[UMB2017 TCIY] MAC-T v.s. 早雲 延長

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早雲 v.s. MAC-T

UMB2017 TCIY BEST32 MAC-T v.s. 早雲 延長

今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトル、早雲対MAC-Tの延長戦を取り上げたいと思います。

延長前の試合は以下のリンクからご覧ください。

[UMB2017 TCIY] 早雲 v.s. MAC-T

[MAC-T]

3バースの嘘の後に

1バース目で全部真実を言っちゃうタチ

Let’s get a party

コイツはこの場にすでに要らない

まだ言うウソ? まだ言うウソ?

ウソ 1バース目めっちゃ期待 you know mean?


[早雲]

マイメン相手にウソつくわけねぇだろ

一軒家買ったんだ

これ以上のリアルがどこにある?

俺は現実 ローンを組むぜ

35年 死ぬまで払うぜ昭和63年生まれ

ローン払い終わるの平成63年だって

気が遠くなるぜ


[MAC-T]

だからさっきも言ったじゃん

「あっそう」

Mt.阿蘇 いや伊吹山の上から見上げるぞ

京都 関ヶ原の地は見事に越えられなかったって話なのに悲しそう

あっという間一回戦で消えて終わり


[早雲]

関ヶ原を越える? 違う

富士山越える? 違う

エベレスト? チョモランマ?

「ちょっとタンマ」は無し レペゼン走る京都ナンバー

俺はレペゼン京都 何回だって言ってやる

古の都 俺がど真ん中

東京 俺が取り返しに来たぜ


[MAC-T]

取り返しにって一回も獲ったこともないのに

また 3バース目のウソ

このカードはクソ

俺は先に先に さらに先を見てる

HipHop 当たり前の話だぜ

ここに集まった奴ら 俺は音楽をしに来た


[早雲]

京都 古えの京都

平安京 1200年

全員覚醒さしてみせる

東京が中心なら

俺が中心になって京都に帰るぜ

俺が変える時代

光はどこにあるか まだ真っ暗

お先真っ暗 枕を濡らした夜

あの日の悔しさ忘れない

概要

8小節3本
勝者: 早雲

解説

UMB2017 TCIY BEST32 MAC-T v.s. 早雲 延長

今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトル、早雲対MAC-Tの延長戦を取り上げたいと思います。

前回のバトルではMAC-Tの善戦をお伝えしていましたが、その続きとなるこの一戦。こちらも見応えのあるかなり面白い試合になっています。

それでは内容を見ていきましょう。

まず先攻はMAC-Tから。先ほどの試合で得た勢いを活かすべく、冒頭は先の試合で流れをつくった「3バースの嘘」の話題を持ち出していきます。

内容だけでみると新規性のある言葉はそれほど言っていませんが、「Let’s get a party」の辺りなど、ジャジーでシックめなトラックに対して、テンションを保ちつつも相応に乗れているスムーズなrapになっています。「1バース目めっちゃ期待」と煽っていく様も相手からすると非常に嫌な感じです(笑)

対して後攻は早雲。前の試合から引き続いて、さんざん嘘つき呼ばわりされてきたことに対して「マイメン相手にウソつくわけねぇだろ」と反論。そしてこのあとが素晴らしいのですが、「一軒家買ったんだ これ以上のリアルがどこにある?」とのラインで一気に自分のペースにより戻しをかけていきます。

説明するまでもないかもしれませんが、ここは単に「嘘」と対置された「リアル(真実)」という意味だけでなく、「リアル(本物)なHipHop」と言う時のリアルという意味も掛かっていているわけです。

そして我々現代日本人、それも成人男性が抱く生活上の「リアル」という意味では、確かにローンを組んで夢のマイホームを買うというのはもっとも現実感のある一大イベントなわけですね。

そんな個人のドラマが凝縮されたアンサーですが、続くラインもそこから発展して「35年」「ローン払い終わるの平成63年だって」とそんなマイホーム話の現実的な側面を具体的な数字で刻々と描写して、その「リアル」な点をさらに強調していきます。

ビートの雰囲気もあってこの辺りの展開は個人的に非常に良いと思いました。

対してMAC-T。そんな早雲渾身の「リアル」に対して「あっそ」とわずか四文字のアンサーでシンプルに切って捨てます。

そして「伊吹山」と地元の話題へ転換を図りつつ、「関ヶ原の地は見事に越えられなかった」「一回戦で終わり」とこちらはあくまで攻撃の姿勢を崩さずrapをしています。

続いて後攻の早雲。結果的にはここが本試合のピークとなるのですが、「関ヶ原を越える? 違う」というアンサーから入って「走る京都ナンバー」まで、前半の4小節分をノンストップで一気に駆け抜けていきます。

ここが本当に気持ちよく、スムーズなフローになっていてオーディエンスもかなり沸いていました。おそらくですが、ここは丸々トップオブザヘッドで、言葉のチョイスとフローの構築、実際の発声とが完全に同時に行われている感じです。かなりスゴいです。

例えるならハッキリとした発声と明確に意味を持った文章とでムートンがやっているような即興グルーヴをアンサーの中で狙って作り出しているような感じでしょうか。早雲はもともとアンサーの即興性も高く、ウィットのある切り返しをポンポン出していくタイプだと思いますが、ここはビートの雰囲気も含めて、それらの諸要素がすべてハマっていた感じです。ホント、素晴らし過ぎます。

続いて先攻のMAC-T。「東京 取り返しにきた」という早雲に対して「一回も獲ったこともないのに」と切り返し。「また 3バース目のウソ」と先ほどの話題を蒸し返してうまくオーディエンスへ印象付けます。

今回はMAC-Tが先攻のため、正確には「2バース目のウソ」ということになるのですが、それは野暮でしたね。いずれにせよ非常に冷静にバトルの流れを捉えることができています。

そして最後は早雲。こちらは冷静に相手の急所を 狙いにいくMAC-Tとは対照的で、「東京が中心なら 俺が中心になって京都に帰るぜ」と熱さを前面に出したアンサーで応戦。

その後もエモさのある内省的なラインが続き、MAC-Tとの対話になるようなやり取りはありませんでしたが、結果としてはこれが功を奏した感じでしょうか。やはりピークとなった2バース目での明暗がそのまま分かれ目となり早雲の勝利となりました。

それにしてもこの試合、口ゲンカという点で見ればMAC-Tが終始優勢かに見えましたが、要所要所の盛り上がり方が際立っていたのが早雲だったという感じです。バトルの勘所を押さえて辛くも競り勝ったといったところでしょうか。

そして個人的には攻め手を緩めずによく戦っていたMAC-Tに拍手を贈りたいと思います。どちらも勝利へのアプローチをそれぞれに求めていた見応えのある試合だと思います。

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