TK da 黒ぶち v.s. GIL
UMB2012 BEST32 埼玉代表 TK da 黒ぶち v.s. 仙台代表 GIL
今回はUMB2012からこちらのバトルを紹介します。
熱いTKvs熱いGILの熱すぎるバチバチな戦いになってます。
[TK da 黒ぶち]
My name is TK da 黒ぶち Hallo
俺は埼玉 春日部っつーところから来たんだ
足掛け6年 やっと辿り着いたぜ本戦のステージ
Yo ここまでは1時間半で来れる距離
春日部ドーナツ化現象 東京に来たぜ
だけどこの距離感は
短いようで長かったっつーことなのさ
近いようで遠かった
ステージに立って今rap
俺はそんな感じだ
アンタはどんな感じでここまで来た?
[GIL]
同じ気持ちだ
いつでもヤバい奴らを
画面上で見てきた
俺が仙台勝ち上がってきたけど
レペゼンは福島 覚えとけ
Yo 俺の街中
この場所で映し出す
マイク一本で探していた意味
それを感じながらさ
TK 会えてよかったぜ
こんなヤバいヤツと会いたかったから来たぜ
[TK da 黒ぶち]
俺はそれは理解できない
ゴメンな 放射能
線量は高い街は隣町にあるかもしれない
だけど怒鳴りだしたら止まらない
っつーことだけは確か
生きてる時間 リミット感じたんだ
あの3.11で俺もさ
だからその間に何ができるかって思って
俺はスキルを磨いた
意識変わった俺も去年から2012
晋平太の二連覇なんて知らねぇぜ
俺はただ単にmicrophoneで
熱いことを伝えに来た
福島代表 いいじゃねぇかそれ
[GIL]
晋平太の2連覇は俺も知ったこっちゃねぇ
伝えに来たんだよ 俺の人生観
それだけだよ 小せえヤツだっていいさ
ヴィンテージはもう履きつぶし過ぎて
何本目かわかんねぇんだ
そうやってストリート
キックスも何遍もすり減らした
わかんねぇけど 舌足らずだっていいだろ?
この場所 東北の看板がオマエのことを
唐突に弾丸で撃ち抜きに来てやったぜ
[TK da 黒ぶち]
Yeah yeah 東北の看板の弾丸
余裕でスルーするぜ
俺はマトリックス クルクルと回るlips
オマエとは違ってスキルを見せつけるぜ
気合いを 俺はスキルにぶつけてるってことは
間違いなく証明してる
今輝いてるこの金のマイクが
俺のになるか分からねぇぜ
俺もそう これはヴィンテージもん
あん時から履いてるものだぜ
そんな話じゃなくて
ただ単にぶつかりたい
プラス スキルを見せ合いたいってだけなのさ
yeah check it out
[GIL]
間違いないぜ 金のマイクと
オマエのスキルは輝いてる
だけどこの場所は俺が羽ばたいてく
それだけの話だろ?
羽だったらあるぜ
オマエよりも伸びきったバネが
何本もあんだよ俺は
どうだ? 日本の街
二本の足 立ってるけど
HipHopシーンに 東京に
東北から何遍も言うぜ
これが弾丸 俺が看板
これがアンサー
わかるかな aiight?
