PONY v.s. 鎮座DOPENESS
UMB2009 一回戦 REVENGE代表 PONY v.s. 東京代表 鎮座DOPENESS 延長
今回はUMB2009からこちらの一戦。
前回から続く延長戦となります。前の試合をまだお読みになっていない方はまずそちらからどうぞ!
[PONY]
ウソ 別に未練って俺は無ぇ
どんだけ焦らすんだよ待て
待った無しで進む I’m a dog 止まらん
タッチしそうで危ねぇ
危ねぇそんなもん
全部フローに乗せて 打つだけ
鎮くんサヨナラ さっきのおかげ
もっとってことっすよね?
もっと見たいずら
なら見せてやる年末のジャンボ
[鎮座DOPENESS]
年末のジャンボ
3億円分的な俺のスキル
コイツの身分 じゃあ
今イーブン じゃねーだろ
俺の独走状態 もってきたい
簡易も still
hot and cold
吸うようなフロー
這っても勝つ
どうせなら CLUB CITTA
[PONY]
そりゃそうだよなぁ
妄想の上で走るだけならば一等賞
誰でも獲れるじゃん そんなのはNO
どうせならバトルで決める一等賞
光るには誰? キャラ立ちじゃ無理
Rapして答えるアンサーだ キミ
そこのオマエにも soulで吐くだけ
カメラの前 テレビの前 Whassup? fucker
[鎮座DOPENESS]
テレビの前から Whassup?
ならば 俺は習わしなんて無い
己が気持ちいいままに
動きながら まんま騙される
今から吸い込まれてく
スピーカーの手前で踊りだす
でリアルのため 俺は未だ
脳細胞使って躍らすぜ
[PONY]
勝手に脳細胞
狂って踊らしときなよ
最後は適当
確かにそうだ キャラとフロー
ありがてぇことだけど
もうよそう そういうの
まともな判断 Judgement Day
審判は下ろされたオマエ達に
ならやってやろうってそれだけだぜ
Yo
[鎮座DOPENESS]
あー そう ですかー Yo
Yo この世は不器用
Yo yo 出したように
上がったり 風呂上がったり
今 up and down しながら
テンションなら knock down
Countdown 10から9から8, 7, 9, 6 ところ
俺の今見せつけるぜ
どう? ころうのフロー
[PONY]
なんでダウン したか分かっただろ?
最後に盛り上げるから
UMB勝つ最後のプライド
賭けてくだけ 高く飛ぶフライト
飛行機乗って高飛びしたいの
気をつけろよ Phase.6
インフルエンザ だから最後マスクして帰れ
[鎮座DOPENESS]
大気圏のところで迷子になってるPONY
俺なら早速乗るUFO
宇宙規模で見下ろしてやるよ
星屑の一つになり
ながらここ一つになる
CLUB CITTA 俺と友達
皆が集まれ ワッハッハー
概要
8小節4本
勝者: 鎮座DOPENESS
解説
UMB2009 一回戦 REVENGE代表 PONY v.s. 東京代表 鎮座DOPENESS 延長
今回はUMB2009から以前にお伝えした熱戦に続く延長戦となります。
UMB REVENGEから多くの強豪MCを下してきたPONY。対する鎮座も最激戦区東京を制して本選に初登場となり、そんな中で迎えたマッチアップも一回では決着つかずで勝負は延長へと進んでいきました。
前の試合はそれぞれに良さが出ていて、どちらも本当レベルが高過ぎて甲乙つけがたいといった感じで、判定が真っ二つに割れていました。
[UMB2009] PONY v.s. 鎮座DOPENESS
それではバトルの内容を見ていきましょう。
今回は延長前のMy Name Isに比べてBPMがやや早めのトラック。
両者どのような対応するのか、特にリズムやグルーヴを生むのが圧倒的に巧い鎮座DOPENESSがどういったアプローチを取るのか、注目していきたいところです。
まず先攻のPONYはそんなビートにしっかり合わせていき、ビートに対応しつつも先ほどに続く内容を展開していきます。
ちなみに後半の「もっと見たいずら」はおそらく地元の方言である甲府弁ではないかと思います。日ごろ地元repを強調することはあってもそれほど方言を押し出すタイプではないことから、トップオブザヘッドという感がより出ているのではないでしょうか。まさにとっさの一言という感じです。
続く後攻の鎮座DOPENESS。こちらはビートに合わせていますが、完全に自分のリズム、独自のキープの仕方です。
言葉の強弱、音の置き方が非常に独特で、例えば「3億円分的な俺のスキル」としたところでは明らかに「さんぼっけんぶんてき」と言っているように聞こえます。(聞き取るの苦労しました、ホント・・・)
そして内容で言うと「コイツの身分じゃ 今イーブンじゃねーだろ」など要所要所でなかなか鋭いメッセージを置いているのがわかります。
