輪入道 v.s. JAKE
UMB2017 TCIY BEST32 JAKE v.s. 輪入道 延長
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
前回に続く延長戦。延長前のバトルは以下からご覧ください。
[JAKE]
悪ぃ まだリリースも出来てねぇ
でも俺の時計なら右回り
過去を振り返ることなく
一歩ずつ着実 到着 東京
遊びに来たわけじゃねぇ でもこれはリアルだ
来月で仕事を辞める コイツでどこまで行ける
[輪入道]
左回りの時計の意味分かってねぇ
俺だって左回りの時計なんて要らねぇ
だけど過去に戻りたくて仕方ねぇ時にあのアルバムを作って
結果 俺は今を生きてるぜ
未来に向けて何ができるかだけで考えてる
悪いけど俺オマエに一言いいたいことあるねぇ
昼間の仕事辞めてこれだけで食う?
本当に大丈夫か?
Rapだけでメシ食えんのかよオメー
[JAKE]
メシを食うとかじゃねぇ
だったらセルアウトしてラブソング書いて東京に出るぜ
違ぇんだよな これでどこまで行けるか試してぇんだ
オマエがもしワックなら いつも通りヘラヘラ歌ってるだけだけど
オマエのことも愛してる だから受け入れる
だから俺の心に突き刺して来いコラ
[輪入道]
ガッツリ突き刺してやるぜ正直
俺だって壊してるぜ関東で常識
歌えばいいじゃん ラブソングとか
俺featしたい 西野カナ 童子-T you know
全然余裕だよ なんでかわかる?
あんなもん余裕で超えられるからだよ
avaxだろうがなんだろうが知るか
俺はアンダーグラウンドの誇り 負け戦じゃない
[JAKE]
範囲が広過ぎるんだよ 日本を背負うとか
レペゼン千葉だろ? 鳥取だよ
大阪の あの乾杯の意味を忘れたのか輪入道
マイメンだから吐ける言葉がある
俺はクソ田舎だから玄関にカギも掛けねぇ
心にもカギ掛けてねぇ
オイ 土足でいいから上がって来いよ
[輪入道]
土足でお邪魔します
お邪魔します お疲れ様です
頭下げてから始めましょうか
あなたの地元ローカル
鳥取 だけど境港
水木しげるっつーのは俺の親父みてぇなもんだからよ
女から子ども まで全部揺らす
ビッグマウスでデカいこと言って世界中の全員ブチ上げる
口だけじゃねぇ ことを口だけで証明
輪入道 覚えとけ
概要
8小節3本
勝者: なし(再延長へ)
解説
UMB2017 TCIY BEST32 JAKE v.s. 輪入道 延長
今回はUMB2017 THE CHOICE IS YOURSからこちらのバトルを取り上げたいと思います。
前回に続く延長戦となりますが、このバトルはパンチラインもバンバン出てかなり見応えのある面白い戦いになってます。
延長前のバトルは以下のリンクからご覧ください。
それでは内容を見ていきましょう。
まず先攻のJAKEは先攻1バース目らしく自身のアティテュードをrapにしていきます。特にラスト「来月で仕事を辞める」と表明している部分は上がるポイントになってます。地方のMCが地方で専業として活動できる土壌がどこまであるのか、シーン全体にとって大いに気になるところですね。
対して後攻の輪入道。「俺だって左回りの時計なんて要らねぇ」と相手の言葉に反応した上、「過去に戻りたくて仕方ねぇ時にあのアルバムを作って」と自身の話題へと移っていきます。
輪入道のいいところはちゃんと相手から渡された文脈に則ってスムーズに話題の移行ができるところですね。噛んだり言い間違いをしてもそれに気づいてすぐに軌道修正できることや、内容とともにrapのバイブスに瞬間的な爆発を起こせることも含めて、トップオブザヘッドの強みがそのままストレートに活かされているという感じがします。
そして続くラインでは「オマエに一言いいたい」と断りを入れつつ、仕事を辞めることに対して「オメー本当に大丈夫かよ」と心配とも煽りともつかないアンサーを仕掛けていきます。
