[ムートン]
One, one, one night, one shot
to ya the freeshot
通称ムートン ここに参上
Two, two, to ya the fuck shot
左手にはG-SHOCK
小峰の忍者 ここに参上
開けちゃいけない箱だパンドラ
待っとら 待っとら see see 角が
ひっ掻く牙だ 磨いた今か
今か 街は知ってんだwe are the …
[早雲]
キレイなフロー キレイなライム
確かにそりゃ結構 でも完全なものに俺魅力を感じない
ダイヤモンドより花に美学を感じる
わかるか オマエは造られたもん
中身が見えねぇ オマエのrap
さっき言った8小節 G-SHOCK着けてることしかわかんねぇよ
[ムートン]
光るダイヤモンド 握るmicrophone
俺はダイナソー 上げるハイな方
今は最下層 これ舞台だぞ
こういうのが聞きてぇんだろ?
ビビってんだろ? テンダーライン ロイン式アッパーからオーバー
成功されないプロポーズ
ハイキック一閃 ミルコ・クロコップ
[早雲]
輝くダイヤモンド お前ダイナソー?
違う 俺ジュラシックパーク
マイクつかみ歌う それが流儀
京都レペゼンど真ん中
止まったらそこで終わり 足は動かす
まるでそこで足踏み かい潜って参上
京都ローカルのレペゼン
これがど真ん中
[ムートン]
OK 俺も投げるど真ん中
四番打者 アンダーグラウンド
揺れろワンダーランド
ここで止まったら四番
see seeって
これ場外ホーマー
狙ってるぜ 幸か不幸か
金銀財宝
see see で I know
残してる言葉たちの響きあい
地味なsucker see チンカス
[早雲]
オマエが四番打者
ホームランを打つか 場外ホーマー
でも俺の宇宙までは全然届かない
オマエのメンタル未だ見えず
俺の目が見えてないのか 盲目か?
このボンボクラ オマエ意識が遠のくか
オマエじゃないぜ 違う
俺が真ん中に立つ enter the center
[ムートン]
さっき言ったけどあんたジュラシック
Motherfucker こっちはクラシック
ノリが違ぇ 富が死ねって燃えたら後は灰になる
倍聴かす バイリンガル
イリーガル 気になる 身になる 活かす
ここをフォーカス ピピッ
踊れ これでトドメ 喉仏
[早雲]
「倍聴かす」でも「排気ガス」でもいいけど
「バイリンガル」でもいいけど
適当なこと並べんじゃねぇ
俺の心臓は一切揺れねぇ
オマエが首動かしてるけど
俺のド真ん中 心臓は一切揺れねぇ
真のB 首振りだけじゃねぇ
心の臓から揺らしてくれ
概要
8小節4本
勝者: ムートン
解説
UMB2017 TCIY BEST16 ムートン v.s. 早雲
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
ムートン対早雲。個人的には今大会でもっとも見たかった対戦カードになります。それでは早速試合の模様をみてみましょう。
先攻はムートンから。相変わらずところどころ聞き取りづらい感じですが、ビートにしっかり乗りつつ気持ちのいいフローを披露していきます。
この辺りのライミングや歌い回しは本当にスムーズで、終盤の「今か 今か」の部分はJUSWANNAサンプリングも多少あるかと思いますが、ラストの「we are the」など、独自のアレンジを加えて自身のバースに組み込んでいる感じです。巧いです。
対して後攻の早雲。「キレイなフロー キレイなライム」と評価しつつも「完全なものに俺魅力を感じない」と攻撃するところから始まります。
「ダイヤモンドより花に美学を感じる」とウィットのきいた暗喩表現をしていますが、要するにムートンのrapに対してフローや形式上の精緻さに傾倒し過ぎている点や、いちラッパーとしての主張の不在を指摘している感じですね。
そんな内容が続き、最後は「G-SHOCK着けてることしかわかんねぇよ」という言葉で締めくくっていますが、まずは的確なdisと言えるかと思います。そんなテーマをここまで表現を広げて展開していけるのもまた早雲のスキルが成せる技ですね。
そしてムートンの2本目。「光るダイヤモンド 握るmicrophone」と早雲の言葉を継いでバースを展開していくのですが、こちらもまた気持ちのいいスムーズなrapになっています。