これが飄々としたフローに乗せて放たれるのだからもう本当にオリジナルとしか言いようがないです。そしてなぜか妙にクセになるのですよね。
そして特に今回のビートは裏でクリック音のような音が鳴っているトラックになるのですが、終始小説ごとにキッチリ合わせていたPONYに比べ、鎮座の強弱のつけ方、ラインの区切り方が妙にハマっているように感じました。
特にここという部分ではなく、少し言語化が難しいのでこれはDVDお持ちの方、是非聴き比べてみて頂きたいと思います。
そんな調子で延長もやはり両者の違いが1バース目から早くも鮮明になりますが、それでも両者レベルを落とすことなくこの後も持続的にバトルを展開していきます。
続く2バース目、まずはPONYです。「独走状態」という鎮座に対して「妄想の上で走るだけならば一等賞」とバッサリ吐き捨て。「キャラ立ちじゃ無理」という追打ちも含めてこちらもなかなかの攻勢に出ています。
対する鎮座は「俺は習わしなんて無い」「己が気持ちいいままに」と態度を鮮明にし、PONYとの対比をよりハッキリさせています。
これでrapスキルの面で圧倒できれば鎮座の完勝だったところでしょうが、それをさせないだけの実力をPONYが発揮していて勝負はすでにどう転んでもおかしくない膠着状態になっていたように思います。
そのPONY、「キャラとフロー」から「もうよそう そういうの」と、本気で仕留めにかかっていくような鋭いラインを打ち込んでいったかと思えば、「まともな判断」「審判は下ろされたオマエ達に」とオーディエンスに訴えかけるような内容に急速にシフトしていきます。
鎮座に正面からぶつかり合っても躱されてしまうだけに延長も試合半ばで、これは非常に冷静な判断かつ切り替えの早い対応と言えるかもしれません。
続く後攻の鎮座、3バース目です。最後、丸々1小節分間をとったPONYの「yo」を受け、あえてブツ切りで機械的な言葉の落とし方から始まります。徐々にエンジンをかけていくような感じでしょうか。
最初の「あー そう ですかー Yo」の平板でやや脱力したフローから一転、「今 up and down」のあたりから急速に上下動するような、緩急のある活き活きとしたフローへシフトしていきます。
何も無いところからいきなりグルーヴを生み出すような、鎮座の持ち味、才能がいかんなく発揮された場面ではないかと思います。個人的にはこの鎮座の3バース目は非常に上がりました。このバトルのハイライトのひとつではないかと思います。
そして4バース目、ラストです。PONYの方はスタイルぶらさずあくまで正統なバトルスタイルで、「M-1にK-1にPRIDE」「UMB勝つ最後のプライド」と季節に絡んだ話題を内容にうまく乗せつつかつ短いワーディングで効果的に押韻することも忘れないという、延長終盤にも関わらずかなり卓越した試合運びを見せています。
対する後攻の鎮座、ラストバース。PONYの「フライト」という文脈を受けて「大気圏のところで迷子になってる」と返した上、俺なら「UFO」から見下ろしてやる、と内容面で一段上に立ったアンサーをものの2小節で打ち返します。
鎮座の場合フローの影に隠れてしまいがちですが、こうしたイマジネーションに訴えかけるアンサーというのも非常に効果的にバトルの空気を動かせる要素なのだと感じることができますね。
そして最後のシメが「CLUB CITTA 俺と友達」「皆が集まれ ワッハッハー」で着地。UMB本選、これだけの大舞台、これだけの激戦でありながらラストのラストで「ワッハッハー」と締めくくる辺りが、非常に異質で、また鎮座DOPENESSらしくもありますよね。
結果、それほど大差ではなかったものの、判定で鎮座DOPENESSの勝利となりました。
前半戦からの流れやオーディエンス、ビートセレクトなど、色々な要素が絡んだ結果と思いますが、PONY本当に惜しかった!
このバトル、高度なスキルのぶつかり合いであり、また対照的なスタイルウォーズとなっていて、延長前と合わせて非常に見応えのある一戦です。
個人的にはこのUMB2009大会の一つのハイライトがこちらの対戦ではなかったかと思います。
見てない方は是非映像で一度ご覧になってみてください。
※ CLUB CITTA
川崎CLUB CITTA。本大会の会場。
※ Judgement Day
例年UMB決勝大会に付せられたタイトルであり、キャッチコピー。元ネタは聖書から。
※ M-1
M-1グランプリ。吉本興業の主催する漫才のコンクール。
※ K-1
K-1グランプリ。キックボクシングのイベント興行。
※ PRIDE
総合格闘技のイベント興行。
この時のビートって、オリジナルなんでしょうか…?