 にボクは全然気付きゃしない
全然キミの 見つからない
AV男優みてぇな顔でこっち見んじゃねぇぞボケ
この場で キミが流すの
何を言ったって全部同じじゃん
さっきのバトルもその前のバトルも全部一緒じゃん
パターンが一緒 つまんねぇんだよボケ
[GOLBY]
オマエがAV男優にもなれねぇよ
コイツなんてアウトオブ眼中
オマエはなれても汁男優
Yeah そうやってなってる吐くrap
同じって言っても オマエも同じじゃない?
なんだそれ ピストル?
オマエこのビートにいつ乗る?
Yeah 上がってんだよ諸手の刃
俺が正真正銘 フリースタイルライマー
[ハハノシキュウ]
むしろ僕は眼中なし ワルサーP38
この場で どんなピストル?
ピストン ピストン
なにフェニックス? 晋平太さんスか? テメー
不死鳥を殺す 不老不死
よりもボクは挙動不審な室伏
この場で 止まったらどんな感じ?
ハンマー投げ ジャックハンマーじゃねぇ
[GOLBY]
Yeah コイツが室伏? 違うぜ嘘つき
そこではそうSIMONくんに
ゴマゴマすりすりしているMC
早く帰れよあっちが出口
こんなヤツには渡さない
Yeah そうやってトワイライト
怖い愛を 俺は追い続ける
だって晋平太と俺はバトルがしたいの
[ハハノシキュウ]
一回晋平太に勝ったぐれぇで調子に乗んなよ
「体育座りで」「退屈はしねぇ」
勘ぐるだけ 馬鹿げたヤツだな
頭悪い トワイライト
弱い愛をボクにくださいよ
とりあえずそんなことしか言えないのさ
だからテメーの乳首をかっ切って
それをタン塩にして 焼肉屋で食っちゃうから
だから叙々苑で会いましょう
[GOLBY]
おい 乳首は噛むんじゃねぇよ
オマエ乳首は言っとく 優しく舐めろ
Yeah それが愛だろ
だって見てみろ コイツの方が俺弱いだろ
トワイライトは浴びれない
オマエにあげない こっから味出す
俺の方が出してるオリジナルフレイバー
コイツ 図星突かれて取り乱すプレイヤー
概要
8小節4本
勝者: GOLBY
解説
戦極MC BATTLE 第10章 ハハノシキュウ v.s. GOLBY
今回は戦極10章からこちらの試合を取り上げたいと思います。好きな試合が多い10章の中でも、とりわけ異色で見応えのある一戦になってます。
まず先攻ハハノシキュウ。
まずこちらのライン。これはその前のNONKEY戦での一幕からです。あの試合はNONKEYが面白すぎますた。
[戦極MC BATTLE 第10章] NONKEY v.s. ハハノシキュウ
「オメーも語尾だけのラッパーだろ」とは、そのNONKEYを引き合いに出しているわけですね。
そしてこちら。これはその前に行われたGOLBY対mol53の延長戦での一幕に言及した一節になっていて、いつか書き起こそうと思うので詳細な経緯省きますが、同試合中にシャツをまくって乳首を見せたGOLBYをからかう内容ですね。
この試合はこの試合でめちゃくちゃ盛り上がったのですが、その様子はまたの機会にまとめたいと思います。とにかくこの場ではハハノシキュウがそうした出来事を余さず活用して笑いに変えている、ということだけ覚えてもらえば大丈夫かと思います。
そんなハハノシキュウに対して冒頭からGOLBYは瞬発力のあるライミングでアンサー。
この大会はGOLBYが本当に絶好調で、押韻スキルはもちろん、文脈の矛盾もきたさず緩急のついたパンチラインがバシバシ決まって、ライミング一本で試合の流れを自分の方に引き寄せていくような戦い方をしていました。
特に一回戦のKBD戦では最高のパフォーマンスではなかったかと思うくらいに素晴らしかったのですが、この準決勝でもその勢いは衰えていないです。鋭敏な感覚で、相手の言葉に瞬時に反応できている感じですね。
[戦極MC BATTLE 第10章] KBD v.s. GOLBY
続くGOLBYの一節で、ここもなかなかのパンチラインになってます。
あの再戦というのはもちろんUMB2011の東京予選のことで、晋平太との決勝は延長2回に渡る熱戦で、超がつくほどのベストバウトになっていたのです。
(ただしこのUMB東京予選が2011年11月で、本大会、戦極10章が2014年10月と丸3年経過ことを考えると、時期としてはかなり間延びしていることは補足しておきます。)
ちなみにその後4バース目でハハノシキュウが言っていた「体育座りで」「退屈はしねぇ」のくだりはその晋平太戦からの引用で、「俺に任せときゃ退屈はしねぇ 反省しとけよ体育座りで」という当時のGOLBY渾身のバースからエッセンスを抽出したdisになっています。
この短いフレーズだけで当時の雰囲気を想起させたハハノシキュウはさすがに攻め方が上手いと思わざるをえないのですが、それにしても脈略のないふざけたdisの最中にこういうラインが出てくるから油断できません(笑)
続いてそのハハノシキュウ2バース目からこちら。個人的にこの試合屈指のパンチラインで、こういった相手の虚を突くようなしょうもないラインが唐突に襲ってくるのがハハノシキュウの怖いところです(笑)これにはクスリときました。
そして同じバースで相手のスタイルへの攻撃。いかにも文系B-Boyっぽい、面倒な語彙を駆使したデリバリーで決して陳腐なラインを吐かないハハノシキュウだからこそ際立つライマーdisだと思います。
続いてGOLBY、AV男優という攻撃に対してより劣位のワーディングで対抗しまてます。ここは無理に押韻を合わせようとせず、純粋に中身で相手以上のdisを返そうとしている感じですね。
周知の通りGOLBYはライミングに振り切ったタイプのMCではあるのですが、場面場面でこうして柔軟に対応できるところに強さの一端があるように感じます。
続いてハハノシキュウ3バース目から。このラインによく現れていますが、本来で言えばハハノシキュウも文脈関係ないところでライミングを多用するタイプのMCで、相手がGOLBYなだけにこの試合もライミング勝負みたいになってもおかしくなかったかもしれません。
ただしハハノシキュウは韻で打ち返すラインと内容で返すラインの区別が明確なのに対し、GOLBYの方はどう返すにしてもライミングが念頭にあることが最大の相違になってます。
GOLBYのスタイルの方が制限がキツく、難易度が高いように感じますがそれをある程度の水準で安定して成立させているのがスゴいのですよね。
個人的にはどちらのMCも大好きなのですが、このGOLBYの一本気でブレないスタンスには素直に脱帽です。
そしてそのGOLBYの最終4バース目から。変則的なハハノシキュウに合わせつつユーモアに寄ったアンサーですが、翻弄されている感じは全然なく、むしろ揶揄やらギャグやらの文脈も余裕でさばきつつ、その後に自分のやりたかったメッセージングもしっかり行えている感じがしますね。
この試合、ビートはシリアスでしたが相手がハハノシキュウということで、この「2.5枚目感」のあるGOLBYのキャラクターがほどよいバランスを保っていたような印象です。話題があちこちと推移したにも関わらず、安定感のあるrapでうまく試合の舵をとっていました。
そんなわけで勝者はGOLBY。この戦極10章は面白いMC、面白い試合が多く、非常に楽しめる大会になっているのですが、中でもGOLBYは絶好調で、彼の試合はどれも面白いです。