[TK da 黒ぶち]
Yeah その看板叩き割ってやるぜ
ここでまた逆転するような発想見せつけるぜ
オマエも賭けてるものがある
俺も賭けてるものがある
だからこそ駆け足でビーツが走り回ってく
オマエとは違う何かを追い求める
俺は革命とかmicrophone持って一本変わったんだ
ストリート上がりじゃなくてさ
劣等感だらけのクソガキだったんだよ
そういうヤツがこうやって
microphone持って
いきがれることが生きがいだと思ってる
オマエにはまだまだ負けられねぇ理由はたくさんある
[GIL]
Yo 間違いねぇよ
マイク持ってたら革命起こしてぇから
この場所で出してんだろ発言
そうやってヤバいライミングをこの場所で発明
するからオマエ感電させる人間発電
そういうスタイル でやってくだけだ
俺は病んでる街からも
これぐらいのことは出来るからさ
TK 今日は会えてマジで嬉しかったぜ
だけどしかめちゃいけねぇ
もっと頂点目指して行こうぜ
概要
8小節4本
ビート: Alchemist / Perfection
勝者: なし(延長へ)
解説
UMB2012 BEST32 埼玉代表 TK da 黒ぶち v.s. 仙台代表 GIL
今回はUMB2012からこちらの一戦を紹介します。
今振り返って見ると非常に見応えのある好カードですが、この当時はどちらも初出場。
とはいえ過去、予選での般若戦や、戦極など他大会での活躍によりすでにプロップスを確立していたTKに対して、GILに至っては当時全国区ではまだ無名と言っていいほどでした。
そして誰も期待してなかったからこそ、このバトルでのGILの奮闘に皆心打たれ、その後のプロップスにつながっていくわけですね。
また、当時は東日本大震災から1年以上経ったとはいえ、まだまだ復興に向けて予断を許さない状況の福島。そんな地域からの代表として出たのが今回のGILでした。
彼の鬼気迫るrapが全国の場でお披露目になるのは今回が初で、実力者TKとの死闘はオーディエンスに強烈なインパクトを残していたと思います。
それで内容の方ですが、先攻のTK da 黒ぶち1バース目、こちらも初出場だけあってこの大会にかける想いを切々とrapしていきます。バース中に出てくる「近いようで遠かった」というのは本当にその通りなのでしょう。
続くGILの方も、彼らしいスタイルで一つ一つ自分の言葉を吐いていきます。「マイク一本で探していた意味」の辺りは引き出しだと思いますが、それでもこんなラインがハマるのは彼を置いて他にはいないですね。
続くTK、放射能のワードが出たことでバトルは自然と3.11の話題へと移行していきます。また、「晋平太の2連覇なんてしらねぇ」ただ熱いバトルをしに来た、という辺りで両者は双方の意思を確認し合います。
この辺りでどちらも互いの実力を認めつつ共鳴し合う、というこの一戦のハイライトの下地が出来ていたような気がします。
GILですが、この時から「東北の看板」や「弾丸」など、お馴染みのワードがたくさん出てきます。
加えて3バース目の「だけどこの場所は俺が羽ばたいてく」というラインなど、相手の言葉を拾っての力を込めたアンサーも当時からすでに強力な武器としていて、今も続くスタイルはこの時にすでに完成されているような印象です。初出場でこの強さは途中からTKも警戒するようになったことでしょう。
そしてTKも思いの丈をスピットしていきますが、こちらは持ち前のフローに乗っかっている分言葉数が多いです。リズムを落とさずこれだけ言葉を詰めこめるのはスゴい。また、「駆け足でビーツが走り回ってく」など、間に挟むラインも意外に叙情的なのも一つの特徴では無いかと思います。
対照的に、GILの方は一つ一つ言葉を噛みしめるように吐き出していくスタイルなので、相対的に言葉数は少なくなり、一発のメッセージで勝負する、という構図になっています。
8小節4本と比較的長丁場な一戦ですが、こうして文章に起こしてみると両者の言葉のボリュームが終始相当に違うことが一目でわかりますね。
それで試合が終わって判定は延長。好対照をなす両者ですが、決着は延長に持ち越しとなりました。
※ 放射能浴びたって進んでいった日々
今大会、仙台代表として出場しているものの、GILのレペゼンは3.11の被害から復興中の福島。
※ 晋平太の二連覇
前年チャンピオンの晋平太は2010、2011と2連覇を達成しており、今大会も優勝を目指して本戦へ出場していた。
※ マトリックス
1999年公開、アメリカのSF映画。
※ 金のマイク
UMB優勝賞品のひとつ。SHUREから贈呈されるゴールデンマイクのこと。