対するJAKE、2バース目です。「やっていけるのか」というメッセージにし対して「(食うためだけなら)だったらセルアウトしてラブソング書いて東京に出るぜ」と、ウィットのきいた非常に素晴らしいアンサーで返します。ヤバイですここ。
個人的にこのアンサーは本大会でも屈指の切り返しで、ユーモアもありシーンに対するブラックな皮肉もありつつ、かつ反論としての内容も本質的で、すべてが凝縮された珠玉のパンチラインではないかと思います。
いくつも名ラインが飛び出した本試合の中でも私としてはこれが一番で、大きな文脈で捉えても本バトル最大のハイライトがこの2バース目冒頭ではないかと思います。
続いて輪入道のバース。「突き刺して来い」という煽りに対して正面からアンサーするとともに、ラブソングのくだりに対してはそこからの流れで「俺featしたい 西野カナ 童子-T」とこちらも素晴らしい切り返しを見せています。
どうでしょうかこれ。JAKEの皮肉に対して皮肉で乗っかっていくというこの瞬発力。それも「正直」「常識」といったバース冒頭からの流れそのままに勢いを増した中での一撃です。
そして両者共通して皮肉を投げる相手が対戦相手ではないところがまたいいですね。こういう形のバトルもあるのかと。この辺りはどちらも本当にクオリティの高いやり取りをしていると思います。
そしてそれを受けるJAKE3バース目。シーン全体に話題が及んだことに対して「範囲が広過ぎるんだよ」と受けた上、「レペゼン千葉だろ? 鳥取だよ」とローカルな話題へと引き戻していくのですが、いよいよ熱さを増す輪入道に対してJAKEの方はかなり冷静で、試合の流れをしっかりと見極めている印象です。
そしてこの試合でもトップクラスの沸きどころがこのバースの後半で、「田舎だから玄関にカギも掛けねぇ」という話題から、「心にもカギ掛けてねぇ」「オイ 土足でいいから上がって来いよ」とつなぎ最高潮の盛り上がりを作ります。最後までJAKEのキャラクターを出し尽くした戦い方で、ラストに見事なピークを作っていました。
対して後攻の輪入道。「土足でお邪魔します」「お疲れ様です」という言わば卑屈なほど低姿勢な立ち上がりは、先のJAKEのパンチラインに対して即座に反応できなかったことの表れとみるべきでしょうか。
それでもただでは転ばない辺りはさすがで、バースの後半、「水木しげる」の辺りから相手の地元ネタを活用してなんとか勢いを持ち直します。
私もそのままJAKEかと思ってしまいましたが、ここからの輪入道もまたパフォーマンスが良く、「デカいこと言って世界中の全員ブチ上げる」というラインから続いた「口だけじゃねぇことを口だけで証明」という一節もまたリリカルで、最後にパンチライン級のしっぺ返しを見せていきます。
このライン、一見パラドクスめいた表現ではあるのですが、rapは口だけを用いて実践される表現技術なので、それ自体にはなんの矛盾もなく、「口(先)だけ」というイディオムと引っ掛けることで言葉遊びが成立しているわけですね。巧妙なまでによく練られた面白いラインだと思います。
ここまで試合の内容を見ていきましたが、どこをとっても見応えがあるかなり素晴らしい一戦ではないかと思います。ライミングスキルやバイブス、地元愛やひねりの効いた表現、ふざけ半分の言葉遊びその他、いろんなものが折り重なったやり取りの数々がこのバトルを一層次元の高いものにしている感じです。
そして結果は今回も票が割れてドロー。勝負の方は再延長へ突入していきます。これだけの盛り上がりを見せただけに、ここで決めてしまったらもったいない、という心理もはたらいていたかもしれませんね。
続く再延長の模様は以下のリンクからご覧ください。
あげてくれてありがとうございます!!!
特にこの試合は最高です(笑)
4試合全部でいいお酒が呑めますね
> ハンニバル さん
コメントありがとうございます!
この試合、本当にいいですよね。流し見しただけでは気づかなかった点も多くあり、書き起こしてみて改めてその面白さを再認識できた試合でした。