前半の4小節はこんな調子が短くライミングを重ねていきますが、最後の「こういうのが聞きてぇんだろ?」は明白に観客に対してのメッセージになっていて、近頃ムートンに対してシーンから期待が集まっていることをうまく利用した一節、上手いですね。
もちろんこれに対しては会場から大いに歓声が上がります。この声の大きさはそのまま今のムートンが集めるプロップスを表していると言えるかもしれませんね。
後半に続いても整ったフローと気持ちのいいライミングが続いていきますが、ラストの「ハイキック一閃 ミルコ・クロコップ」はあまりにもキレイに決まっていたため、後に別の大会でミステリオに引用されることになります(笑)
[戦極MC BATTLE 第16章] ミステリオ v.s. ホロンバイム
続いて後攻の早雲2本目。「お前ダイナソー? 違う 俺ジュラシックパーク」と、こちらも相手の言葉を継いでアンサーしていきますが、「ジュラシックパーク」と「つかみ歌う」など、小節の途中にそれほど強調されてない部分にハードなライミングがあったりします。
ここはライミングに気づかなければ唐突に話題が転換されたように見えるかもしれません。私も初回ではスルーしていた部分になるのですが、早雲の言葉には後から気づかされる点も多いです。
そして何よりすごいと感じるのが、これらのバースを限りなくトップオブザヘッドに近い状態でひねり出していることで、もう常時最大出力という感じで8×4やりきっている点には脱帽です。
もちろん即興性が高い分「京都レペゼン」「真ん中」など、同じ表現を繰り返すシーンもまま見受けられるのですが、それを差し引いてもその場その場でものすごい瞬発力と表現力を発揮している感じですね。
しかしその点ではムートンも負けておらず、続くバース、先の早雲が言った「ど真ん中」に対して「四番打者」「アンダーグラウンド」とこちらも瞬発力のあるアンサーで対応してきます。
綺麗にまとまっている上に、その場その場の話題を活用してバースを構成させていて、もうムートン巧すぎですね。死角が見当たりません。
ところどころ意味のない言葉や聞き取りづらい箇所があるものの、大意は損なわずにここぞというラインの通りも非常によく通っていて、オーディエンスの歓声も頷けるところです。
そして早雲3バース目。「場外ホーマー」を受けつつ「俺の宇宙までは全然届かない」と内容面でアンサー。これは「ど真ん中」同様早雲のルーティーンですね。
さらに「オマエのメンタル未だ見えず」とのラインは冒頭1バース目で言っていた「中身が見えねぇ」という話題からの続きで、終盤に入ってもまだメッセージ性の高いrapが出てこないムートンに対する攻撃になっている感じですね。この一点に関して言うと両者は見事に対照的と言えるでしょう。
続いて先攻ムートン4バース目、最後のバースです。2バース目早雲の言った「ジュラシックパーク」を継いで「Motherfucker こっちはクラシック」とスピットするところから入ります。字面で見るとそれほどではありませんが、この力の入ったムートンのラインに会場からけっこう声が上がっていました。
試合展開で言うとなかなかに拮抗していましたが、その中でも試合の流れを掴むという点ではムートンが一歩先行しているような状況でしょうか。そんな中で最後までライミングを重ねてrapのクオリティを保っていたムートンは、やや優勢な状態を保持してバースを終えます。
そして後攻の早雲。綺麗にまとまったムートンに対して「適当なこと並べんじゃねぇ」というラインからスタート。このdisは試合を通して一貫しています。早雲のスタイルを考えると、ムートン相手の戦術としては至極まっとうなものだと思います。
「首振りだけじゃねぇ」と言っている通り、最後までメッセージ、内容面でのアンサーを要求する格好でムートンに対してアンサーしていた早雲でしたが、ムートンの方はすでに試合の中盤には会場を味方につけていた感もあり、やや一方通行気味になってしまっていたという感じでしょうか。
そんなわけで勝ったのはムートン。早雲はこのdisの方向性のまま終盤になにかパンチラインが入れば逆転はあったかもしれません。
いずれにせよどちらも余すことなくスキルを出し切っていて、非常にレベルが高く面白いバトルだったと思います。その中でもムートンはもうスキルもプロップスもすでに行き着くところまで行ってしまっている感がありますね。
ちなみにこの二人、その後の戦極MCバトルで再戦しているのですが、その模様は以下のリンクからご覧ください。
[戦極MC BATTLE 第16章] 早雲 v.s. ムートン